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【番外編】フラミスとエクス



「あちらはうまくやっているようですね」


 アルザス樹海を臨む山の中腹。フラミスの水鏡の魔法により、空中にはレッサードラゴンと戦う異邦人と護衛二人の姿が鮮明に映し出されている。自身はそれを無視して、山上から見える台地での戦いの様子に目をこらしながら、口を開く。


「ふん、どうかな。あの精度の魔法を五発ほども撃ち込めば片は付くだろうが。異邦人殿に果たしてその力が残っているものやら」

「ユウマ様には今回、魔封の杖による魔力量の底上げがある。おそらくは問題ないかと」

「それで私を誤魔化せると思うな、フラミス。ユウマはあの土の巨槍を維持するのに、かなりの魔力を消費した筈……奴はリスクと引き換えにでも、直ぐさま土の魔法を解除して攻撃に全てのリソースを割くべきだった。判断を誤ったな」


 フラミスはしばし沈黙した後、言葉を紡ぐ。


「……ユウマ様にはまだ、切り札がある。しかしそれを使うタイミングを誤れば、確かにエクス様のおっしゃる通りの顛末を迎えることでしょう」

「フラミスよ、お前はどちらの味方につく」

「私がお仕えするのはヴァリエの王室とこの国の王陛下ただそれのみ。我が国の王が定まらぬ以上、あなた方二人の王子のどちらかに肩入れすることはありません、エクス殿下。だからこそ、ユウマ様の戦いに手出しをすることなく、こうして此処にいるのではないですか」

「信用ならんな。お前がこうして私を監視しているのは、ユウマに命令されたからだろう。まったく、あやつも抜け目がない」

「私に貴方とユウマ様を見張るよう、命を下したのは貴方の兄君シュルツ王子ですよ。殿下」


 一拍置いて、ふと自身の口から息が零れる。


「ハッ……そうか。兄上もようやく処世の術というものを分かり始めてきたか」

「エクス様は昔より処世に長けておりましたからね」

「なんだフラミス、何が言いたい」

「貴方は年端も行かない内から、よく兄上をそそのかし兄弟二人で私の薬倉に忍び込んでいた。ふふ、私や城のものに見つかるたび、叱られていたのはいつもシュルツ王子の方でしたね」

「……過ぎた話だ」

「いいえ過ぎた話ではございません。ここ最近、私の薬倉から試薬と毒の瓶を盗み出したのは貴方でしょう。エクス第二王子」


 フラミスの追及に、特段動じることなく自身も言葉を紡ぐ。


「盗み出したとは人聞きの悪い。ただ持ち出しただけだ。元よりフラミス、お前が調合する薬の原料費は全て我がヴァリエの国庫から出ている。王族であるこの私が好きにできぬ道理はない」

「ではエクス殿下。その薬は一体何に使われたので」

「ふん、何度同じことを聞こうが時間の無駄よ。薬は全て何者かに盗まれたのだ。兄上にもその件は既に報告している。お前も知っているはずだろう」

「ええ……再三聞きますが、本当に薬の行方はご存じないのですね?」

「知らん。そんなに疑うのなら、私の部屋を隅まで調べるなりすればよかろう」

「既に、第一王子の命であらためさせて頂きました」

「……ハ、どちらにも肩入れせぬとのたまっておきながら。聞いて呆れる」

「いえ、勿論私は中立の立場におりますゆえ。その際に第一王子の部屋も全て抜き打ちで確認させて頂きましたよ」

「ほう……目当てのものは出てきたのか?」

「私の調合した鎮静薬の在庫が、底をつきかけておりましたので補充しておきました」

「……」

「あとはユウマ様に着て頂くつもりだったのでしょう。ずいぶんと可憐で……大胆な衣類や宝飾の類がいくつか……」

「やめろフラミス、耳が腐る」


 聞かなければよかったと、心底そう思う。


 フラミスも最早こちらに言葉を投げかけることなく、戦いの様子を眺めていた。

 ……やはり気に食わない。自身の思惑通りにはいかなかったものの、この憎らしい異邦の男がくたばるやもしれぬ機会はまだ残されている。その待ち望む瞬間を見逃さぬよう、自身もまた遠い戦場の景色へと視線を向けた。


 

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