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55. ランバル家



「遠路はるばると、良くぞ我が領地に来てくだすった。異世界の邦人ユウマ殿、シュルツ第一王子。部屋を用意しておりますゆえ、夕餉の時間まではどうぞ自由にお過ごしくだされ」


 50ほどの見目をした筋骨隆々の大男。ドミニク・ランバルはそう言って、俺たち二人の来訪を出迎えた。


 ヴァリエ王国ランバル領。国の最北に位置する領土は、スーデン王国との国境にそびえる巨大な山脈を背後に、ヴァリエの民を魔物から守護する重要な役目を負っている。


 魔物は森や山から来る。この世界の常識だ。特にスーデンとの自然の国境になっているバルト山脈、王国南西部グーリン領内にあるアルザス樹海は、強力な魔物の出現や異常繁殖も多い魔の地だ。


 百十数年前、この地は貴族とも呼べぬ小地主がより集まり細ぼそと暮らす辺境の地であった。度重なる魔物との戦いに疲弊した彼らの元に、突如現れた稀代の英雄。それが初代ランバル家当主、ドラウ・ランバルだった。


 捨て子の彼は、自身を引き取った地主夫妻のもとにて強力な風の魔法の才を開花させ、幼い頃より魔物達との戦いに身を投じていた。


 上級ランクの魔物を単身討伐し、魔物の群勢を追い払い。いつしか彼の住む地や周辺には人や物が集まるようになり、ヴァリエ王国はその功をねぎらいランバル家を正式な貴族として叙任した。

 

 そうして彼が山から降りたエルダードラゴンを息子らと共に討伐した年、ランバル家の長男にヴァリエ王家の末子が嫁いだ。当家が貴族に叙されるほんの一年前、召喚されたかの異世界の邦人と、ヴァリエ王の血を引く子供である。


「我が曾祖父も優れた魔法の使い手であったが、第四王子エストの血を引く我らは文字通り、天に愛された。父は類稀な天の属性を持って生まれ、私や息子の二人もまた崇高なる火の属性を神より授かっている」


 そこで話を切り、ドミニクがこちらを向いた。


「ユウマ殿もまた、我が父と同じ天の属性をもち、また火の魔法を自在に使いこなしているとか。私もぜひお目にかけたい。明日、何処かで時間をとらせて頂けないだろうか」

「明日と言わず今日でも構いませんよ、ドミニク殿。こたびの滞在は、ヴァリエとランバルの親交を深める為のもの。お互いを知るための機会は、早い方が良いでしょう」


 そう俺が口にすると、ドミニクは少し目をみはった後に、ニヤリと口角をあげ笑った。


「流石は世に名高き異邦人。話が早い。ではお二方を部屋に案内した後、すぐにでも準備をさせましょう」



 部屋に荷を置いた後、俺たちは護衛を伴い屋敷の庭へと出た。訓練場も兼ねているのだろう。草木のない平坦な土の大地に、使用人らが練習用の的をいくつか運び込む。


「打ち込む場所は、何処からでもかまいませんぞ」

「分かりました。それではドミニク殿、皆様方。中央の的から少々離れて頂けますか」

「……ふむ、噂に聞く火と水の魔法か」

「はい」


 遮蔽物のない平地だ。みな十分な距離をとったのを確認し、俺もまた魔法が届くぎりぎりの距離まで移動する。ドミニクには技の威力だけでなく、その射程もアピールした方が良いだろう。空飛ぶマンティコアもグリフォンも一発で撃ち落とす俺の魔法、しかとその目にご覧あれ。


「ふぅー……」


 一つ息を吐いた後、視界の先に一頭の巨大なマンティコアの姿を思い描き、呪文を詠唱する。イメージを挟んだ方が意識も研ぎ澄まされ、技の精度も上がりやすい。


 威力も飛距離も、最大限に高めた詠唱。長杖を構えて狙いを定め、練り上げた魔力を一気に杖先から解放した。

 俺が狙うのは的の中で最も頑強なものだ。運び込んだ丸太を金属板や革、厚布で後から念入りに補強してある。

 

 的に着弾した火と水の魔力が、衝撃と共に混じり急速に反発し合う。高エネルギーから生じた爆発が、自身の当てた的のみならず周りに居並ぶ木製のそれをも吹き飛ばした。


 こちらまで飛んできた木片を、ドミニクの部下やロミアスが魔法で弾き落とす。

 ……ちょっと張り切りすぎたかなぁ。


「……素晴らしい! ゲラン殿から話は聞いてはいたが、よもやこれ程とは」


 あ、喜んでる。結果オーライかな?


「しかし耳にしたものとは幾分様相が違う……もしや詠唱の内容や込める魔力量によって、威力の調整が出来るのか」

「あ、ええ。実戦では相手に合わせて、多少詠唱の種類を変えてます。といっても幅はそこまでありませんが……」

「なるほど……ユウマ殿の戦いの才もまた、天より授けられたものなのでしょう。我が祖母エストは、彼の母君たる異邦人の才を継ぐことはありませんでしたが。覚醒遺伝で私の父にその血と天の加護を色濃く伝え、後世に広めた」

「…………」

「いやはや、まこと素晴らしい。ぜひ貴殿とは今後とも友好を深めていきたいものですな。今宵の会食では、私の年頃の倅も紹介しましょう。我がランバルは、ユウマ殿のことを心より歓迎する」


 …………あの、ずっと気になってたは居たんですが。


 ランバル卿。なぜ俺の伴侶かつこの国の第一王子であるシュルツに、話題を振る所かまともに目すら合わせないんですか?


 そしてシュルツ。お前はいい加減怒った方が良い。だってこれ十中八九舐められてるぞドミニクに……アッ、なんだその「仕方ない」みたいな顔は! 万が一ランバル家と俺たちの友好を結ぶ作戦が上手く行かなかった時、下手したらお前がこの国の王やらなきゃダメなんだぞ! しっかりしてくれぇ。


 

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