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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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176/303

176 ユータさんからの手紙

 さっさと話を終りにして、部屋から皆を追い出す。

 ドアがパタンと閉まるのを確認すると、ふぅーっと大きく息を吐く。

 ああ、大声で言いたい。

 ねぇ、聞いてよ!

 トゥロンが……

 トゥロンが……

 トゥロンが生きてたんだよーーーーっ。

 また、涙が頬を伝う。

 いつまでも泣いていたい。けれど、今は喜びに浸っている時間も無い。

 だけど、この気持ちを誰かに伝えたくて、吾妻さんへのメールに一言添えた。

『聖女の炊き出しには日に日に人が集まっているようです。港の方で新しく仕事を見つけた人が何人かいるようです。港町は経済が少し回復しているのでしょうか?それから、今日は嬉しいことがありました。会いたかった人に再会できたんです!』

 メールの返信はすぐに二通来た。

 一通目。

『会いたかった人とは?』

 二通目。

『港町か。もし行くことがあれば、様子を知らせて欲しい』

 すぐに返信メールに取り掛かる。

『キュベリアでずっと一緒に旅をしていた人です。連絡が取れなくなってしまったので、また会えて本当に嬉しい。港町の様子は私も知りたいと思っていたところなので、数日中に何か分かるかと思います』

 そう、近隣の街や村の様子も調べようと思っていたので、港町も当然調べるつもりだ。貿易等で少し景気がいいんだろうか。

 エロキモ陛下が、キュベリアに税金で集めた食料を売りさばいているが、船でどこか別の国にも売りに行っているんだろうか。だとすれば、景気回復と単純に喜ぶことはできない。

『一緒に旅をしていた?護衛か?ウルのような人間か?』

 護衛?そうか。まさか、女の一人旅が出来るほどこの世界は甘く無いもんね。

 ウルさんとトゥロンの姿を思い浮かべる。んー、全然違うよねぇ。

 ウルさんはどちらかというとポーカーフェイス。一方トゥロンは表情豊かだし、オーバーリアクションだもん。

『ウルさんとは全然違います』

『いい男か?』

 おいおい、ウルさんと全然違うというメールの返信に『いい男か?』なんて言ったら、まるでウルさんがいい男じゃないみたいじゃない。

 失礼だよ。っていうか、吾妻さん、ウルさんのこといい男だと思ってないの?

 まぁ、容姿は普通だけど。鍛えられた肉体は魅力的だと思うし、よく気が回る大人のいい男だと思うよ?

 そういえば、オーシェちゃんが、ボスはカッコいいって前に言っていたよなぁ。よほど吾妻さんは容姿に自信があるんだろうか?

『多分、吾妻さんほどイケメンではないですよ』

『じゃあ、たいしたこと無いな』

『そうですか?吾妻さんはカッコイイってオーシェちゃんが言っていましたけど?』

『好きなのか?』

『そうですねぇ、若い頃はイケメン好きでした』

 若かりし頃の過ち。メンクイだった頃の私に言いたい。「男は顔じゃない」と。

『今はどんな男が好きなんだ?』

 今はもちろん……

『人のいい市役所職員!』

 思えば二十代の頃は、マスコミ関係者だとか、IT企業の社長だとか、わけの分からない肩書きに惑わされていたな。

 土日祝休みで、残業も転勤もほとんどなくて、定年まで安定して働け、そこそこの給料が貰える……そんな夢のような職業が世の中にはあるんだよ。

 吾妻さんから、呆れたようなメールが届いた。

『こっちの世界に理想の男はいないってことか……』

 ああ……。

 そうだ、トゥロンが生きてたんだ。

 私、日本に帰ってもいいんだよね?

『いいことを考えたぞ。市役所を作ればいいんだ。今の仕事を引退して、そこで働くことにしよう。職員は俺一人。この世界で、君の理想の男は俺一人ということになる。さぁ、選択の余地はないぞ。安心して嫁に来い』

市役所を作るって……面白いこと考えるなぁ。くすくす。

『ちゃんと、共済年金の制度も作ってくださいね!おやすみなさい』

 思い出した。

 思い出したよ!

 日本に帰ってもいいってことは……。

 何処へやったかな?

 カバンに手と顔を突っ込み、携帯を机の上に置くと、部屋に張り巡らせたビニール紐を手繰って玄関に直行。

 ダイレクトメールを放り込んである箱に手を伸ばす。

 上から順に、ダイレクトメールを箱から出して横に置く。

「あった!」

 ユータさんからの手紙!

 トルニープの状況が落ち着いたら、日本に帰るんだ。

 封筒をカバンから取り出す。

 ベッドに腰掛けて、深呼吸を一回。

 白い封筒から、手紙を取り出して、ゆっくりと開く。

『佐藤様』

 ユータさんの、男の人らしいちょっと角ばったしっかりした文字。

『お手紙ありがとうございます。

 まさか、あの世界に行った人から連絡がもらえると思っていなかったので驚いています。

 あの小屋に住んでいたとのこと。ラトも元気だということで、安心しました。

 色々と、お話したいことがあります。近々東京へ行く予定ですので、お時間いただけるようでしたら、お会いできませんか?』

 あれ?

 私、日本に帰ったと思われてる?

 ちょっと待って、何で?

 って、そうか。そうだ。

 初めに書いた手紙は、宛先不明で戻ってきちゃったんだ。それには色々書いたけど……。

 次に出したのは、山小屋の写真を印刷した絵葉書で、現状のことを詳しくは書かなかった。生徒手帳を渡したいとかそういうこと書いた気がする。

 そして、次は、ユータさんのお母さんに宛てたもので、手紙をいただいたお礼中心だった。というか、お母さんが見る手紙に異世界のことなんて書くことができるはずが無い。だって、ユータさんは異世界に行っていたこと記憶喪失ということにして内緒にしていたようだし。

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