82 ラトがいる
ラトが出てくると漫才回になるのはなぜ?
で、何でラトはこんなにやつれてるんだろう?
ぐぅぅーーーーーっ。
盛大な腹の虫が鳴った。私じゃない、ラトだ!
「ラト、お腹空いてるの?」
ラトは私の腕に、腕を絡ませたままこくこくうなづいている。
……別に捕まえてなくたって、逃げませんから。だって、ここ私の家だし。
っていうか、ちょっとラトの態度はこどもっぽすぎやしませんか?
アレかな?ラトの中では私はユータさんの分身?ユータさんとは子供のころからの付き合いだから、子供返りしちゃうのかな?
「一昨日から何も食べてない……」
なんですと?
昨日と、今日の朝昼抜いたってこと?
そりゃやつれるわ!
「何で食べてないの?しっかり食べないと、体壊すよ!」
ああ、ラトの子供返りのせいか、私の口調、おかんになってません?
「うどんが、ない……」
はぁ~?
「うどんがないって、パンでも肉でも、なんでも食べればいいじゃない!」
子供か!本当に、子供か!
食べたいものしか食べたくないとか、子供じゃねーか!
「小屋には、うどん以外もなかった」
え?
「ラト、一昨日からこの小屋にいるの?」
どういうこと?
ラトはこくこくうなづく。
「なんで?」
「待ってた」
……待ってたって……。
「ラト、ちょっと、そこに座りなさい!」
ビシッと人差し指を指す。
そう、正座、正座をして座りなさい!と思ったが、こっちの世界の人間は正座できませんでした。お説教するにはちょいと中途半端な姿勢で、ラトは言われるままに座る。
「待ってたって、わた、僕はいつ帰るか分かんないのに?もし、今日帰ってこなかったらどうなってたと思うんだ?このまま食事も取らずにどんどん衰弱していって、人にも発見されず、のたれ死んでたかもしれないんだよ?」
「でも、少年は帰ってきた」
ラトが嬉しそうににへらっと笑った。
……あー、もうっ!
「で、一昨日からずっとって、家に帰ってないの?」
ラトはうなづく。
「仕事は?」
「ない」
は?
仕事がない?
あれ?いくらボンボンでも、仕事はしてたよね?お城の警備兵の1人じゃなかった?
……
そういえば、最後に見たときには薔薇のリエスを追いかけていた。そして、城の人にとっ捕まってたよね?
あれが問題になって首になったとか?
目の前で無邪気に笑っているラトの顔を見る。
ありうる。小屋に食べる物がないからと、何も食べずにいるような残念な男だ。大いにありうる。
むしろ、首にする口実になってラッキーとか上司は思っているかもしれない。
まさか、仕事を首になって、家からも勘当されたとかってことはない?
だから、金もなく住むところもなく着替えもなく、お腹を空かせて泥まみれで小屋に潜伏してたとか?
そして、急にラトは難しい顔をした。
「どうしたの?」
「えーっと、確かユータにこういうときの言葉を教えてもらったことがあったと思って……なんだったかな」
ホームレスだ、ホームレスって言うんだよ……。っていうか、ユータさんも無駄な言葉を教えたもんだ。
「そうだ、」
ラトが、ぽんっと手を打った。
「有給休暇!本当は休みの日じゃないけど、4日間休みを取ったんだ!だから、明日も仕事はないよ!」
ラトが得意満面の顔を見せる。
は?首じゃないのか!
「泥まみれの理由は?」
「1人で宿泊すると言ったら、周りのものに言われた。あまり綺麗な格好をしていると山賊にでも襲われかねないと」
だから、泥まみれかよ!
違うだろ、綺麗汚いの意味が!高級そうな服はやめて庶民っぽい服にしろって意味だろ!
誰が、泥まみれになれって言ったか!顔や髪まで泥ひっかぶれって言ったか!
いや、でも、服だけ庶民っぽくしても、その高貴さ漂うお顔見えてたら意味なかったかもしれないから、泥まみれがちょうどよかったのかもしれない。
ラト、顔だけはやたらといいもんな……。顔だけは……。
がっくり肩を落としていると、ラトが方向違いな言葉を発する。
「大丈夫だよ、ちゃんと寝るときはベッドを汚さないように着替えてたから」
ドヤ顔すんなーっ!
「その着替え持って、あっちの川で泥落としてきなさい!髪も顔も体も、その泥まみれの服も綺麗にして!その間に何か食べる物用意しておくから!」
着替えを抱えて素直に川に向かうラトの後姿を見て笑みがもれる。
残念なところも含めて、ラトの顔見たら、ホッとする。
この小屋が、今の私の家だ。
帰る場所があるというのは、嬉しいね。待っていてくれてありがとう、ラト。
明日「別視点」の方更新します




