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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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195/303

195 吾妻さんはストーカー

あけましておめでとうございます

 ランちゃんの件の話が終わると、ウルさんはテーブルの上に並べられた品を見て

「これらは?」

 と、尋ねた。

「明日、ギレンの元に行きたいのですが、大丈夫ですか?」

「ギレン子爵ですか?」

「ええ。ギレンが、今の宰相だと聞いたんですが……」

 そういえば、ウルさんとか色々情報収集に長けているから、知らないわけないよね?何で教えてくれなかったんだろう?

「ええ、そのようですね。ですが、王の独裁が続き、宰相といえど形ばかりだという話です」

 なるほど。前の宰相であるカーベルさんは、陛下に諫言して任を解かれただけでなく、執事という屈辱的な地位に追いやられたもんね。そうであれば、陛下に尻尾を振る人間が次の宰相になるのは当然か。尻尾を振るってことは、陛下の言いなりだろう。ウルさんにしてみれば、私に報告するまでもない人物という位置づけなんだろう。

 まぁ確かに、私もカーベルさんから話を聞くまで、ギレンの印象なんて、自慢話が長いってことくらいで、とても大物には見えなかったもんな。

「それが、どうやら国庫を任されているらしいのです」

 私の言葉に、ウルさんが首をかしげた。

「国庫は、財務大臣が担っているはずですが?」

「え?でも、カーベルさんがギレンが金を動かしていると……」

 おかしいな。カーベルさんもウルさんも嘘をつくはずないし。

「カーベル殿が?……ああ、そういうことですか」

 ウルさんは納得したという顔で頷いている。

 そういうことって、どういうこと?私にはさっぱり分かりません。

「いくら財務大臣を調べても、戦争に関する金の動きがつかめなかったはずですね。あれは表の金だったわけです。裏の金は、カーベル殿が言うようにギレン子爵が動かしているのでしょう」

 なるほど、増税分の金は裏金として、表とは別に動かしていたというわけか。

「それでね、カーベルさんが言うには、ギレンが金を動かしているけれど、その使い道が全く分からないということなんです。で、私の方で何か情報がつかめないかなぁと……」

「分かりました。きっと、城内ではギレン子爵も用心して情報を漏らさないようにしていることでしょう。もしかすると、一商人であるルイスに対しては口が軽くなる可能性もありますね。やってみましょう」

 早速、ウルさんにテーブルの上の品物の説明と、明日の打ち合わせ。打ち合わせが終わったところで、オーシェちゃんたちが帰ってきた。

「うわー、お姉さま、これ何ですか?」

「食べて、感想を聞かせて欲しいんだけど」

 サラをオーシェちゃんに差し出すと、何の躊躇もなくオーシェちゃんは一つ手に取り口に入れた。

「おいしい!」

 ああ、良かった。こちらの世界の人の口にも合うんだね。

「オージェくん、ウルさん、エボンさんも、お願いします」

 皿を、オーシェちゃんの前からオージェくんたちの方へと移す。

 その皿に一番に手を伸ばしたのは、オーシェちゃんだった。

「すごくおいしい!ほら、オージェ、あんたも食べてみなさい!」

 右手で自分の口に、左手でオージェ君の口に持っていく。

「姉さん、はしたないですよ。食べるか喋るかどちらかにしてください」

「だって、おいひいんだもんぐもぐ」

 全く姉さんは……と、溜息をつきながらオージェくんが一口。続いて、エボンさんとウルさんも口にする。

「これは、初めて食べる味です。とてもおいしい」

「ふーん、姉さんが絶賛するだけのことはあるね」

「酒が飲みたくなりますなぁ」

 三人とも好評か。

 これは、ギレン子爵にも気に入ってもらえるかな?

「ボスも好きなはずです。もし可能であれば、コレを届けてもらえますか?」

 実は、家具屋と鍛冶屋には二つ作るように頼んでいたんだ。できあがった調理器具の一つはギレン子爵に。もう一つはボスに。

「ええ、もちろんです!」

 原材料は自分で手に入れてもらおう。吾妻さんなら簡単に入手できるだろう。調理器具とレシピを書いた紙をウルさんに託す。

 まぁ、レシピなんているのか?とも思うけれど、私には簡単でレシピ不要でも、男性の吾妻さんにとっては未知の世界かもしれないしね。


 夜、メールチェック。

 迷惑メール2つ、派遣会社から1つ。

「何、書こうかな?」

 吾妻さんへの報告メール。何を書いたらいいのかなぁ。

『過保護すぎるのも、ストーカーのようになり問題だと気がつきました』

 とりあえず、ランちゃんに対する反省文を書いてみる。

 しばらくして、吾妻さんからメールが届く。

『すまん』

 ん?何故謝る?

『いつもありがとうございます。お礼の品をウルさんに届けてくれるように頼みましたので、到着を楽しみにしてください』

 喜んでくれるといいなぁ。

『……。怒っているのか?』

 え?ありがとうと言ってるのに、何で怒っていると思われるわけ?

 全く会話がかみ合ってないんですけど……。

『怒ってないですよ?感謝してます』

『本心か?皮肉ではなく?』

 え?皮肉?

 嫌味っぽい言い方になっちゃったかな?普通にお礼メールしたつもりだけど。

 んー、どう返信したらいいのかな。

 悩んで携帯をこねくり回していると、メールの着信があった。

『ストーカーのつもりは、なかったんだ……すまない』

『え?吾妻さん、もしかして私の監視したり、盗聴したりしてるの?』

 まさか、ウルさんが逐一私の行動を報告してるとか?

 そうだ、前に吾妻さんが送ってくれた携帯に盗聴器が仕込まれてるとか?最近のスマホは盗聴アプリなんてのもあるらしいし……。って、あれ、送られてきたのはガラケーか。アプリは関係ないか。

 とにかく、困る!いっぱい吾妻さんに隠し事してるし。それがばればれだったなんて、まるで道化師じゃないか!

 っていうか、盗聴とか、吾妻さん怖い!


5と0の付く日の更新が続きます。今年もよろしくおねがいします。

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