228 塩味以外も考えようかな
唐突な私の質問にもカーベルさんはきちんと答えてくれる。
「そうですね、人によりますね」
そりゃそうだ。
「えーっと、カーベルさんがギレンさんと対抗してなんかしたら、他の貴族たちも続くでしょうか?」
「私が、ギレンに対抗して?んー、そうですねぇ、やってみたことがありませんから、何とも言えませんねぇ」
カーベルさんが困った顔をする。見栄の張り合いなんて子供っぽいことカーベルさんがするわけないか。
「じゃぁ、やってください。あとの貴族の動きは、あればラッキー程度に考えて……」
「はい?私が、ですか?」
「無理ですか?お金とか無駄に出来ないというのであれば、私が用意しますから」
カーベルさんは、大きく首を横に振った。
「いえ、お金の心配は要りません。腐っても貴族です。放蕩息子もいませんから、それなりにあります」
「じゃぁ、お願いします」
にっこり笑顔に、カーベルさんは渋い顔。
「リーさん、見栄の張り合いって……カーベルさんに無駄に宝石のついた服でも着せるつもり?それとも、ギレンが開く夜会に日程ぶつけてど派手な夜会でも催すつもり?」
「ギレンは祭りの期間に、無料で食料を配布します」
私の言葉に、カーベルさんが珍しくぽかんとした表情を見せる。ランちゃんにいたっては、何を言っているのかわからないという顔で、小さく首を振った。
「その情報は……確かなものですか?」
「そうよ、リーさん、疑うわけじゃないけど、ギレンって、今の宰相のギレン子爵のことでしょう?無料で食料配布って……そんなことするわけが……」
2人が驚くのも無理ない。
「商人ルイスからの情報です」
ルイスの名を出したことで、カーベルさんが落ち着きを取り戻し聞く体制に入った。
「新商品のアピールのために、試食用に食料を配布するのです。それにより、興味を持った人が商品を買えば、ギレンは大もうけができます」
「大もうけ……なるほど。そのための投資として食料を無料で配るわけですか」
ランちゃんが、ふぅっと大きく息を吐いた。
「なぁんだ。びっくりした。それって新商品を買えそうな人にしか配布しないってことだよね。私は、聖女みたいに街の人たちにも食料を配布するのかと思ったのに……」
ランちゃんが言うようにギレンなら、いくらルイスが油も芋も提供して元手がタダでも、街の人たちには配らないだろうなぁ。
「ギレンが食料を配布する話を耳にして、カーベルさんが対抗するように祭りで食料を配布するというのは駄目でしょうか?」
「もしかして、それが見栄を張るということですか?……。なるほど。ギレンに対抗してというのであれば、不自然ではないかもしれませんね。ですが、今までの私を知っている人にはとても不自然な感じがするでしょう」
カーベルさんの言葉に、ランちゃんが頷く。
「ギレン子爵にに対抗心を燃やすようなちっちゃな人間じゃないものね、カーベルは」
ふふっ、それって、遠回しにギレンがちっちゃい人間だって言ってるもんだね。
「何人かに声をかけてみましょう。子爵でありながら、宰相ということで大きな顔をするギレンを快く思っていない人間もいますから」
「ありがとうございます!競争心を煽るようなことも吹き込んでもらえませんか?子爵の財力じゃ、街の人にまで配ることができないだろう、うちの財力なら、街の人たちにも配ることができるんだよっとなる感じで……」
カーベルさんは楽しそうな顔をした。
「なるほど。お金を溜め込んで、国民の窮状に対して何もしようとしなかった人間でも、祭り限定で見栄をはるためなら食料を配るでしょうね。せっかくなので、国民から一番支持を得られたものを配ったのはどの貴族なのかとわかりやすい方式にでもしてみますか」
「いいんじゃないかしら?それなら、硬くて食べられないようなパンくずみたいなのを配って自慢するようなこともないですよね?」
カーベルさんとランちゃんが楽しそうに意見交換を始めた。
なんだか、B-1グランプリみたいな感じに話が流れてます。
でもこれで、お金のない街の人たちも、屋台を楽しむことができそうだ。
「ねぇリーさん、ギレンは何を配布するか知ってる?」
「ポテトチップですよ」
「何それ……。あ、新商品の宣伝のためって言ってたよね?もしかして、目新しい料理?……ギレンが優勝しちゃうってこと?それは駄目だわ。カーベル、何かいい料理はありませんか?そうだ、リーさんが白薔薇宮で作っていた料理は?」
あれ?いつの間にカーベルさんもB-1グランプリもどきに参戦することになってるの?
「それはやめたほうがいいでしょう。白薔薇宮で色々な人が目にしたことは確かですが、それを出すことで万が一リエスさんとの繋がりを疑われては面倒ですから」
カーベルさんの言うとおり。だけど、せっかく出るなら確かに少しは珍しいものがいいよね。街の人たちもその方が楽しめるだろうし。
何かないかなぁ。
大量に作れて、調理が楽で……。スプーンとかを使わなくても手でつまめて、歩きながら食べやすいもの。
こう考えると、ポテトチップスは最強じゃない?そもそも、ピッチェのように揚げ物文化がないトルニープでは揚げ物自体が珍しくて目を引くだろうし。
日本じゃ、揚げ物は屋台の定番だしね。
揚げ物……。から揚げとか?
駄目だ。肉や魚なんかの生ものは大量に仕入れられない。冷蔵庫がないから、何日かに分けて仕入れて保存しておくこともできない。
塩漬け肉や干物なら可能?ううん、やっぱり今からじゃぁ無理。
あと、揚げ物といえば……屋台で見たものを思い浮かべる。じゃがいもじゃぁ、ポテチとかぶるし……。さつまスティックとかは?サツマイモをスティック状に切って、揚げて、砂糖をまぶしたやつ。
って、砂糖がないか!でも、砂糖がなくても十分おいしいよね?
サツマイモと油があればいいんだから……。そういえば、モヅ村はどうなったんだろう?サツマイモの苗での栽培は順調だろうか?
紙を作る話も、頓挫してるけど……。まぁ、陛下もそれどころじゃないよね?急に祭りの予定とか入ったわけだから。
揚げ物、何かないかな……。あっ!
「うどんチップス!ランちゃん、カーベルさん、うどんチップスにしましょう!」
「うどんチップスですか?」
「それ、何?」
白薔薇宮でもうどんチップスは出したことがない。乾麺にしておいたうどんを当日は油で揚げるだけだから、大量に準備しておくことは容易だ。今日から準備すれば、十分間に合う。
「えーっと、早速作ってもらいたいのですが……。小麦粉ありますか?」
「今から作るのですか?」
「リーさん、祭りはまだ先だよ?」
兵士達を、縄跳び班とテーブルクロス引き抜き班とうどん打ち班にわけて、それぞれに説明して回るった。




