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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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101/303

101 トゥロンの兄

 バタンとやや乱暴にドアが開けられると、警備兵を3人引きずってトゥロンが姿を現した。

「兄上、彼女に手を出さないお約束です!」

 警備兵が制ししようとトゥロンの肩や腕、腰を抑えている。

 しかし、鍛えられたトゥロン1人の力に負けているようだ。

 先ほど、私の両脇を固めていた男2人が、加勢しようとドアに駆け寄った。

「よい、手を離してやれ」

 言われて、警備兵は手を離し、加勢に向かった男は足を止めた。

「トゥロン……」

 トゥロンの元へ1歩足を進める。

 トゥロンは、私の顔を見て逆に腰を引き、私からすぐに目を逸らした。

 それ以上、私は足を進めることも、トゥロンに話しかけることもできないでいた。

「大事な客人だ、手を出すなどするわけがないではないか?」

 エロキモ~!おまえ、今まで手を出す気満々だったろ?どの口がそんなことを言うか!

 と、いうか、

 兄弟とか~~~~~~?!?!?!

 嘘でしょ?

 このエロキモモンスターと、トゥロンが兄弟?

 似てない。似てない。見た目も似てないけど、何処をどう間違ったら、こんなに育ちの差が出るの?

 この状況において、そんなことに一番驚愕している自分は、意外と肝が据わっているのか?それとも単にもう現実について行けないだけなのか?

 ああ、そういえば、この世界に来ても尚、アラフォーになっちゃったことで頭いっぱいだった時期もあったなぁ。懐かしい。

 トゥロンは手を出さないという言葉を不信げに受け取っている。

「しばらく、白薔薇宮に滞在してもらうことにした」

 ハッと息を呑む音が聞こえた。

 この部屋に控えていた何人かが同時に息を呑んだ。

 白薔薇宮?何それ?

 そこに滞在したらまた、薔薇の人とか呼ばれないだろうな?って、そんなことじゃなくて。

 何で息を呑むの?

 白薔薇宮ってなに?宮って、宮殿の宮だよね。確か、王族や神社や領主などの支配階級の建物だ。

 キモエロ、お前は支配階級かよ。

 ……まさか、神官関係じゃないよな?

「白薔薇宮……あそこは……」

「宮殿の中でも、ひときわ豪華な建物じゃ。今は住むものもいないから、客人を接待するには良かろう?そうだな、お前も一緒に白薔薇宮に住むが良い。客人に何かあってはならぬからな。しっかり護衛を頼んだぞ」

 トゥロンに有無を言わさぬ命令を下すエロキモ。

 私は、エロキモと同じ建物にいなくていいことと、トゥロンが護衛についてくれるってことで嬉しいんだけど。

 流石に言葉通り受け取るほど私も馬鹿じゃない。、護衛というか見張りなんだろうけどね。逃がすなってことだとは思うんだ。正直、トゥロンは私に迷惑をかけるということでとても苦しんでいるんだと思う。

 だけどね、きっとこのエロキモはトゥロンに命じなくとも他の人に同じことをさせたと思うし、下手したらもっとひどい手段に出たかもしれない。

 トゥロンは私をなるべく傷つけないようにここまで連れてきてくれたんだろうし、手を出さないなどの約束も取り付けたみたいだ。

 そして、私のために警備兵に逆らいながら駆けつけてくれた。きっと、何らかの代償を覚悟して。

 だから、本当に私は馬鹿なのかもしれない。

 トゥロンのことは、嫌いになれない。無理やりエロキモのところに連れてこられた。誘拐されたっていうの?

 だけど、でも。

 不思議と裏切られたとかそういう感情がわいてこない。

 逆に、トゥロンのことが心配になる。

 どんな事情があるんだろうって。苦しんで、苦しんで、それでもこんな選択をしなくちゃいけなかったのはどうしてなんだろうって。

 兄弟だからとか、そんな単純な理由じゃないと思う。だって、トゥロンほどの男なら、あんなエロキモの言うことなんて鼻で笑っておしまいにできるよね?

「そうだなぁ、白薔薇宮での客人の世話は、お前の母親と妹にでもさせるが良い」

 え?

 お前の母親と妹って、トゥロンのお母さんと妹さんのことだよね?

 トゥロンの兄である、エロキモのお母さんと妹じゃないの?

 あれ?腹違い?

 トゥロンの顔色がさらに悪くなる。

 何か複雑そうだぞ。

「さぁ、お前の大事な娘を連れて行くが良い」

 エロキモは、にやぁっと口の端で笑い、気持ち悪さを増した。

 トゥロンは、青ざめた顔で視線を逸らしたまま私の元へと近づいてきた。

「白薔薇宮にご案内いたします」

 いつもの軽い口調と違う話し方。

 もちろん、色々と聞きたいこともあるし、伝えたい気持ちもある。だけど今はとにかくエロキモの元から去ることの方が重要だ。

 早く、エロキモの元から、トゥロンを連れ出してあげないと。

 差し出された手に、素直に手を載せた。貴婦人がそうするように。

 そして、トゥロンに手を引かれてドアまで歩く。

 部屋を出ようとした瞬間に、エロキモが最後の爆弾を落とす。

「ところで、トゥロンよ」

 トゥロンの肩がびくんと反応する。まるで何かに怯えるかのように。

 何を怯えることがあるのだろう?

 トゥロンが足を止めて、エロキモの方へ体を向ける。

「誰が、兄と呼ぶことを許可した?」

 げ。何それ。兄弟なんでしょ?ちゃんと兄上って丁寧に呼んでたじゃん。何が駄目なんだよ。


「申し訳ございません。陛下」


 トゥロンが頭を下げ、再び私の手を取り部屋を出る。

 廊下を進む間、しばらく私の思考は停止していた。


 え?

 陛下とか言わなかった?

 

 誰が?


 誰が?


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