60 会食さっさと終わる
確認できたので、シャルトたちが部屋から出て行ってから吾妻さんにメールする。
2日後の日が落ちてから、場所は王都にある女将さんの店。名前を覚えていてよかった。
合言葉を設定して、相手が分かるようにする。
佐藤梨絵の名前はばれてるけれどね、リエスの方は知られてないから。私の名前が出ないように、女将さんか、女将さんの知り合いに仲介を頼むつもり。まぁ、いくらか出せば、誰か引き受けてくれるよね?
メールを送信したら、今度は会食のために、フルメイクとドレス。
準備が整ったところで、ドアがノックされた。
さぁ、会食へ出発です。何が起きるのか!
会食を終えて。
何が起きたのか。
うん、あれだ。精神ゲージが、減ったね。
チュリ様とガンツ様のラブラブアマアマ攻撃に、独身アラフォー彼氏いない暦数年の私には、きつかった。
化粧をした顔も美しいが、素顔が一番好きだよ(ハート)。
とか。
私は、どんなガンツ様も大好きです(デレッ)。
とか。
多くの人の前に出してチュリを見せるのがもったいない(キリッ)。
とか。
いつもあーなのかとチュリ様つきの侍女に確認したところ、いつも以上ということだった。
なんだろう。誤解が解けた二人は、一歩上のステージにでも行ってしまったのだろうか。
何はともあれ、お二人にはとても感謝された。
リエスのおかげだと、何度言われたことか。
しかし、残念ながらキュベリアという単語を聞くことは無かった。そのあたり、ガンツ王は賢いよね。
そして、会食では、侍女たちが施した化粧をチュリ様はしていた。
それはもう、完璧!私が教えた以上のできばえだった!
グッジョブ!と、侍女に親指を立てて見せたが、ジェスチャーは伝わらなかった。
結局、会食に私を招待したのは、御礼を言うためと、侍女の化粧のチェック目的ということだった。
それから、チュリ様初めての外交?急に多くの人たちの前に出るよりは、少人数からということもあったようだ。だから、私とサマルーとシャルトの3人が呼ばれての会食になった。ほら、私にお礼言うだけなら会食って形じゃなくてもいいじゃない?呼んで御礼言って終われば。
外交とはいっても、チュリ様は顔見せだけなので特に難しい話もしなかった。キュベリアの面々も、余計な発言もせず穏便に終わった。
そう、穏便なのだ。
なんと、すばらしいことだろう。だって、いったんはガンツ王を怒らせちゃったんだよ?それが今回の会食では終始笑顔。
やりましたよ。汚名挽回じゃなくて、名誉挽回、汚名返上。
部屋に戻ると、ほっとして気が抜けたのと、疲れとで意識を失うように寝た。ああ、やっぱり徹夜の疲れが取れていない。1回徹夜すると3日はダメ……アラフォーなめんな、ぅ。メールチェックとか、まぁいいや……。おやすみ。
次の日、朝食が終り、広間に移動するとそこは市場だった。
「うわー、すごい……」
本当に、市場っていうか、繊維問屋と見まごうばかりに、広間いっぱいに生地が並べられていた。
40~50㎝幅の反物状のものが積みあがり、お勧め品と言うようなものが、広げられていた。そんなテーブルが、幾つも並んでいる。それぞれに商人らしき人物が数人付いている。
流石、お后様へのお祝いの品選び!
シャルトとサマルーと3人で、端のテーブルから見て回る。後ろにはアジージョ他数名の侍女が付いている。
商人が、こっちの布は素材は何で、織り方がこうで、染め方がどうだと説明してくれる。
えーっと、このペースで一つずつ説明聞いていたら、すごい時間がかかりますよね?
そこで、申し訳ないんだけど、商人の話をぶった切らせてもらうことにした。
「こちらの布はお幾らですか?」
商人の目が一瞬、点になる。流石に商売人だけのことはあり、すぐに表情を戻す。
アラフォーですからね、一瞬のことも見逃さないですよ!
なんで目が点?値札がないんだから、値段聞くよね?
「こちらは、金貨20枚でございます」
た、高い。
およそドレス1着分の生地が金貨20枚か。
「一番高価な生地はどれですか?」
私の質問に、商人は一瞬目をキラリと輝かせた。一瞬でも見逃さないよ。ふふっ。
お后様への贈り物だから、高ければ高い生地ほど喜ばれると勘違いしてる客にでも見えたかな?
「で、お幾らですか?」
「金貨100枚になります。ですが、それだけの価値が充分にございます」
げ、100万かよ!見た感じ、他の生地と何が違ってどうして高いのかさっぱりわかんないのに。
商人は、この生地がいかに金額に見合ったすばらしさがあるのか力説してるが、さっぱり耳に入りません。
そういえば、派遣先の制服で「うちの制服は、繊維の宝石と呼ばれる超長綿が使われているのよ!!」と自慢されたことがあったっけ。正直、あまり良さが分からなかった。普通の綿との違いが分からない。そもそも布見ても成分表示見ないと、綿100%の生地なのか見分けるのも難しい。そんな生地オンチな私ですよ。
「それでは、一番お手ごろな布はどれですか?」
一瞬、商人のほほが引きつった。だから、見逃さないって。ポーカーフェイスがまだまだ中途半端ですよ!
「本日お持ちした中では、こちらになります。金貨3枚です」
金貨3枚の布、20枚の布、100枚の布を並べて見比べる。やっぱり、分からない。
そっと、シャルトに尋ねてみる。
「値段の違いって、布を見て分かるものですか?」
「リエスさん、キュベリアの懐具合なら大丈夫ですよ。贈り物に金の糸目をつけたりしませんから」
いやいや、返事になってないし。
「正直なところ、よほど詳しくない限り、見て値段を当てることはできないでしょう。但し、これ以下の生地との見分けは容易ですよ」
と、サマルーが金貨3枚の布を指差す。
なるほど、金貨3枚以下の布はいかにも安物に見えるんだ。
だけど、ここに持ってこられた布は、値段なんて専門知識がないと分からないというわけね。ふむふむ。
値段じゃなくて、本当に似合いそうな生地を選びたい。でも、選んだ生地が安物丸分かりだと「こんな安い布を贈るとは侮辱するつもりか!」と思われても困るしね。生地を見て値段が分からないなら大丈夫だよね。
うん。これで、安心して選べる。




