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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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254 同盟を模索

 情報が漏れないように、真に信用できる者が、いったいどれほどいるのか……。

 時間さえあれば、相手を観察して判断もできるだろう。

 だが、ウォルフが攻めてくるまで5日しかない。

「分かりました。協力できることはします。何をすればいいんですか?」

「アウナルス、キュベリア……そして、できればグランラとピッチェの橋渡しをお願いしたい」

 橋渡し?

 とりあえず、アウナルスであれば、ウルさんに話をすれば耳は貸してくれるはずだ。キュベリアならラトかな……。いきなり王様に連絡とか取れるんだろうか?ああ、サマルー経由とかなら?サマルーは使節団の一員だったから、使節団の総指揮者である王弟カムラートとの連絡は取りやすいよね?

 王弟からならラトにも……。

 それも、もしグランラとピッチェと連絡を取るなら、使節団にも協力を要請しなければならないから……何度もいろいろと説明する手間が省ける。

 とはいえ、私は今トルニープを離れるつもりはない。

 そうしたら、いったいどのような連絡手段を取ればよいのか?

 ぶっちゃけ、時期が時期だ。

 ウルさんへの連絡は、吾妻さんに電話しようと思う。吾妻さんからウルさん、そしてアウナルスの王へとつながればいい。

 キュベリアへは早馬を飛ばしてもらうしかないかな?どれくらいかかるのだろう?

 流石にどんなに急いでも、ピッチェやグランラまでは5日の内に連絡は取れないだろうな。せいぜい、狼煙によって多少の情報を送ることくらいしか……。

「わかりました。アウナルスへは王代理だったウルさんへ連絡を取ります。キュベリアは使節団のサマルー経由で連絡を取れるように手紙を運びます。ピッチェやグランラへは、その使節団に手紙を託す形でよろしいですか?トゥロンは、使節団で一緒だったから、サマルーのことは知ってるよね?彼なら信用できるでしょう?」

 トゥロンはにっと笑った。

 あの、懐かしい日々を思い出したのだろうか。

「ピッチェへの外交は、坊ちゃんが担ってくれるのかな?」

 坊ちゃん?

 誰のこと?

 使節団の坊ちゃん……?

 あ、そういえば、私トゥロンに初めのころ「リエスの嬢ちゃん」とか呼ばれてたなぁ。懐かしい。

 嬢ちゃんって年齢じゃないんだよね。アラフォーなんだから。

 そもそも、トゥロンって何歳だっけ?年下だよね?年下に嬢ちゃんって呼ばれてたと思うと……。って、今はそんなことを考えている場合じゃないよね。異世界年齢25歳の私を嬢ちゃんって呼んでたんだから、坊ちゃんって……。

 あ、

「シャルト?」

 文字を教えてもらったりと、あのころはずいぶん一緒に居た。

「ああ、そうだな。とりあえず、借りを作るのはしゃくだが、仕方がない。……って、もうすでに母が世話になっているから今更か」

 そうです。

「ラン様にも、避難してもらいましょうか?」

 カーベルさんの言葉に、はっとする。

 そうだ。あと5日で攻めてくると分かっているんだ。避難できる人は避難した方がいいに決まっている。

 王都の人達も、どこかへ避難させられるのであれば……。

「避難といえば、王都の人たちは?戦争が起きるのであれば、戦場となりうる王都から避難した方がいいのでは?」

 問題は「どこへ」だ。

「そうですね……、歩いて2日ほどの距離の場所へ避難してもらいたいところですが……日にちも街のまとめ役も不足している現状、どこまでできるか……」

 味方だと思っていた兵の何割かはウォルフの人間だったんだろうなぁ。

 ギレンが逃げた時に、逃げ道を確保してた兵がいたもの。

 いったいどれくらいの兵がいるのか……。

 カーベルさんが眉間のシワを延ばすように指で押さえた。

 そうか……。どうしても、兵の数が足りない状態で、どれだけのことができるのか。

 普通なら、足りない分、徴兵するなりして国民を集めるのだが……。王都では炊き出しをしていたので、多少は人々は生気を取り戻している。だが、他の地域ではどうだろうか。

 もしかすると、増税に次ぐ増税で、国民が食うのもままならない状態だったのは、ギレンの策略だろうか。

 人が弱れば、徴兵されても、怖くはないと……。もし、そこまで考えていたのなら、ギレンは相当頭の切れる人間ということになる……。

 私は、膝の上に置いた設計図を握りなおした。

 ギレンが頭の切れる人間であるならば……、間諜を紛れ込ませている可能性は大いに考えられる。

 情報が筒抜けになっていることを前提にしなければならないんだろう。

 例えば、投石器も。

 何台どこに設置して、威力はどれくらいかという情報も、筒抜けになるかもしれない。

 ……。

 むしろ、そちらに目を向かせておいて、他に何か見つからないように動くというのもありなのかもしれない。

 だけど、いったい何を?

 王都の人々の避難?

 いや、ダメだろうな。流石に人数が多すぎて、動きはバレるだろう。

 ……いったい、どうしたら……。

「ところで、アウナルスについて教えて欲しいのです、女神よ……。一時は、アウナルスの脅威に怯えて、キュベリアは東の諸国で同盟を結ぼうとしていた。実際に、アウナルスは脅威となりうるとお考えですか?」

 トゥロンの疑問ももっともだ。

「私も、知らない部分が多いのですが……、トルニープがウォルフの手に落ちることに関しては、良しとしないのは確かです。トルニープがウォルフの手に落ちた場合、アウナルスは海と陸と両方からはさまれて攻め込まれるので……」

「なるほど。確かに……。いかなアウナルスといえども、海戦になると勝手が違うと……」

 本来なら、色々な判断するにも、話し合いに時間をかけて行うべきだろう。

 私から得た情報のきれっぱしを信じて進むようなことをすべきではない。

 だが、もう時間がないのだ。あれもこれも、欲張って行う余裕はない。

「その後のことは、また改めて話し合うということにして……、ウォルフに対するために、同盟を組めないだろうか。キュベリアが組もうとしていた、キュベリアとピッチェとグランラとトルニープの4国同盟。それに、アウナルスも加えた、5国同盟」

 トゥロンが口を開く。

「トゥロン様、さすがに、それは……」

 カーベルさんが絶句する。

「うん、できるよ、きっとできる!」

 私はトゥロンの案に賛成の声を上げた。

「ウォルフに、トルニープを攻めたら他の国々が総力を挙げてウォルフをつぶすって脅せるなら……」

 「アウナルス戦記」にあった。圧倒的な戦力の差を見せつけて相手に白旗を挙げさせるっていうやつ。ウォルフがどれだけたくさんの兵を連れて海からやって来たって、この大陸のすべての国を相手にできるだけの戦力はないよね。

 でも……。

 キュベリアもグランラもピッチェも、戦争を起こさせないために同盟を組もうとしていたんだ。

 明らかに戦争になるトルニープに協力するような決断をするだろうか?

 いくら、トルニープが滅ぼされた後、次は我が国だという恐れがあったとしても……。

「ダメ元……。同盟はだめかもしれないけど、やってみる価値はあると思うの。条件次第だよ。例えば、ウォルフに対して脅し文句に使うための許可だけでももらえれば……。実際に、兵を派遣してほしいとか、食料を援助してほしいとか、そういう要求は一切しないというのであれば……あるいは……」

 私の言葉に、カーベルさんが手を打った。

「なるほど。正式な同盟を模索するほどの時間的余裕もありません。ウォルフに『我々5国同盟を結んだ』宣言し、あきらめさせるための形ばかりの同盟の提案ですね。それならば、可能かもしれません。それで、あきらめてウォルフが手を引いてくれれば……」

「何も要求はしない……か。国民を難民として受け入れてはもらえないかだけ打診したい。海を越えた国々には、まだ奴隷制度が残っていると聞く……」

 奴隷?

 それって、トルニープがウォルフに負けたら、トルニープの人たちが奴隷にされちゃうってことだよね?

 ……。

 だから、国から逃げ出して、難民として受け入れてもらえないかってことか……。

 ……。

 ……。

「考えがまとまったら手紙を書いてください。キュベリアとアウナルスに伝えます」

 せっかく奴隷のない国になったのに……逆戻りなんて……。やっぱり、いろんな意味で、トルニープをウォルフに滅ぼされちゃだめだ!

 ギレンめ!

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