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グリム童話 夏の庭、冬の庭  作者: Romina


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3/12

意思をもつ屋敷


クララは、気がつくと

朝になっていた。



周りを見渡すと、クララは驚いた。


天蓋付きの豪華なベッドに、ロココ調の美しい部屋。

床は大理石で、上質なカーペットが敷かれていた。



野獣は見当たらなかった。


クララは部屋を出た。




クララは、昨日のことを

あれ以降あまり思い出せなかった。



――私は泣き続けて、気を失ったんだわ。


衣服は昨日のままであり、傷つけられたり何かをされたような形跡はなかった。





広間へ行くと、

キッチンから食べ物の匂いがした。





野獣は、ダイニングにいた。



クララは、野獣を見つけると

距離を取ろうとした。



野獣は言った。



「安心しなさい。


これ以上は近づかない」



クララは震える声で言った。



「あなたは、私を食べるの?」


「……食べようと思えば、食べられる」



クララは、少しだけ笑った。



「でも食べないってこと?


変な人ね」



野獣は言った。



「食事だ」



「…ありがとう」




食卓についたものの、クララはすぐには皿に手をつけられなかった。



クララが最初の食事でためらっている間に、

冷めていたはずのスープからふたたび薄く湯気が立つ。



野獣が何も言わず、ただ離れた席に座っているのを見て、

ようやくそっとスプーンを取った。



食事をしながら、クララは聞いた。



「あなたの名前は?」



「……ルーカスだ。

そう、呼ばれていた。


名は何という」


「私はクララよ」



「父親にバラを欲しいと言ったのは君か」


「ええ、そう」



水差しが空になると、

目を離した隙に満ちていた。



「ここの庭にはたくさん咲いている」


「わあ、見に行ってもいい?」



「……好きにするといい」





食事を済ませると、二人は外へ出た。



庭の半分の夏の庭には

見事なバラが咲き誇っていた。


その中を歩くと、むせ返るほどのバラの香り。

鮮やかな赤と葉の緑が、まるで1枚の絵画のようであった。



「なんて綺麗なの!」



クララは感嘆の声を上げ、バラに触れた。



「私のママも、バラがとても好きだったの」


野獣は黙って聞いていた。


「いつも、こんな色のスカーフをしていたわ」


クララはとびきり鮮やかな赤い薔薇を指さして言った。



「そうか」



クララは不思議に思った。


――このお庭、こんなにお花があるのに

虫は一匹もいないわ。


ミツバチ一匹見えない。

何故かしら。





クララは、もう半分の庭へ入った。


一歩踏み出すと、景色が大きく切り替わる。



庭の温度が変わった。


空気が冷たくなり、足音が吸われる。


足元には、雪が積もっていた。



――何故、この屋敷には夏の庭と冬の庭があるのかしら。




クララは聞いた。



「あなたは、ずっとここにいるの?」



「……前は違う場所にいた」



野獣は目を逸らした。


――聞かれたくないのかしら。




「あなたは、ここが好き?」



「……分からない」



クララは、それ以上聞かなかった。




クララは森の方を見た。


――パパは嫌がってたけど

ここはとても美しい森だわ。


見に行ってみたい――




「ねえ、森の中を見てみたいわ」


「……危険だ」



「パパみたいなこと言うのね」


「肉食獣や危険な場所がある」



「じゃあ、あなたもついてきて」


「…行くつもりはない」



「私一人でも、行ってこれるわ」


「……」




野獣はしばらく黙っていたが、

やがて踵を返し、森の中へと入っていった。


クララは小さく笑って、その後を追った。


























































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