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グリム童話 夏の庭、冬の庭  作者: Romina


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5/12

小さな命

クララがこの屋敷に来てから、

数日が経っていた。




野獣は庭のバラを世話していた。


クララは思った。



――冷たい人だと思ったけど…

ちゃんと世話はするのね。




クララは言った。



「また、森を散歩したいわ」



「……ああ、わかった」






二人はまた森を歩いた。



足元には美しい花が咲いていた。



「まあ!かわいい」



クララは嬉しそうに花を摘み始めた。


野獣は辺りを見回していた。




クララは言った。



「この前の実、まだあるかしら」


「気に入ったか」


「美味しかったわ」




——その時だった。


どこからか、か細い鳴き声が聞こえた。



「なにかしら…」



クララはその鳴き声を辿って行った。


野獣は言った。



「待ちなさい」



クララは聞かず、鳴き声の方へと向かっていった。






その先にいたのは

罠にかかった、子狼だった。


後ろ足を罠に噛まれ、

悲痛な鳴き声を上げている。



クララたちを見つけると

逃げようと必死に前足を掻いた。




クララは言った。



「ねえ、助けてあげて!」


野獣は言った。


「それは弱っている。

助けてもこの森では生きられない」


「このままでは死んでしまうわ!」



野獣は答えず、その場を去ろうとした。


クララはその場を動かず、泣き出した。



「ねえ、助けてよ…」



野獣は立ち止まり、クララを見た。



「……泣くな」



野獣はため息をつき、

子狼の罠を外した。



「足を怪我している。

このまま森に放つと死んでしまう」



「私が世話をするわ!」



「……屋敷に戻るぞ」




野獣は子狼を抱き上げ、

クララはその後を追った。






屋敷に着くと、

野獣はクララに救急箱を渡した。



クララは子狼の傷を洗い、

ガーゼで覆うと、足に包帯を巻いた。



野獣は庭先に腰を下ろし、木片を削り始めた。


――何をしているのかしら。

クララは子狼を撫でた。



しばらくして部屋に戻ってきた野獣の手には、木彫りの受け皿が二つあった。



「これに餌と水を入れる」



クララは受け皿を取り、

井戸に水を汲みに行った。



クララが戻ると

野獣は子狼の餌を用意していた。



子狼は水と餌を食べ終わると、

疲れていたのか、すぐに寝てしまった。



「ふふ。かわいい。

まだ子どもなのね」



クララは嬉しそうに言った。



「名前をつけよう!」


「……必要ない」



「餌箱まで作ったのに?」


「……それは必要だからだ」



「シルバーにするわ」


「……聞いているのか」





翌日、二人は庭で

汚れた子狼の体を洗っていた。



子狼がブルブルと水を弾くと、

二人はびしょ濡れになった。



「シルバーったら!もう!」


クララは笑っていた。


野獣は言った。



「名前をつけるな。

回復したら森に返す」


「ここで飼いましょうよ」


「……それはだめだ」


「なぜ?」


「森に返すのが自然の摂理だ」



クララはむくれていた。





数日後、すっかり怪我が治った子狼をクララが抱き

二人は森へ放しに行った。




子狼が鳴き声を上げると、

それを聞きつけた母狼が姿を現した。



母狼は、クララが子狼を抱いているのを見ると

唸り声を上げ、攻撃態勢を取った。



野獣はそれを見ると、

狼がクララに飛びかかる瞬間、その前に身を入れた。


野獣の腕から血が滴り落ちる。




クララが子狼を降ろすと、母狼は野獣を放し

二匹は茂みへと去っていった。



クララは恐る恐る声をかけた。



「…大丈夫?」


「……問題ない」



クララは野獣の腕を見る。


その噛み跡は、深く見えた。




「…助けてくれてありがとう。


……ルーカス」



野獣は一瞬、動きが止まる。



「……帰るぞ」



二人は屋敷へと戻って行った。







屋敷に到着すると

クララは救急箱を取り出し、

野獣の傷の手当てをした。



傷をぬるま湯で洗うと

野獣はうめき声を上げた。


「もう少しで終わるわ…」


クララは最後の包帯を巻いた。


野獣はクララを見た。



「ありがとう。


……クララ」



クララは、ルーカスを見つめた。




部屋の暖炉の火だけが

パチパチと静かに鳴っていた。





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