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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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100/303

100 疑惑、本物か偽物か

 って、そう簡単にいかないよねぇ。やっぱり?涙目。

「本物か?」

 まずは疑われた。

「私は、その印を受け取るまで、そういったものが世の中にあることを知りませんでした。ですので、本物と偽物の区別もつきません」

 っていうか、使い方すら知らなかったんだよ。トゥロンに教えてもらうまでね!

 まったく、ラトも吾妻さんも説明不足なんだから!

 エロキモは、側近を手招きして確認させる。

 側近は小さくうなづいた。よかった。本物と確認できる手段があるようだ。なにやら道具を持ってきて2,3テストみたいなことをする。

 本物ですと、側近が伝えたのか、エロキモの顔から脂汗が出る。

 いやぁ、流石脂の乗った豚からはたくさん出るね、脂汗……とか思ってませんよ?

「何故、コレを持っている?」

 何故って、貰ったからに決まってる。ああ、でも拾ったとか盗んだとか思われた?

 推定公爵家のラトのコイン。もらった理由は正直に話す。

「怪我の手当てをしたお礼にいただきました」

 脂汗を袖口でぬぐうと、エロキモはニタリと笑った。

「そうか、怪我の手当て、それは故郷の方法か?よっぽどの秘術なのだろう?それを予に教えるがいい!」

 そう来たか!

「傷口を水で洗い、止血して、包帯を巻いただけです」

 正直に答える。

「それだけか?それだけで、守護されたというのか?はっ、まさかな。手当てをすると言って寝所にでも連れ込んだか?」

 くぅ、エロオヤジは何処までもエロ発想しかできんのか!

「いいえ、多量の血が流れていましたため、後にお医者様に止血がもう少し遅かったら危険だったと言われたそうです。そのため感謝されたのでしょう」

 命の恩人に対して誠心誠意お礼をしたっていうことなら、納得するよね。

「何だ、お前が助けたのか?余計なことを」

 は?

 余計?人の命を救うのが余計なこと?

 もう、怒りしかわいてこない。早く、この場を立ち去りたい。

「守護されし者の印が本物で、貰った理由も正当だとお分かりになったのなら、印を返してください。私はもう、帰らせていただきます」

 印を返してもらおうと、差し出す手を間違ってしまった。

 怒りで強く手を握っていたため、気がつくのが遅れた。

 ポケットに入れようと思って握っていたもう一枚の守護されし者の印を持つ手を出してしまったのだ。

「なんだ、その手の物は?やはり、精巧に作られた偽物か?」

 くいっと、顎をしゃくると家臣が私の手の平から(推定)吾妻さんからもらった守護されし物の印を取り上げた。

 そして、豚じゃない、エロキモに手渡す。

 エロキモは、印を見るとまたもや顔色を変えた。

「おい、何故、これを持っている?」

 吾妻さんから貰ったのは、同郷の私を思いやってだろうけれど、そんな理由は言えないよね。

 っていうか、吾妻さん男爵じゃなくて、もう少し上?また、キモエロからいっぱい脂汗出てますよ。

「秘密裏に荷を届けたお礼です。荷の中身は知りません」

 本当のこと半分、嘘半分。

 全部嘘だとすぐばれても、本当のことを混ぜるとばれないという例の方法を取る。

「何の荷だ?」

「中身は知りません。ただ、これくらいの大きさの箱に詰められていて、重さはリンゴ10個分くらいでした。それ以上のことは分かりません」

 エロキモと側近が顔を合わせてしばし黙る。

「守護されし者の印を渡すほど重要な荷……気にはなるが、それはまぁ今はいい……」

 エロキモは、腰に挿していた短剣を取り、椅子の肘掛に印を乗せて短剣で突いた。

 印はあっけなく真っ二つに割れる。

「!」

 驚きの声を上げる私の目の前で、もう一つの印も同じように割った。

「これを、元の持ち主に届けてやれ!」

 え?喧嘩を売るようなことしていいの?

「よろしいのですか?」

 家臣も不安げに尋ねる。

「よい。偽物の印であれば、偽物を持っていた人間を捕まえたとお礼を言われるであろう?せいぜい恩を売ってやる」

 なるほどと、家臣は頷く。

「本物であれば、こちらには守護されし者が手中にいるのだ。下手な手出しはできまい」

「人質というわけですか?」

 家臣の含み笑いに、エロキモは笑った。

「何を言うか、賓客としてもてなし、保護するだけじゃ。感謝こそされ、責められる訳はなかろう?」

 は?

 賓客?保護?

 監禁の間違いでしょ?

「おもてなしは不要です。今すぐお屋敷を後にしますから!」

「そういうわけには行くまい?もしも、印が偽物だと判明すれば、大変な重罪を犯したことになる。見逃すわけには行かぬな。守護し者から連絡が来るまでは、いてもらわねばならぬ」

 何ですって?

 印が本物だって確認が取れるまでこのエロキモ屋敷にいなくちゃいけないってこと?

 冗談じゃない!

「……」

 くそっ。頭悪そうなくせに、逃げ道が無い。

「分かりました。私は、偽物などもってはいません。疑ったことを後悔なさらぬよう、せいぜいおもてなしをお願いしますわ。監視があるのは仕方がありませんが、監禁と思われるような扱いはお断りいたします」

 逃げ道がないのであれば、せめてなるべく良い待遇を勝ち取るしかない。

 少なくとも、本物だった場合のことを考えて、ラト家や吾妻家と敵対しないような扱いはしてくれるはずだ。

 これで、貞操の危機だけは避けれそうだ。

 できれば、街に出て情報を集めたい。何日拘束されるのか分からないからね。ずっと屋敷の中だけしか行動できないのは辛い。監視付きだから、下手な動きは取れないかもしれないが。

 監視といえば、24時間も辛い。メールチェックなどできなくなると困る。

 ラト家と吾妻家を盾に、何を要求するのが最善なのか考えを巡らせていると、廊下に続くドアの外が少々騒がしくなった。

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