28 余興
以前活動報告で募集した国名に、匿名希望?でいただきました国名を登場させました。今回は略称ですが正式名称ものちほど出てきます。ありがとうございました!
旅の1日の行程は前とほぼ同じ。日が暮れる前に宿場町について、日が落ちてから夕飯。宿は一人部屋を割り当てられたから、やっと息が抜ける。
しっかりドアに鍵をかけてから、メールチェック。あ、入金通知だって。オークションで落札した人からだ。
早速発送しなくちゃ。自宅へ集荷をネットで依頼。時間は、明日の今ぐらいの時間。この時間なら明日も宿で一人のはずだ。
送料現金で用意しなくちゃ。久しぶりに、財布を除く。普段からあまりお金を持ち歩かないので、中身は3608円なり。あと、へそくりが、引き出しの中に。2万円。合計23608円。送料現金払いのみだと、あと幾つ送れるんだろう。
3日目に、国境を越えた。国境を越えると、ピッチェ側の警護が増えた。まぁ、自国内で他国の要人に何かあったら戦争になりかねないし。
馬車に揺られながら、窓を少し開けて外を見る。ピッチェはどんな国なんだろうか?
道沿いに見える集落は、さほど大きくないけれど、貧しさは見られない。
裕福ではないけれど、生活に困窮するようなこともなさそうだ。
また、宿場町も、キュベリアよりも規模が小さい。キリアほどの大きさだ。国全体の印象として、キュベリアの縮小版という印象だった。
ピッチェに入ってから、警備上宿からは一歩も外へ出られなかった。街に出て見たかったけれど仕方がない。
6日の夕方に、王都へたどり着く。謁見等は翌日ということで、王城の離宮へ通された。
明日の打ち合わせをして、部屋に戻る。
あれから、ネットオークションは売れない。あー、やっぱり胸当てはマイナーすぎたかな?新しく商品考えないと。しばらく買い物できなさそうだけど、どうしようかなぁ。今あるもので、売れるものあったかな?
本棚の上のホコリをかぶったクッキーの空箱を手に取る。何を入れてたっけ?
蓋を開けると、大量のカード類が出てきた。財布に入りきらないスタンプカードや会員カード、使わないものから入れたんだった。もうつぶれた店のものまで取ってある。さすがに捨てよう。
「テレホンカードだ、これ売れるよね」
3年くらい前だったかな?
「昔は、会社説明会に行くだけで交通費でお金がもらえたんだ。最低でもテレホンカードくらいもらえたんだぞ」
バブル世代の先輩が言った。
「いいなぁ。」
バブルがはじけた後の私はため息をつく。
「テレホンカードって何ですか?」
新入社員の子がきょとんとしている。
「え?テレホンカード知らないのか?公衆電話で電話をかけるときに、お金の変わりに使うカードだよ」
「こーしゅー電話って何ですか?」
そ、そこから?そこからなの?
「図書カードみたいなもんだよ。電話料金を払うカード。携帯の電話料金も払えるんだぞ」
という会話を思い出した。
テレホンカード知らない世代がいるとか。歳を感じたわ。昔は携帯電話なんて今みたいに無かったから、受験のときは「何かあったら電話するのよ!」と10円玉とテレホンカードを持たされたものだ。
ネットオークションで、テレホンカードを検索する。プレミアものじゃなくても、未使用なら落札されてる。
「NTT電話料金の支払いに使えるんだよね?オークションでの落札価格って、額面の3分の1くらいだ。もしかして、オークションでテレホンカードを安く買えば、電話代金の節約できるってこと?日本に帰ったら、この節約術実行しなくちゃ!」
未使用じゃないとだめか。手元の穴あきテレホンカードを箱に戻す。
他に売れるものないかなぁ。
胸当てを落札した人からメッセージが届いていた。
「無事に受け取りました!イメージ通りでとても満足しています。グラマキのコスプレに使いたいと思います!ありがとうございました。」
コスプレに使うのか。なるほど。その使い道は思いつかなかった。
入札のない胸当ての再出品時にタイトルを『本革 胸当て インテリアやコスプレにどうぞ』と変更してみた。
ん?待てよ?この世界の服装なんて、日本じゃコスプレだよね?こっちの世界のあれこれをコスプレグッズと銘打ったら売れるんじゃない?例えば、このメイド服なんかも。
アジージョに頼んで用意してもらったメイド服を手に取る。いやいや、勝手に売っちゃだめだよね。所有権がはっきり私に移ってからじゃないと!
次の日、謁見は昼前に行われた。
王の間の入り口には騎士が左右に並ぶ。講堂のように広い部屋の一番奥、3段ほど高くなった場所に女帝レイナールは座っていた。私たち使節団の全員が入室を許された。入り口に一番近い場所、つまり女帝から一番遠い場所で膝を付き頭を垂れたまま控える。
使節団の団長を務めるシャルトと副団長のサマルーの二人が代表して、レイナールの前まで歩みを進めた。
形式的な挨拶に続いて、セバウマ領からの貢物の提示。
女帝からの感謝の言葉と、歓迎のための舞踏会を催すことが伝えられた。
そして、退室を促す言葉が続く。
え?こんだけ?本当に、挨拶程度なんだけど?まさか、過去2回の使節団もこれだけだったの?
「今回はちょっとした余興をご用意いたしました」
「余興とな?」
挨拶の間は終始覇気のない声音だったが、ここにきて女帝の声に生気が宿る。
つかみはオッケー?
「ちょっとしたクイズにございます、後ろの者を数名こちらによこしてもよろしいでしょうか?」
「許す」
その言葉を合図に、レジージョとアジージョが、シャルトの元まで歩み寄る。面を上げることを私達も許されたので、ここで初めて女帝の顔を見た。
美に関心が深いというだけのことはあり、女帝の座る場所は華やかに飾られている。椅子一つとっても、足から手摺り、背もたれにいたるまで優雅な曲線を描きとても芸術的だ。
華美すぎず、それでいて女帝の魅力を存分に引き出すドレスのデザインは秀逸。
齢40と聞いているが、とても40には見えない。
アジージョとレジージョ二人がシャルトの隣に立つ。
「二人は、セバスール伯爵家にて侍女頭と、副侍女頭を勤めるものです」
「その二人がどうしたのじゃ?」
「陛下は、この二人はどのような関係だと思われますか?」
「ふむ、それがクイズというのじゃな?二人の顔つきは似たところもある。親子じゃろ?親子で侍女頭と副侍女頭とは珍しいが、ないこともあるまい?」
「いえ、親子ではございません」
「では、なんじゃ?」
「今、答えをご覧に入れます」
シャルトが片手を上げる。若い侍女が、お湯を入れたタライとタオルをアジージョの前に出す。
アジージョは、お湯で顔を洗って、化粧を全部落とし、顔を上げた。
「お分かりいただけましたか?」
元々化粧をしていなかったレジージョと、化粧を落としたアジージョの顔を、女帝は驚きの顔で見比べる。
「なんと!双子であったか!これは驚いた、驚いたぞえ!先ほどまでは確かに親子にしか見えなんだと言うに……」
女帝が、椅子から腰を浮かせた。
やった!食いついてくれました!朝早くからアジージョさんのメイクを頑張った甲斐がありました。これで、肩の荷が下りました。
「もう一度、見せてはくれぬか?城にいる双子を連れてまいれ!」
という女帝の声に、サマルーが私に目で合図を送ってきた。
静々と、サマールの元まで歩いていく。
「この者が、化粧を施しました。発言を許していただけますか?」
「許す」
えー、許されたって、何を話せばいいの!




