46 キュベリア使節団の余興
迎賓館の2階の個室が宿泊にあてがわれた。サマルーやシャルトたちは、明日からの行動の打ち合わせをまだやっていたが、私は先に休ませてもらった。
だって、正直に言わせてもらうと、夜更かしは美容の天敵ですから。
……違った、明日に備えないといけないから。
というのも嘘で、なんだか実のない堂々巡りの会話が続いていてうんざりしちゃったんだよね。
だってさ、いいアイデアがパッと出るんだたったら、キュベリアに居るときから提案できるでしょ?今いるメンバーではなかなか新しい発想は難しい。
部屋はさすがに普通だった。居心地を良くするためにはあまり奇抜な部屋ではだめだという配慮かな?
部屋に入ると、鍵をかけて、薔薇のリエスにさようなら。
化粧を落として、汗をぬぐってさっぱりしてベッドにダイブ。
くあーっ。やっぱり、ジャージ上下はやめられない!誰も部屋に入ってこないのをいいことに、ジャージです。アラフォー女子の部屋着兼パジャマです。10年ものですが、何か?
さてと。まずはメールチェック。
吾妻さんからは、あれからメールがない。もしかして、100万円を工面したりしてるのかな?でもさ、工面が必要なくらい日本円の蓄えがなかったら、10台も所持したら携帯を維持するだけで毎月幾らかかるんだろう?
980円の激安コースでも10台で1万円近くでしょ?
ん?ちょっと待ってよ。
そもそも、誰が契約するわけ?
私は、日本からこっちの世界に持ち込むことはできるけど、日本で契約はできないよ?
だって、携帯会社に出向くわけにいかないんだし。そもそも、本人じゃないと契約どころか解約もできないよね。結構厳しい。家族だろうと代理は無理だとか、家から出られない人はどうするんだろうとか思ったことあるもん。
ネットオークションで、携帯電話やスマートフォンの機械は売っているから、自分でもなんとかできるのかな?なんて思ったけど、だめだよね。電池を新しくするのと話が違うもん。
10台持つって、新規契約だよね。そうだ。
うっかりしてた。
どうしようかな。今使っている携帯電話の機種変更だって、難しいよね?
使っている携帯電話の電池が入手できないかっていう方向でいいのかな?だけど、古いものだと難しいよね?携帯電話なんてどんどん変わってるもん。んー、一度、来店せずに機種変更とかできるか問い合わせてみようかな。
オークションへの出品はやめたので、オークションチェックはなし。
あとは、手紙が届いていないか、郵便受けを見る。
運がいいことに、このアパートは建物の入り口に郵便受けがないタイプで、部屋のドアに郵便受けがある。
多分、他のアパートとかでは新聞受けにあたるところだと思うんだけど、そこに郵便も届く。
郵便受けには、葉書が1枚。
あ、選挙のお知らせだ。そうか。日本ではそろそろ選挙があるんだ。
封書は、ダイレクトメールが2通だけだった。
「あー、また今日もユータさんからの手紙が届いてないなぁ……」
もしかして、郵便事故か何かで届かなかったのかな?もう一度手紙を書いて送った方がいいかな?
よし、グランラから帰るときまでに手紙が届かなかったらもう一度送ってみよう。
今は、ユータさんからの返事を気にするよりも、ガンツ王を驚かせる何かを考える方が大事だ。
何かないか、ネットで調べる。
って、闇雲に調べても、何も出てこない。何も出てこないというのは御幣があるかな。逆に情報が散乱しすぎていて絞ることができない。多すぎる情報は、逆に無いのと同じと感じるとは。
ガンツ王が何に興味を持っているかとか、検索を絞るための情報が必要だ。
まてよ、そもそも同盟って、驚くものを見せられたからってほいほいしちゃっていいんだろうか?そんなことを基準にする?
もし、それが本当ならば、ガンツ王は空け物?
仮にも国の存亡が左右されるような同盟の話ですよ?
んーっ、考えても仕方がないか!明日、ガンツ王を見ることがあれば、空け物かどうかも分かるよね。
あっという間に、退屈王と呼ばれるグランラの王、ガンツとの面会の時間がやってきた。
私は、余興のために、グランラに勤める双子3組の片方ずつにメイクを施した。
「良く来た。キュベリアの者たちよ。長旅ご苦労であった。滞在中はゆっくり休まれるが良い」
王座に座るガンツ王は、まさに王といった貫禄がある。徳川家康のような安定感に、織田信長のような鋭さが垣間見えるといったイメージの雰囲気だ。
見た目は40代、立派な体躯は、武勇伝を幾つも想像させる。濃いグレーの髪にグレーの瞳。太いグレーの眉毛に口ひげと顎鬚。
この見た目で空け者だったら驚くわ。
「我がグランラも、今後キュベリアと親交を深めたいと思っておる。色々と話を聞かせてくれ。5日後に時間を取りたいが、どうであろう?」
王の言葉にサマルーが頭を下げる。
「はっ。ありがとうございます。是非に、5日後にお話をさせていただければと。その前に、本日はガンツ王のために幾つかの余興をご用意させていただきました。ご覧いただければと思います」
「余興とな?それはいい。早速見せてくれ」
ガンツ王に促され、まずは踊り子達の入場。キュベリアのとある地方に伝わるという独特の踊り。
「なかなか、面白い」というのが、ガンツ王の感想。
次に、何と縄跳び曲芸。いつの間にそこまで進歩したんだろう。長縄跳びを2本回して、その間を飛んだり回ったり。
す、すごーい。
「ほほー、これはこれは、初めて見るな」パチパチパチが、ガンツ王の反応。
「では、次にご覧いただくのは、彼女達です。彼女達はいずれもこのお城に勤める双子の姉に当たる方です」
3名のメイクをしていない双子の姉が入場する。
「ん、中には見たことのある顔もいるな」
次に、顔をベールで覆った双子の妹が、それぞれの姉の横に並ぶ。
「隣に並びました者は、双子の妹でございます。今回、キュベリアから同行いたしましたリエスが化粧を施しました」
名前を呼ばれて、一歩前に歩み出る。そして、頭を深く下げる。
「変わった余興だな。双子ということは、化粧をした顔としてない顔を見比べるという趣向か?」
「まさしくその通りにございます。どうぞ、ご覧ください。キュベリアでも話題のリエスの化粧の腕前を」
双子の妹達3人がベールをはずす。
「っ!」
息を呑む音が、部屋に控えている人たちの間に起こる。
ガンツ王の反応は?
「リエスと申したな、顔を上げよ」




