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116. 子作りするってよ



「ユウマ……」


 いよいよこの時が来た。

 俺は今シュルツと二人、城奥にある寝所にて隣り合って座り、互いの顔を見つめあっていた。


 転性の儀の後。俺の体内には、子を成すための器官が一週間ほど留まるのだという。その期間内、伴侶シュルツの協力のもと子供を作る。


 ……覚悟は出来ていたつもりだが、それはそれとして緊張するなぁ。

 いやだって元の世界や今までも、行為そのものは経験してきたがそれで子供が出来ることは百パーあり得なかった訳で。でも今シたらマジで出来るんだよな? うわー……まだ実感湧かない。


 シュルツの手が伸びて、こちらの顔に触れた。ロミアスに化粧を施してもらった目元をかすかに親指でさすり、口を開く。


「お前は普段のままでも充分魅力的だが、今日は一段と愛らしい」


 ひゃあストレートな褒め言葉……て、照れる。


 今の俺はロミアスに施してもらった薄化粧と共に、その身を宝飾で飾っていた。

 繊細な銀細工の髪飾りは、細やかな青と黄の宝石を散りばめ夜の最中もきらきらと輝く。手首と足首にも似た装飾をまとい、体の大部分は帯で留めただけの厚手の白絹に覆われている。


 通常、特に転性の儀による初夜では、こうして抱かれる側が着飾るのが通例なのだそうだ。元々この世界は本来の恋愛対象が異性であろうと、魔力持ちは同性と番って子を成すのが常となっている。故に少しでも抱く側がその気になるよう、抱かれる側は宝飾で身を飾り、また厚手の白絹で体を隠し行為に及ぶことが珍しくもないのだそう。しかし。


「私の手で脱がせても良いか?」


 その許しを得る前から、シュルツの手はこちらの帯にかかり、すぐ様にでもその衣をはごうとしていた。

 ……世の魔力持ちの事情はさておき、俺とシュルツに関してはもう八ヶ月近く床を共にしている仲な訳で、今更互いの裸にどうこういう関係性ではない。


 帯がシュルツの手により解かれ、瞬く間に俺の身は髪飾りと手足の宝飾を残し、産まれたままの姿となった。


「シュルツさま……」


 こちらの肌に触れるシュルツの手が微かに震えているのを見て、思わず小さく笑みを零す。


「ふふ、緊張してしまいますね」

「ああ……ユウマ、本当に私と」


 先に続くのであろう言葉を察し、俺はシュルツの首に腕を回して引き寄せる。そうして形の良い唇に自身のそれを重ねて口付けた。

 

 不安と緊張と、しかしそれ以上に、期待の感情が胸の内で膨らんでいるのも事実であった。


 

 愛する人と、シュルツとの間に子が欲しい。……だって俺子供好きだし、それ以上にシュルツの事はもっと好きだから。俺たちの子供が出来たら絶対可愛いし、めちゃくちゃ可愛がれる自信もある。いやぁ楽しみだな。この一週間頑張るぞぉ。





「シュルツ様……これ昨晩の時点で絶対デキてますよ……」

 

 一週間の籠りの二日目。俺はシーツに包まりながら、ベッドの外にいるであろうシュルツに語りかけていた。


「それは、まだ分からないだろう」

「げほっ、いやいや昨日の回数覚えてます……? 一日一回換算ならもう一週間分ですよ、シュルツ様? 十分でしょう……」


 今自身の体は絶賛ボロボロだ。腰もそうだが、声もがさがさに掠れている。の、喉が痛い。


「ユウマ、出来たぞ」

 

 そう言ってシュルツがシーツ越しにこちらの体をゆする。使用人に持ってこさせた湯と蜂蜜と果実で、彼は俺の為の飲み物を作ってくれている最中であった。ふわりと香る甘い匂いに、俺も白布から顔を出し上を見上げる。


 乳白色の陶器のカップを手に、シュルツはその美しい顔に柔らかな笑みを浮かべ、青灰色の目を細めながらこちらを見つめていた。その顔はいたく満足げで、満身創痍の俺とはまるで真逆である。


「……ありがとうございます」

「昨晩は無理をさせすぎたな。今日は夜までゆっくり過ごすとしよう」

「シュルツ様、今はもう夕方近……いや何でもないです」


 ほどよく温く甘い湯で喉を潤しながら、俺は微かに息を吐く。すごいな、あんなぶっ通しだったのにまだ全然元気だもんなシュルツ。若さもあるだろうが、恐らく肉体的な強さとタフさに起因しているのだろう。俺もシュルツやジュリオスみたいに剣の鍛錬をするべきか。


「ちなみにですが、こういう際に妊娠の有無を調べる魔法なんかがあったりは」

「……ない」

「そうですかぁ」


 そんな都合の良い魔法ないよな。じゃあ、あと六日間頑張るしかないか。トホホ。


 

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