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87. ユウマの憂鬱



 舞踏会を終えた後、シュルツも立ち合いのもとエクスとの間に正式な契約を結んでから早三日が経った。


 

 あれから俺は、シュルツに口も聞いて貰えず無視され続けている。


「無理もありませんよ、ユウマ様。私とて、まさかシュルツ王子の許可を得ておらぬとは思いもしませんでした」

「討伐に関してはちゃんと許可とってたし……」


 そう、アルザス樹海のレッサードラゴン討伐に俺が参加するという許可自体は取ってる。まあシュルツとしては、万全の体制を整えた隊列に俺が加わる状況を想定したのだろう。


 ……そんな生温い条件では、エクスが祖の誓約を引き換えにした取り引きに応じる筈もないというのに。

 

「単身討伐と複数人での討伐では、その危険度も難度も大幅に変化する。ユウマ様にはお教えしていた筈です」

「ちゃんと分かってますよぉ、ロミアスさん。だからこそ条件付きの契約を結んだんじゃないですか」


『アルザス樹海に出現した知能持ちのレッサードラゴンを、自身の魔法のみで攻撃し討伐する』

 これがエクスとの間に交わした契約だ。


 この契約のキモはあくまで「自身の魔法のみで攻撃」と明文していることだ。つまり相手への攻撃手段こそ限定しているものの、それ以外に使用する魔法や伴う人数についての縛りには一切言及していない。


「エクス王子は、てっきり俺が単身でレッサードラゴンに挑むと思い込み契約を結んだ。ハッハァ〜流石に俺だってそこまで馬鹿じゃないもんね。ロミアスさんとダミアンさんの最強タッグにガチガチに守って貰いながら優雅に魔物退治しますぅ〜ハハハ」


 まあ流石に平時であれば、エクスも契約の穴に気付いていただろう。しかし踊りの合間という極めて短い思考時間、挑発に乗せられた上での判断。なによりエクス自身の俺に対する『侮り』が、結果的に功をなした。


 こいつなら本当に何も考えず馬鹿なことをやりかねない。そんな俺に対する負の信頼。人を見下し侮る癖のある、エクスという人間の隙に付け入った策略である。


「それにせよ、ユウマ様の魔法のみで討伐というのも、中々に厳しい条件ではあります。ユウマ様の魔力量は良くて平均程度。討伐自体は不可能ではないものの、失敗は許されないでしょう」

「そこはですねぇーフラミス様にも計画は都度見直してもらってますが」


 やはりどの案でも、魔力のリソース不足という課題にぶち当たる。

 まったくこの世界の神様だか何だか知らないが、どうせなら属性だけでなく魔力量もチートにしてくれれば良かったのに。どうしたものか。


「そういえば、ドミニク殿は世にも貴重な「魔封の杖」を所持しているのだとか」


 ロミアスの言葉に、俺は首を傾げる。魔封……何かで聞いたことがあるような。


「元来は魔物を封じる為に用いられていたそうですが、杖の性質の一つとして、使用者の魔力を長時間杖内に貯蔵する力があるそうです」

「なんだっけ、確かスーデンかヴァリエかの物語に出てきたような。イフリートだかジンだか」

「どちらにも類話がありますね。今は姿を消したとされていますが、実体を持たぬ魔物に対して有効な手立てなのだとか」


 ランプの魔人みたいな話だよな確か。使用者の願いをなんでも叶える杖とか。まあそれはフィクションで、実態はロミアスが言うよう対処に困る魔物を封じるため使っていたのだろうが。


「その杖を使えば俺の魔力を貯蔵して、実戦で使用する魔法の手数を増やすことが出来るという訳ですか」

「ええ。ただ問題は、ドミニク殿に杖を借りるための交渉が必要という点ですが……」


 一人じゃ無理なんだよな。ランバル家は今、グーリン家と共に謹慎中というか、王城の処分を待つ状態になっている。先日の白月の舞踏会にて、杖を持ち出すまでの騒ぎを起こしたからだ。


 ランバル家への処分に対する交渉材料の一つとして、杖の貸し出しを依頼できれば話が早いのだが。問題はそれを行うために、シュルツの許可を得る必要があるということだ。絶賛、彼を本気で怒らせ無視されているこの状況下でだ……き、気が重すぎる。


「とはいえ、杖の有無はユウマ様の安全にも大きく関わる所。シュルツ様も決して無碍にすることはないでしょう」

「うーん。いや、流石にそうだろうけど」

「大丈夫です! ユウマ様のために、俺からもシュルツ様にお願いします」

「ハハ、ありがとうジュリオス。気持ちは嬉し…………え?」


 振り返った先には、その後頭部にロミアスの短杖を突きつけられている、緑がかった黒髪の少年の姿。一拍して、ロミアスも侵入者の正体に気づいたのだろう。ひどく困惑した表情で、かざした杖を下ろす。


「え、ジュリオス、いつの間にここに……? というよりお前、グーリン家の屋敷に軟禁中のはずじゃ」

「抜け出して来ました! 俺、気配を消すのが昔から得意なので、ここに来る最中も気付かれずにすみました。ここは以前ユウマ様が教えてくれた四階のお部屋ですよね? いらっしゃってよかったです!」


 いや凄すぎるだろ。忍者か何かか。

 背後のロミアスが、冷や汗をかいてジュリオスを見ている。いや実際、これ護衛やってる側からしたらたまったもんじゃないよな。流石は武の名門グーリン家の血筋というか。


「ロミアスさん」

「……今頃、グーリン家の三男が行方不明になったという知らせが、きっとシュルツ様の耳にも届いていることでしょう。ジュリオス殿を伴って、さっそく殿下のもとへ向かいましょう」


 そうだな。これちょっとシュルツと喧嘩中で気まずいとか、そういうこと言ってる場合じゃない緊急事態だもんな? 道中、この末恐ろしい子供にも話を聞くこととして……うおお、もう次から次へと。


 

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