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第253話 トゥロン王からの頼み

 って、待って、私は戦争させない方法を考えようとしてたんだけど。

 ユータさんの提案してくれたことは、ウォルフに対抗する手段で、つまりは戦う方法だよね。……まぁ、ありがたく使わせてもらうけど。

 動画を見終わる。どうやら、巨大な木造建築物的な物を作らなければならない。っていうことは、木材が必要だ。

 日本のように、どこも山に囲まれているわけじゃないから、5日で完成に持っていくまでにどれだけの木材を入手できるのか……。

「はい、設計図」

 動画を見終わったころ、ユータさんが設計図を書き移し終わった。

「たぶん、これだけでは想像できないと思うから、模型を作るよ」

 模型?確かに、動画では机の上におけるくらいの大きさの模型だったけど……。それでも今から作るの?

「この近くにホームセンターあるかな?材料さえそろえば、夜までには作れると思うよ」

「そんなに早くできるんですか?」

「いろいろ作ったからね。結構得意なんだよ、木工とか」

 そういえば、キュベリアのあの山小屋には、手作りと思われるものがたくさんあった。やっぱり、ユータさんが作ったものだったんだ。

 先ほどまで動画を見ていたスマホでネット検索。

 近くにはホームセンターが2つある。

「ユータさん、ここは、10時開店ですが、木材などを売っている資材館は7時からやっているみたいです」

 スマホに表示された時間は、朝の6時だ。10時の開店まで待つ必要がないのは助かる。

 場所は……。

 地図も表示されるので、サンコーポの位置とお店の場所とを……。

 ああ、スマホって、確かナビとかアプリあったりして使えるんだよね!あー、こんなことなら吾妻さんからもらった後に、使う練習だけでもしておけばよかった。ガラケーユーザーには、動画見たりネットで検索したりがやっとです。あとメールと電話。アプリとかさっぱりわかりません。

 タクシー呼んで店に連れて行ってもらえばいいのか。あ、でもタクシー代……店までいくらくらいかかるかな?距離的にはそんなにかからないだろうけど……。模型作る材料はいくらかかるの?木材だけじゃだめだよね?加工するための、工具もいるはず。

 そうだ、こんな時に使わなくてどうする!

「ユータさん、銀行口座番号教えてください。お金を振り込みます」

「え?ああ、いいよ、気にしないで」

「いえ、あの、模型だけじゃなくて、こちらで使う木材が足りなくて頼むかもしれないので……」

「ああ、そうか。トルニープは海に面している土地が広いから、逆に山が少ないんだっけ?……わかった。いざという時に使わせてもらうよ」

「じゃんじゃん使ってください。そのお金は、こちらの世界にもう一人いる日本人の物なんです」

「え?もう一人、日本人が?」

「グランラで結構偉い地位についてるみたいで、戦争を止めたい、平和な世界を作りたい一人です。ですから、ウォルフの侵攻を止めるためにお金を使うことに反対はしないはずです」

 後で確認はするけど。

 というか、吾妻さんのことだから、私に支払ったお金だから自由に使えっていうかな?

 それとも……、そのための費用だと言って、新たに1千万振り込んできたりして……。うわー。ありえる。

 お金を返す話をしたときに、実はこういうことに使ったので返済額がいくらになります的な話をすればいいかな……。

 事後承諾になるけど、仕方がない。今はそんなことでもめて時間を掛ける暇はないんだから。

 ネット銀行につないで、ユータさんの口座に上限いっぱい100万円振り込む。

「ああ、ありがとう。こんな時だ、遠慮せず使わせてもらうよ。それで、その日本人なんだが……」

「大丈夫です。彼は、私にオーパーツを持ち込むなとくぎを刺すくらいですから、あちらの世界をめちゃめちゃにするようなものを持ち込んだりしません」

 ユータさんが心配していたのはそのことだったようで、安心した表情を見せた。

「そういえば、メイロンくんは……?」

「ああ、疲れてまだ寝ている。あれから、こちらの世界のことを知ってもらうため少しずつ色々見せているんだ。昨日は、水道に大はしゃぎだった。今までは、井戸のポンプだったからね。こんな小さなところから水が出るのすごいって。お湯も出ると知った時には、小人がお湯を沸かしてるの?だって」

 そうかぁ。

 そうだよね、今まで現代文明のいろいろな物を知らなかった人間にとったら、魔法の国みたいに思えるかもしれないね。おとぎ話の世界だ。

 小人がいても不思議じゃないって思うかもね。

「起こして、一緒に買い物にも連れていくつもりだよ。大丈夫。子供は順応が早いっと、色々と話たいことはあるけれど、とりあえず今はすべきことをしようか」

 私は、ユータさんに頷いて鞄から顔をひっこめた。

 これから、トゥロンとカーベルさんの元に行ってプレゼンしなければ。投石器の導入について……。

「リエスさん、朝食はどうしますか?」

 遠慮がちなノックの音。

 昨日、泣き疲れて寝ちゃったんだもんね。

 そういえば、私、湖畔の別荘では落ち込んで何日も部屋に籠っていた。体が動かないってのもあったけど、精神的に参っていて、体が動くようになってもしばらくは引きこもっていた。オーシェちゃんが散歩に誘っても断ってたんだよね。

 ……。また、私があの時みたいに落ち込んでないか、オーシェちゃんは心配してくれてるのかな。

 ガチャリ。

 ドアを開けて、オーシェちゃんに笑顔を向ける。

 こんな状況で笑顔というのもどうかと思うが、だが、笑って運を引き寄せるんだ!

「すぐに食べに行こう!そのあと、カーベルさんの屋敷に……ん?」

 キョロキョロと部屋の中を見回す。

 白山亭でも馬屋亭でもないよね。調度品見ると、街の宿屋には見えない立派さ。

「ここ、どこ?」

「カーベル様のお屋敷です。安全のため、こちらにお泊りいただくことになりました。食事をご一緒したいということですが……」

 ちょうどいい。

「私も、カーベルさんに会いたかったんだ!すぐ行こう、あ、オーシェちゃんはご飯は?食事しながら話をしたいことがあって、オーシェちゃんにも聞いてほしいんだけど」

「流石に、一国の宰相と一緒に食事というのは……後ろに控えて話を聞かせてもらいます」

 そうなんだ。

 いや、私も、一国の宰相と食事を取れるような立場かと言われると、庶民中の庶民なんだけど、まぁいいや。そんなこと気にしてる場合じゃない。

 ユータさんに書いてもらった投石器の設計図を手に、食堂まで移動する。

 20畳ほどの部屋に、10人ほどがかけられる長方形のテーブルがある。お誕生日席にトゥロン。トゥロンの右前の席にカーベルさん。

 それから、革命派で顔を見たことのある3人が掛けている。トゥロンの左前の席を進められ座った。私の後ろにオーシェちゃんが立つ。

「ゆっくりと話す時間が取れず、朝食を取りながらで失礼します」

 カーベルさんの言葉に、頷く。

「女神よ、ここにきて、貴方に頼るトゥロンめをお許しください」

「頼る?」

「キュベリア国王やアウナルス国王代理とも親しいとお見受けいたします」

 カーベルさんが言葉を続ける。

「混乱するトルニープ国内、信用できる者の数も限られている中……他国との外交を任せられる者が不足しています」

 うん、まぁそうだねろうねぇ。信用できるかできないか見分けるのも大変だよね。

 今までは、凡庸な陛下についている者かトゥロンに味方する者かを見分ければよかっただけだけど……。

 気が付かないうちにウォルフの者が紛れ込んでいたのだ。

 革命のことで、意識がそちらに行っていたとはいえ、知の宰相ともいえるカーベルさんすら気が付かなかったわけだ。それだけ、ウォルフの手の物には出来る人間がいるのかもしれない。


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