表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/148

【番外編】シュルツとアリエス



「お前とこうして踊るのは、実に六年ぶりになるな」


 美しい銀髪を優雅にたなびかせ、目の前の昔馴染みはそう悪戯げに笑う。


「覚えているか? 我らの父上が俺とシュルツの婚姻を持ちかけた日のことを」

「……ああ」

「白月の下で、この身を抱いたお前の腕の逞しさ、俺は今でも忘れてなどいないよ……」

「戯れはよせ、アリエス。私の伴侶はああ見えて嫉妬深い。お前もユウマのことはそれなりに気に入っているのだろう?」


 俺の言葉に、アリエスはその翡翠の瞳を見開くと、ふっとその唇に笑みを浮かべる。


「この短期間で、随分あしらいというものが身に付いてきたじゃないか。よほど伴侶殿の教育が良いと見える」

「お褒めに預かり光栄だ」

「今のは皮肉だっての。全く、昔の可愛げは一体どこにいったというのか。お前の従兄弟殿とは大違いだ」

「……リオナは息災のようだな」

「ああ、そのことなんだが……建国祭までといわず、あと二ヶ月ほど彼を貸してはくれないか? いま『試し』の最中なんだ」


 『試し』と、そうアリエスは言った。嫌な予感に、背筋を汗が伝うのを感じつつ、恐々とそれを口にする。


「まさかとは思うが……手を出したのか?」

「そのつもりで彼を差し出したのだろう」

「そんな訳があるか!」

「ハハハ! お前もまだまだ青いなぁシュルツ王子。俺の通り名を忘れたか? まあ安心しろ、万が一とあった時に産むのは俺の方だし、本人が望むなら責任も取るさ」


 ……流石に一欠片も想像してなかったといえば嘘にはなるが。思っていた中では相当悪い部類の展開に、胃が痛くなる。


「せめて、手を出す前に一言相談してくれ……なんの為に日頃文を交わしているのか」

「お前に止められたところで聞かぬぞ」

「物事にも順序というものがあるのだと言っている」

「俺がそんなものを律儀に守る性格と思うか? 24年も生きていて何を見てきたんだ、お前は」


 これに関しては、全くもってアリエスが正しいと思った。

 

 そうだな……そもそも彼にリオナを差し出すという判断をした、私が全面的に悪かった。今回の話を、一体どうリオナの親御方に伝えたものか。改めてかの家には迷惑ばかりをかけている。


「……リオナの件に関しては、善処する」

「ふふん、腹を括ったか。まあ悪いようにはしないさ。王位継承の件に関しても引き続き協力はしよう」

「弟のエクスから、何か働きかけはあったか」

「先日王宮にやってきたよ。手土産の宝飾と俺好みの年若い美男を連れて。あいつホント、連れてくる男の趣味だけは良いんだよな……リオナが妬くから今回供の方は断ったけど」


 あまり知りたくなかった情報の数々に、思わず眉間に皺がよるのを感じた。


 当然だがエクスも、選王の儀に対して本腰を入れて動いている最中のようだ。

 

 五票のうち、少なくとも三票はこちらでも根回しが済んでいる。しかし相手は一国の王。刻々と変わる状況の中、自らが背負う国と民を第一とした判断を、彼らは常に求められている。その最中で、自らとした約束が必ず果たされるとは限らない。


 今、ユウマがエクスの元に交渉へ赴いている。その結果次第で、今後の方針がいよいよ明確に決まるだろう。


「アリエス……」

「なんだい幼馴染殿」

「私とエクス、お前はどちらが王に相応しいと思う」


 それは半ば意味のない問いかけだ。アリエスもまたこちらの意図を悟ったのだろう。その桜色の唇をにやぁと三日月の形に歪め、こちらに身を寄せると、自らの耳元に囁くよう言葉を吹き込んだ。


「お前たちのどちらが王になろうが構わない。俺は俺のやりたいようにするだけさ。だからシュルツ王子。私の心を意のままにしたいのなら、お前自身の唇でこの俺を口説いてみせろ」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ