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104. 選王の儀



 いよいよこの日がやって来た。選王の儀。ヴェイルセル王城の中で最も広大な中庭の中心には、人の一人や二人は収まってしまうであろう大きな竜の頭蓋骨。それを取り囲むよう、五つの豪華な肘掛け椅子と天幕がしつらえられている。


 儀式は昼前より始まり、五カ国の王らにもあらかじめ時間は伝えている。しかし約束の刻限となった後、そこに座する王はレムール、ネーベル、スーデンの三カ国のみ。ゼルフィ国王アリエスと、ナダグラ国王フェリペの姿がそこにはなかった。


 ええ〜……いや、百歩譲ってアリエスが遅刻するのはギリ分かるけど、フェリペはどうした? もう予定の時間からかれこれ数分は経ってるんですけど。


「……シュルツ殿下」

「ああ。これ以上来賓方を待たせる訳にもいくまい……同じ祖より出でし、我らが同胞の王達よ! 本日はこたびの儀に馳せ参じてくれたことを、誠に感謝する。刻限とあいなったゆえ、人数は揃わぬがこれより選王の儀を開始する」


 中央にしつらえた壇上にて、シュルツが儀の開始を宣言する。

 ……ひょっとして、エクス王子が何かしら手を回し妨害したのか。シュルツより少し離れた場所に立つエクスは、平然とした面持ちで兄王子の言葉を聞いている。うーんまあ、こっちとしてはどちらでも良いとはいえ、気分の良いものではないな。


 壇上にはシュルツとエクス。そうしてハラルドと俺。壇の下には控えるよう、ロミアスやダミアン、フラミス。そうして来賓の親族もここに来ている。スーデンの王弟ゲランもその一人だ。


「新レムール帝国第二皇子。カルロス・レムール・ルガリア殿下。どうぞ御前に」


 ハラルドの声かけと共に、天幕の下の座から、一人の男が立ち上がり中央の壇上へと向かう。


 カルロス・レムール・ルガリア。フェリペの腹違いの兄にして、新レムール帝国において最も皇帝の座に近いと言われている男だ。第一皇子が没し、皇帝が重い病を患う中、彼は今回皇帝からの委任を受けこの選王の儀に参加している。


 フェリペには余り似ていない、やせぎすの青ざめた顔をした男が、壇上に立ちシュルツの手から二枚の紙片を受け取る。最上級の羊皮紙で作られたそれは、表面から裏面にかけてぎっしりと儀式のための呪文が刻まれていた。紙片の中央にはそれぞれ、シュルツとエクスの名が書かれている。


 カルロスは懐から短刀を取り出すと、自らの親指に傷を付け、そうして溢れた血をエクスの名が書かれた紙の上へと垂らす。それを皆が見届けた後、彼は手に持った紙を巨大な竜の頭蓋にかざし、大きな声で周りに宣言する。


「新レムール帝国皇帝フェルナンド・レムール・アラゴンの名代。カルロス・レムール・ルガリアがここに宣言する。我は次代のヴァリエ国王の座を継ぐ者に、第二王子エクス・ヴァリエ・ランバルを指名し、ここに今誓いと証明を立てる!」


 そう言って、カルロスは手に持った紙を竜の頭蓋の空洞部、眼窩の深淵に向け投げ入れる。途端、竜の頭蓋の隙間から赤色の光が溢れ出て、周囲に配置された燭台の一つに赤の炎が灯り出す。


 何やら原理は分からないが、これが古の魔法を用いた正しい儀のやり方なのだそう。

 白、赤、緑、青、黄。それぞれ魔法の五属性たる天、火、風、水、土の中から、各々の王候補が好きな色を選びとる。そうして各国の王が自らの血を垂らした投票紙を竜の頭蓋に入れると、選んだ色の炎が周りの灯台に灯り、その数を集計し王を決めるのだという。


 ちなみにエクスは赤、シュルツは青を選び取った。この色は、通常自身の属性と被らないものを選ぶのが通例とされている。自分の属性にしてしまうと、他の王候補と被ってしまいややこしくなることが多かったからだそう。まあ、そりゃそうか。


 

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