59 資金提供
「どうですか?一座の皆さんと、お祝いの相談ははかどってますか?」
サマルーが一番に口を開く。
さて、どう答えたものか?
「使節団の方は、どうですか?」
とりあえず質問返ししとく。
「今回は、ガンツ王にではなく、后であるチュリ様のお祝いですから、無難に装飾品にしようということになりました」
シャルトが答える。
「そこで、リエスさんに品選びをお願いしたいのです。リエスさんはとてもセンスがありますから」
シャルト、何を持ってして、私のセンスを知ったのか?こっちの世界の流行とか全然知らないよー。もっと別の人に頼んだほうがいいと思うよ。
「私は、貴族ではありませんし、高貴な方がどういったものを好むのか知りません。とてもお役に立てるとは思いません」
断る。
「そう難しく考えなくてもいいですよ。今回は日数もありませんので、ドレスや装飾品をデザインして仕立てるわけではありません。材料となる生地や宝石を贈るつもりです。リエスには、チュリ様に合う色を選んでもらえればいいのです」
ああ、そうか。チュリ様のお顔を拝見したのって、使節団の中では私だけだもんねぇ。
髪の色や肌の色も知らなければ、どんな色が似合うのか分からないもの。
「分かりました。チュリ様に似合う色を選べばいいのですね」
引き受ける旨を伝えると、サマルーは軽く頭を下げた。
「ありがとうございます。明日、幾つかの業者が商品を持ってやってきますので選定をお願いします」
「明日、ですね。」
ってことは、迎賓館にいなくちゃいけないってことだよね?どれくらいの時間かかるんだろう?
街に出る時間あるかな?まぁ夕食後でもいいし、何とかなるか。
明日の予定、チュリ様の贈り物の選定、街の準備のチェック、吾妻さんへの荷物の梱包。
そうだ、女将さんに資金の提供の約束したんだ。
「あの私からもお願いがあるんですが、お金ください」
サマルーとシャルトが、ハッとし顔になる。
「もちろん、それなりの報酬は、」というサマルー。
「何かお困りでしたら、僕が力になります」というシャルト。
おっと、言い方がまずかった。
「お金がいるのは、私ではないのです。何から話せばよいのか」
そして、どこまで話せばいいのか。
「チュリ様の出産の際、王都市民がお祝いをしたという話はご存知ですか?」
「ええ、詳細は知りませんが、街を上げたお祭を催したそうですね?」
「どこの国でも同じですね。何かを理由にお祭を催すというのは」
サマルーもシャルトも、使節団の人間がその程度の認識かぁ。
もうちょっと情報収集したほうがいいよ。
いないのかな?他の国の情勢を常に伝える、お庭番?スパイ?そういう人。
それとも、伝聞の伝聞の伝聞とか、伝言ゲームみたいに情報がどっかで抜け落ちちゃうのかな?
もしかして、紙がないから本当に伝言ゲーム状態なのかも。
報告書ってどうしてるんだろう。板に書いてる?革とか布とかに書いてるのかな?どちらにしても、紙より嵩張ることは間違いない。特に板なんて小さく折りたたんで懐に隠すなんてできないし。見つかったときに、飲み込むというような荒業もできないよね。
「今は詳細は省きますが、チュリ様もガンツ様も、王都市民のお祝いに大層感激しているという話です。チュリ様付きの侍女に聞いた話ですから確かだと思います」
「ほー、ガンツ王の心をも動かすのか」
サマルーが食いついた。
「今回、チュリ様の快気祝いということで、再び王都市民も動くようです。キュベリアも、その祭に一枚かませてもらうというのはどうでしょうか?市民とキュベリアの共同プレゼントということで」
「そこで、お金ですか。資金提供ということで協力を申し出るということですね」
サマルーは頭の回転が速くて助かる。これだけ頭が働くのにイマイチ使節団の行動が物足りないのは、やっぱり情報不足だからかな。
「ぜひ、資金を出しましょう!」
「そうですね。しかし、王都の人間がどう思うか。金だけ出して、成果を横取りするような行為を受け入れてくれるだろうか?」
サマールの言うことも最もだ。女将さんもはじめは渋い顔してたし。
「実は、昨日街へ出たときに、偶然入った食堂で祭の主導者に1人と知り合いまして……その方は食堂の女将さんだったのですが、交渉の末よい返事を頂くことができました」
技術提供のことは伏せる。そして、相手が女将さんだという事実を入れ込む。
「ああ、なるほど、女将さんにもメイクを?」
頭の回転の良いサマルーのことだから、勝手に交渉内容を想像してくれた。
今は本当のことは伏せておく。
「想像にお任せいたします」
しかし、どれだけメイクが万能だと思ってるんだろう?女性にだって、全然見た目のこと気にしない人だっているんだよ。サマルーとか上流階級の人は、着飾ること命の人が多いんだろうか?
まぁ何はともあれ、、無事に資金ゲット。女将さんに明日届けることになった。
「そろそろ、お時間が……」
話がひと段落ついたところで、アジージョが声をかけてきた。
「ああ、もうそんな時間か。リエス嬢、実はガンツ王から夕食に招待を受けている。ぜひ、リエスに会ってお礼がいいたいということだ」
あー、そうだった、そうだった。今日の予定は会食が残ってた。
「一つお尋ねしたいのですが、2日後の予定はどうなっていますか?私は、街に出たいのですが、よろしいですか?」
これ、確認しておかないと。
もちろん、お祝いの準備のお手伝いしようと言うのもあるし、吾妻さんへの荷物の受け渡しもしなくちゃいけない。さすがに、迎賓館まで取りに来てもらうのは「身バレ」しちゃいそうなので避けたい。
身バレ、うん、やっぱりまだ正体はなるべく隠したい。吾妻さんがどういう人なのか分からないもの。
1000万とかぽんっと出せちゃうなんて、やばい筋の人かもしれないし。吾妻さんと山下さんがどんな関係なのか分からないけれど、頼まれたからって、携帯を何台も契約できる?結構本人確認とか、めんどくさいんじゃない?もしかして、山下さん名義なんだろうか?それにしても、スマフォ4台と携帯4台でしょ?1台5千円としても、月に4万ずつ料金かかるんだよ?
もう、私の感覚では謎だらけで、想像もつかない。だいたい、どうやって膨大な数の出品がある中から、キュベリアの銀貨を発見したんだろう?それも謎だよ。まさか、レイヤーとか?
「2日後は、チュリ様の顔見せの後、簡単な祝賀会が催されます。私達も招待を受けていますから、昼食時から夕方くらいでしょうか」
「そうですか、では、日が落ちてからは街へ出ることができますね?」




