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グリム童話 夏の庭、冬の庭  作者: Romina


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10/13

舞踏会の夜

朝、目を開けると、見慣れない天井があった。


ここが城だということを、少し遅れて思い出す。

――姉さんたちに、会いたいな…。



静かに扉が開き、数人の侍女が入ってきた。


「クララ様。お目覚めでしょうか」


クララは、少しだけ戸惑う。


衣服を整えられ、髪を梳かれ、 次に何をすればいいのか、自分で決める前にすべてが進んでいった。



――慣れないわ…。



支度を終えると、侍女に扉を開けられた。



「広間にて、朝食をご用意してございます」



クララは小さく頷いて、部屋を出ると

廊下にはルーカスが立っていた。



「起きたか」



クララは彼を見ると、少しだけ安心した。


広間へ行くと、朝食にしては多すぎるほど沢山の料理が並んでいた。


城のテーブルは長く、ルーカスは遠かった。


――いつもこうなのかしら。



朝食を終えると、

ルーカスはクララに、城を案内した。


庭を案内しているときに、クララは言った。



「ねえ、ルーカス…」



ルーカスはクララを見た。



「姉さんたちも、ここで暮らせたらと思うの…」



「……そうか」

 


ルーカスは少し考えると、

やがて言った。



「君が望むなら、そうしたらいい」



「……ありがとう、ルーカス」



クララはルーカスを抱きしめると

ルーカスは首元に顔を寄せる。


けれど――

触れる前に、ほんのわずかに止まり、周囲に視線を向けた。



家臣たちが、こちらを見ている。

ルーカスは一つ息をつき、姿勢を正した。



「君の家族は、自分の家族でもあるんだ。

今夜、歓迎の宴を開こう」


「ありがとう」



ルーカスは家臣に指示をした。



「今夜、舞踏会を開く。


彼女の家族を迎えに行かせ、

クララにドレスを用意させろ」






その日の夕刻。


クララは侍女たちに囲まれ

ルーカスが用意した新しいドレスに身を包んでいた。


深い紺のドレスは、光を受けてもほとんど色を変えず、

夜をそのまま纏っているかのようだった。




馬車の音が、城門の向こうから近づいてきた。

石畳を叩く車輪の音に、クララは思わず顔を上げる。


城の大扉前には、すでに家臣や侍女たちが控えていた。

整えられた空気の中で、その音だけが少しだけ浮いて聞こえる。


胸が、はっきりと高鳴った。


――姉さんたちだわ。



馬車がゆっくりと止まる。

扉が開くのを待たず、クララは一歩踏み出していた。


やがて扉が開き、先にエルザが姿を見せる。

その後ろから、ヘレナとフリッツが降りてきた。


「クララ……!」


エルザは目を見開き、すぐに駆け寄る。

クララもまた、迷いなくその腕の中に飛び込んだ。


「姉さん……!」


強く抱きしめられる。

その温もりに、ようやく息が戻る気がした。


ヘレナもクララに近寄った。


「クララ……」


ヘレナは抱き合った二人を包み込んだ。



エルザは何かを確かめるように、クララの肩に触れたまま顔を見つめる。



「クララ、あなた……」


クララは小さく首を振る。


「……夜に話すわ」

 


エルザは一瞬止まり、ヘレナは頷いた。


クララはわずかに笑う。



フリッツは言った。


「おめでとう、クララ」


「フリッツも来てくれたのね!

みんな中へ入って。疲れたでしょう」



城の扉が、静かに開かれた。






広間に足を踏み入れた瞬間、クララは少しだけ足を止めた。


光が多すぎて、どこを見ればいいのか分からない。


テーブルには見たこともない料理が並び、 名前も分からない楽器の音が、静かに空間を満たしていた。





楽の音が、ゆるやかに変わった。

広間の中央に、空間が開く。


人々の視線が、自然と一箇所に集まる。

ルーカスは黙って、クララへ手を差し出した。


クララは一瞬だけその手を見て、自分の手を重ねる。


広間の中央に出ると、

ルーカスの手が背に回り、距離が近くなった。



「緊張しているか」


「少し…」


「合わせるだけでいい」



引かれるままに、足を運ぶと

一歩ごとに、体の向きが変わった。


床の模様が、ゆっくりと流れていく。


クララは顔を上げると

ルーカスと視線が合った。



音楽の調子が変わり、足の動きが速くなる。


ルーカスが手をわずかに引くと

クララの体が回った。

ドレスの裾が遅れて広がる。


再び引き寄せられ、距離が戻った。

音が止まる。


ルーカスは手を離し、軽く頭を下げた。

クララもドレスの裾をつまみ、静かに腰を落とす。


拍手が広がり、やがて広間を満たした。

ルーカスは再び彼女の手を取り、

二人は席まで歩いていく。


クララが席に戻ると、

貴族の紳士が声をかけてきた。


「クララ様。お近づきの印に

ぜひ私と一曲、踊っていただけませんか」



クララは思わず、ルーカスを見る。

ルーカスは静かに頷いた。


「……ええ」



紳士はクララの手を取り、広間へと出る。


すると、ヘレナがルーカスに声をかけた。



「では、殿下は私と」


「…もちろん」



ルーカスはヘレナの手を取り、また広間へと出た。



ワルツの音が、城の広間に響いた。













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