表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/303

91 ラトとの別れ……バイバイ

 ラトの寝息を聞きながら、そっと布団から抜け出す。

 ラトの髪に触れる。

 疲れた顔。

 できれば、元気な顔を最後に見たかったけれど……。


 どれくらいそうしていただろうか。

 ふと、ラトの目が開いた。

 ラトの青い瞳に、蝋燭の光が揺れている。

 ラトからは私の顔は逆光になっているはず。だから、涙の跡は見られてないはず。

「また、旅に出るの?」

 ラトの言葉に、首を縦に振る。

「そっか……」

 静かな返事が返ってきた。ラトの頭に伸ばした手を、ラトの大きな手がなでる。ラトの手の甲は白くて貴族のようだけれど、手の平は硬くてマメもたくさんできている。剣を握る手だ。

「『守護されし者の印』を遠慮なく使ってくれ……今はそれしか力になれない……」

 ラトは、それだけ言うと私の手を引いた。

 また、私は抱き枕状態。

 だけど、今度はラトがいつまでも起きているのを感じていた。

 どれくらいそうしていたのか。薄っすらと空が明るくなったころ、ラトは黙って出て行った。

 私は、ずっと寝たふりをしていたけれど、ドアの閉まる音を聞くと再び涙を落とした。


 バイバイ……。


「うわぁ!トゥロン、これどうしたの?」

 待ち合わせた場所に言ってみれば、2頭立ての小さな馬車が待っていた。

 幌だけど屋根も壁もある。

「紙の作り方を伝えるために必要な道具を運搬しなければならないということで、支給されたんですよ。まぁ、山奥の村には馬車ではいけない場所もあるため、途中からは徒歩も覚悟しなければなりませんが」

 馬車の中をのぞいて見れば、なるほど。紙をすくための枠だったり、イネ科の植物を乾燥させたものだったり、現地で一から用意するのが大変そうなものがいくつか入っていた。

 覚悟していた徒歩の旅が、馬有りになり、さらには仕事で給金までもらえる馬車の旅にグレードアップしました。

 幌とはいえ、ちょっとした風雨はしのげるし、もし野宿するにしてもテントのように使えるから便利だよね。紙の材料とはいえ藁の寝床付きだし。

 馬にずっとまたがっているよりも、楽だし。

「では、出発しましょうか、女神よ」

 表に出てる荷物は背負子一つ分。トゥロンがサッと受け取って馬車に積んでくれた。

 すでに、マーサさんたちに旅に出る挨拶はしてある。心の中でお別れの挨拶も忘れずにした。

 荷物の中から出すふりをして、鞄から布団代わりに使っていたクッションを2つ取り出す。

 御者台に二つ並べる。

 板に直接座るよりはマシなはずだ。

「ありがとう」

 トゥロンの隣に腰掛けると

「女神は、馬車の中でゆっくりしていて構いませんよ?」

 と、相変わらず優しい言葉をかけてくれる。

「ほら、2人しかいないわけだし、私も交代で馬車を動かせた方がいいよね?でも、馬車なんて操ったことないから、トゥロンさえ良ければ教えてほしいんだけど?」

「女性が馬車の操作など……女神、あなたは本当に不思議な方だ。分かりました。確かに、女神にも馬車の操作をお願いすることがあるかもしれません。私めでよければ、教えさせていただきます」

 そうして、旅立ちを迎えた。


 道中は、常にトゥロンは紳士的だったし、会話は楽しかったので退屈せずにすんだ。

 ちょうど1日分の行程を終える頃に宿泊施設のある街や村に到着するので、野宿も今のところせずにすんでいる。

 ミリアの街を出て7日。そろそろサパーシュ領に入るらしい。

「明日は、この街に馬車を止めて馬で西へ向かいます。山のふもとの村に馬を預け、そこから徒歩で2時間ほど山を登ったところに目的の村があるはずです」

 ここにくるまでにも3つほどの村で紙作りを教えに立ち寄った。もう、慣れたものだ。

 分かったとうなずいて与えられた部屋に引っ込む。

 流石に、馬車に乗りっぱなしなので、早くゆれないベッドでくつろぎたい!

 でも、正直馬車のランクは使節団のときとは雲泥の差だけど、今の旅の方が楽。

 メイク&ウィッグ&ドレスがないだけでも楽だし、人が少ない分気を使わなくても済む。

 トゥロンといるのにも気疲れしちゃったら、馬車の中に入って距離をとればいいし。まぁ、トゥロンといてめったにそんなことはないんだけど。

 でも、サパーシュに近づくに連れて、トォロンの表情が冴えないことが時々ある。

 吐き気を抑えるような表情を一瞬見せたり、天を仰いで辛そうな目をしたり。

 里帰りに何か不安でもあるんだろうか?実は母親が病に倒れたと知らせがあったとか?

 プライベートなことなので、聞くに聞けない。辛そうな顔を見せたら、そっと1人にしてあげるくらいしか私にはできなかった。


 部屋で恒例のメールチェック。

 今日も吾妻さんからのメールは来ていない。

 携帯電話の不調とかそういう理由は考えにくい。だって、10台もあるんだし。そうすると、考えられる理由は単純に忙しくてメールができないから。メールで連絡するような事柄がないから。私に対して連絡を取る気がない、避けようとしているから。

 うーん。避けられてると考えるとちょっと落ち込むなぁ。

 あと、もう一つ考えられるのは、私からメールが来るのを待っているから。押して駄目なら引いてみな?って、それは恋愛の駆け引きか?

 どうしようか。避けようとしているなら、メールすると迷惑になるだろうし。

 そう考えると、なかなかメールできないでいた。なんてメールしたらいいのかも分からなかったし。

 そうそう、郵便受けも溜め込まずチェックすることにした。何が届いているのか分からないからね。

 ユータさん本籍あてに出した葉書は今のところ戻ってきていない。

 あれ?

 ちょっと待って?

 何か、私、今、大事なこと忘れてたの思い出した!

 急いで、携帯を手に取り、吾妻さんにメールを書く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ