85 世界情勢
来るべきときが来た。
キュベリアのみならず、ピッチェ、グランラに、ほぼ同時にその情報は伝わった。
西の大国アウナスが動き出したのだ。
西の大国アウナスは、西側全域を統一支配していたわけではない。
実はぽっかりと、ドーナツの穴のように、もしくは川の中州のように、小国が一つ独立したまま残されていたのだ。
その状態が、およそ3年に及んだ。
次々と、周りの国を従え支配領域を拡大していくアウナス。
小国は、四方八方をアウナスに囲まれ、それでも尚アウナスの支配を逃れていた。
理由は定かではない。
小国の王とアウナスの王が親しかったためとも、小国に価値が見出せないためとも。
また、小国がアウナスの弱みを握っていたためとも言われている。
東の国々は、アウナスの動きを警戒しつつも、西の統一が完全になされてから、東に進出するのではないかと見ていた。
つまり、小国が落ちてから、アウナスは東へ矛先を向けると。
小国の王は、3ヶ月ほど前に亡くなった。
若くして立った新王は、アウナスにいつ攻め込まれるかもしれない恐怖から、狂王となった。
小国は荒れた。
アウナスは、それを待っていたのか、進撃を開始。
小国が、アウナスの手に落ちるのは時間の問題であろう。
戦後処理が落ち着けば、次は東だ。
キュベリア、ピッチェ、グランラの同盟を急ぐ必要がある。
そして、未だ同盟の足がかりを見出せていないトルニープに対しても早急に手を打つ必要が出てきた。
また、同盟だけに頼るわけにもいかない。
ありとあらゆる手を高じる必要が出てきた。
トルニープにもアウナスの動きの情報は伝わっていた。
トルニープに伝わっているのは、アウナスの動きだけではない。キュベリア、グランラ、ピッチェの同盟の情報も伝えられていた。
「さて、どちらに付くが良いか」
トルニープの王は、部下に命じた。
より良い選択を示せと。
予にとって一番良い方法を考えよと。
わずか2日後、小国が落ちた。
これで、大陸の西側はアウナスに統一された。
たったの2日の戦火。戦後処理といっても、アウナスには建て直すほどの損害もないだろう。
ただ、小国統治に力を注ぐだけのこと。それも、小国故に、また、多くの国を従えた経験がある故に、そう時間もかかりはしない。
ついに西側統一国家となったアウナスが次にどう動くのか。
そして、自国を守るためにどう動けばよいのか。
キュベリア、グランラ、ピッチェ、トルニープの東側国家は頭を悩ませることとなる。




