98 モンスター登場!
年内最後でこの内容、後味悪くてスイマセン。よいお年を。
えーっと……
誰?
謁見の準備が整いましたと、案内された部屋は20畳はありそうな部屋だった。3段ほど上に上がった壇上にやたらごてごてした椅子がある。そこに、おっさんが1人座っている。
明らかに運動不足と思われる肉体に、濁った目の顎割れのおっさん。薄茶色の髪は薄くなりかけているが、口ひげはもっさり。
社長の息子というだけで専務の地位にいた、昔の上司を思い出す。
ああ、やだ。見た目で人を判断しちゃだめだけど、脂ぎった顔がどうにも好きになれそうにない。
「噂は聞いておる」
周りの人は遠巻きにいて、頭を垂れている。
私も、壇から数歩離れたところで、膝を突いて頭を垂れていた。そうしなさいと、部屋に入る時に侍女に言われたのだ。
っとに、何様?このおっさん。
「ピッチェには石鹸というものを、グランラには紙というものを教えたそうだな?」
頭を垂れたままなので、おっさんの表情は見えないが、きっと偉そうな顔つきしてるんだろうなぁ。これ、返事した方がいい?
勝手に口を開くと駄目なパターンもあるよね?
「予にも、何か教えてくれぬか?とっておきの物をな」
うはーっ。狸だ。一体どっからリエスじゃなくって、私がこっそり働いてるのを知ったんだろう。
利用する気満々だよ。
どうしよう。
「働きによっては、予の妻の1人として迎えてやっても構わんぞ。嬉しかろう?」
全身鳥肌ーーーー!きたーっ!
わぞわぞわぞわーーーーーっ!
助けて、何、このキモおっさん。自分がどれほど魅力のない人間なのか知ってるの?
嬉しいわけないじゃん。
それに、妻の1人って、どういうこと?もうすでに何人も妻がいるってわけ?しかも、妻達は喜んでるの?
わかった、脳内妻だ!間違いない!
きっとエロゲーにはまってるクチだ。って、この世界にゲームなんかないだろぅ!
やっぱり、あれしかないな。ひたすら勘違い。
そうじゃなけりゃ、金だけは持ってそうだから、金目当て100%の女にタカラレテル。
「感激で声も出ぬか」
勘違いキモおっさん暴走中。声も出ぬかって、喋ってもいいのかな?
「恐れながら、どのような噂をお聞きになったのかは存じませんが、私にはとてもお教えできるような知識はございませぬ。学も伴わない下賤の民でございます」
こういう、高慢ちき、勘違い、自分が偉いと思ってるキモおっさんには、下手に逆らわず、ひたすらへりくだるべし。
「そうじゃな、それは分かっておる。下賤の民とはいえ、異国の知識は有用になることもあるのじゃ。さぁ、教えるがいい、故郷の知識を」
「申し訳ございません。お役に立てるような知識は、どう考えても無いかと存じます。石鹸や紙のように、珍しいものは他にはございません……」
あー、もうやだ。早くこの場から立ち去りたい。
「どうしても、予には教えられぬというのか?」
ちょっと、聞いてるか?キモおっさん、教えられないじゃなくて、教えるようなことを知らないっていってるのにぃ。まぁ、嘘だけど。教えるとやばそうなことはたくさん知ってるけどさぁ。
「ふんっ、そうか、お前のような下賤で醜い女でも、働き次第で妻にしてやってもいいとまで言ってやったのに、無礼な奴だ」
はぁ~?
あんたこそ、何様だぁ!怒りがふつふつとこみ上げてくるけれど、我慢我慢。
「もうよい、連れて行け!」
キモおっさんが、壁際に控えていた男達に声をかける。
2人が、動き、私の両腕を取り立たせた。そして、引きずるようにドアへと連れて行く。
ちょっと、何、この扱われ方。まるで、罪人を引っ立てるみたいじゃないよ!
「1人で帰れますから、手を離してください」
流石に、罪人扱いには堪忍袋の緒も限界。両脇を固める男達の腕を振り払おうとする。が、がっちりホールドされていて振り払えない。
「ふんっ、誰が帰すと言った?夜を待つがいい、妻の座を逃したことを後悔するほどかわいがってやるぞ。予の趣味ではない貧相な体だが、なぁに、たまには趣向を変えるのも良いかもしれないしな」
思考停止。
は?
はぁ?
はぁぁぁ~~~~~?
何それ!信じられない。どういう思考回路?
っていうか、私がどういう態度取ろうが、初めから帰す気ゼロってことだよね?馬鹿にしてる。
妻にしてやってもいいとかいいつつ、結局はやりたいだけのエロキモモンスターじゃねぇか!
金だか権力だかなんだか知らないが、今まで散々やりたい放題、好き勝手している低俗低脳腐れ××××××!
おっと、いけない。
つい、えげつない単語まで飛び出しそうだ。
しかし、ここで相手を罵ったって、到底開放されるとは思えない。それより最悪な結果、例えば打ち首とかありそうだ。
いったい、この世界の人命の重さがどうなってるのかとか、地位による待遇の差とかどうなってるのかとか知らないけれど……。少なくとも、このエロキモは逆らうものには容赦なさそうで、ある程度好き勝手やっても咎められない立場ではありそうだ。じゃなきゃ、私の両腕をホールドしている男達がキモエロに仕えている理由が分からない。とても人望があって人が喜んで従っているとは思えない。屋敷の侍女達もそうだ。
それに……。
トゥロン。私をこの屋敷に連れてきたのは、トゥロンに間違いないよね?
もしかして、私が意識を失っている間に、トゥロンの元から誰かが私を連れ去ったという可能性が無いことも無いんだろうけど。
でも、トゥロンはずっと様子がおかしかった。
そりゃぁ、こんなキモエロモンスターに会わせるのが目的なら辛そうな顔もするさ。
申し訳ない申し訳ないと何度も言うさ。
トゥロンが、キモエロのいいなりなんて……何か事情が無い限りありえないでしょう?
このキモエロが、金や権力を持って好き勝手やれなきゃ、トゥロンが私をこんな目に合わせるわけないよね?
年始は1月3日から更新再開です。




