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94. 包囲戦



 目標の地点に、レッサードラゴンがその大きな翼を畳み地面へと降り立つ。


 黄色がかった赤色の鱗は、その個体の竜種としての年若さを示していた。ドラゴンは大きく赤竜と緑竜に分かれ、年月を得るごとに体表からは黄味が抜け、色も深みを増していく。


「餌に食いつかないなぁ」

「罠に気付かれた可能性がありますね」


 ドラゴンの数メートル先には、魔鳥ロックバードを解体した屍肉の一部を配置していた。体長5メートルにも及ぶ巨大な鳥型の魔物で、ドラゴンの好物とされている。


 餌を配置した地点には、巨大な落とし穴を配置している。これに初めから掛かってくれれば話が早かったが、仕方ない。


「緊張するなぁ」


 即座に、次点で用意していた作戦へと頭を切り替える。ロミアスが伝達の魔法で各所に連絡を取る間、長杖と短杖に異なる魔法を込め直す。周囲の準備が整ったのを確認し、いよいよ俺はレッサードラゴンへの攻撃を開始した。


 長杖を地面に押し当て、練り上げた魔力を解放する。自身の二、三十メートル先にある目標目掛けて地面に魔力が伝い、瞬間レッサードラゴンの右翼目掛けて、巨大な土の槍が地面から出現しその皮膜を貫いた。


「ギャァア!」


 次いで短杖をかざし、練り上げていた風と土の魔力を若竜に向けて打ち出す。左翼を狙った一撃が、翼の根本へと直撃し炸裂する。


 本来、俺が得意とするのは火と水の爆発魔法だ。しかし竜種は「火」の魔力に対して特段高い耐性を持つらしく、今回は風と土の魔力にて同等の魔法を再現することにした。その作戦が幸いし、魔法を受けたレッサードラゴンの左翼は千切れかけ、ぶらりと垂れ下がっていた。よし。これで空中に逃げられることは無くなった。


「ハハハ! ずいぶんマヌケな姿になったなぁ! 空飛べなきゃお前なんざただのデカブツトカゲだ!」


 大声でレッサードラゴンを挑発しつつ、俺は木陰から姿を現しつつ次の呪文を詠唱する。


 未だ俺の土槍に縫い留められている若竜は、怒り狂った様子でこちらを睨め付け、その開いた口の隙間にごうごうと魔力が集っていく。ブレスを吐くつもりなのだろう。さあー……ここからはぶっつけ本番だ。


 短杖の先に十分な魔力を練り上げたと同時、レッサードラゴンの息吹が真正面の俺に向けて放たれる。


 瞬間、俺の数メートル先に現れた見えない風の盾が、若竜の灼熱の息を遮り周りへと逃す。それでもなお防ぎ切れなかった熱風は、自身の周りに巡らされた氷の魔力の守りによりかき消される。


 これは、ダミアンとロミアスによる魔法の守りだ。いくらドラゴンといえど相手は二十五年生きたばかりの若竜。熟練の魔法使い二人による二重の守りがあれば、大半の攻撃は無効化出来る。


 ブレスが止んだ後、土煙が晴れた先で無傷のまま立つ俺を見て、レッサードラゴンは大層驚いたように目を見開いていた。その虚を突いて、短杖に込めていた風と土の爆発魔法を、今度は竜の首の根本目掛けて撃ち込む。


「グルゥアア! ガァア!」


 くそ、流石に翼部とちがって胴体部分は硬いな。次の魔法を詠唱する最中、レッサードラゴンは周囲の気配を探るよう、辺りを見回している。ああ、これも予想していた反応だ。


 レッサードラゴンは土の槍に貫かれた右翼を、強引に体を捩ってちぎり捨てる。そうして目の前の俺目掛けて走ってくるかと思いきや、その体はふいと右を向き、木陰に隠れたダミアンの方へと走り出た。


「……ッギャウ!?」


 途端、目の前の地面から勢いよく突き出た鋭い氷柱に若竜の足が止まる。そのタイミングを見計らい、俺は短杖に込めた魔法を再びレッサードラゴンの首元に撃ち込んだ。


 流石『知能持ち』というだけある。レッサードラゴンは俺が現状魔法により守られている状態で、まず守護の魔法をかけている術者を倒さなければ攻撃が通らないことを理解したらしい。


 だが、そう分かっていても今は俺とロミアス、ダミアンが距離を取る形で対象を包囲している状況。いずれかに攻撃しようと近付けば、注意の向いていない方の人間がレッサードラゴンの攻撃を妨害する。そうして俺がその隙を付き、無防備な若竜を魔法で攻撃するという訳だ。


 レッサードラゴンはこの台地に降りた際、屍肉を餌にした罠があること自体には気付いたようであった。しかしもし、彼がより年数を重ねたエンシェント級、エルダー級のドラゴンであれば、目に見えた罠だけでなく、周囲に散る術者の気配にも気を配っていたことだろう。


 熟練の魔法使い二人を伴う包囲戦。これが決まった次点で、俺たちの勝利はほぼ決まったようなものである。

 さあー……あとは俺が最高率の威力の魔法で、若竜の首元に魔法を……当初の計算では四発確実にぶち当て、その首をへし折るだけ。いやでもさぁ、さっきから思ってたけど意外に硬いなこいつ? 大丈夫……?


 

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