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異界郵便局  作者: 翠雨
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第二十四話 光るしるべ

神立天文学研究所ってここの名前だよな?神立ってなんだ?国立みたいなこと?てか天文学研究所ってことは織姫さんと彦星さんのこと知ってたりするのかな?なんて考えつつも俺は門を叩き、出来るだけ大きな声で言った。

「すみませーん、異界郵便局のものです。流星さんへの荷物のお届けで参りました。この敷地に入る許可をいただきたいのですが、誰かいらっしゃいませんかー?」

そうすると門の向こうから一人の女性の声が聞こえてきた。

「今開けますのでもう少しお待ち下さーい」

その声に俺が分かりましたと答えた数十秒後、ギィーと言う音を立てて門が開けられた。

「寒いのにお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。カードの方を確認させていただきたいのですがお預かりしてもよろしいでしょうか?」

「あ、はい。すみません。よろしくお願いします」

「ありがとうございます。では一旦お預かりさせていただきます」

そう言って彼女は確認を始めた。

「カードありがとうございました。確認出来ましたのでお二方とも敷地内に入っていただいて問題ありません。必要であれば流星さんの棟までご案内しますがいかがなさいますか?」

「案内してもらうってなると貴方のお仕事の邪魔になったりは……」

「それはありません。お気遣いありがとうございます」

「なら、案内お願いします」

「分かりました。お任せ下さい」

そう言って俺たちの案内をしてくれている彼女はフカミさんといって、ここに勤めて長いのもあり建物について詳しかった。

「ここは名前の通り天文学の研究所になってまして、この丘一体にある建物は全て天文学研究所の建物となっています」

「え!あっちのやつもですか?」

「はい。ここから見えうる限りの建物は全部ですね。と言うかあの建物一棟一棟が各研究者の研究所になっているんです。それぞれの建物の行き来は特定の階に渡り廊下が設置されているので、そこを通ることになっています。また各棟にエレベーターが設置されてますので、棟の中を移動する際はそちらをお使い下さい」

「分かりました。それにしてもすごいですね。こんなに大きな建物をいくつも作るのは相当大変なのでは?」

「ええ、仰るとおりです。でも、私たちが作っている訳ではないので」

「どういうことですか?」

「ここは神立なんです」

「神立ってなんですか?」

「神様が作った施設や機関のことです。ここは神様によって作られた、作っていただいた場所なんです」

「そうだったんですね。俺はそもそも神立の建物があることを今まで知らなかったです」

「そういう方もかなりいると思います。神立ってあまり多くないので」

「そうなん……いや、神様が作るものですもんね。そんなに多い訳ないですよね」

「はい。基本はやっぱり私たち人が作りますから」

「ですよね」

「着きました。向こうが流星さんの棟になります。基本的に一番上の展望フロアにいらっしゃるのでエレベーターで最上階に向かっていただければ会えると思います。案内はここまでにしようと思いますが、何か質問などございますでしょうか?」

「いえ、大丈夫です。ここまでありがとうございました」

「ご丁寧にありがとうございます。何かあればまたお呼び下さい」

「はい。ありがとうございました」

「ありがとう」

「どういたしまして。それではお気をつけて」

そうしてフカミさんと別れた俺たちは渡り廊下を抜けてエレベーターに乗ると最上階のボタンを押した。最上階に着きドアが開くと、そこには星空が広がっていた。

「「うわーきれい!」」

「ありがとうございます。星は一般的には秋から冬が見えやすいとされていますので」

「じゃあ時期的にはちょうど良いんですね」

「いえ、よく言われるのは二月までなので……多少見えにくくはなっていると思います」

「そうなんですね。でもとても綺麗だと思います」

「そう思っていただけるのなら何よりです。異界郵便局の方ですよね?」

「あ、はい。異界郵便局のユキと申します」

「僕は桃羽」

「おや、神獣ですか?」

「はい。いろいろあって俺が引き取ったんです」

「そうでしたか。良い主人に引き取られたようですね」

「うん!」

「私は流星と申します。まあお二方はすでにご存知かと思いますが」

「はい。存じております。こちらの荷物をお届けに参りました。えっと……」

「こちらまで運んでいただいても?」

「はい。こわれものになってますので開封の際もお気をつけ下さい」

「分かりました。ありがとうございます」

そう言うと流星さんはダンボールを開け始めた。中に入っていたのは望遠鏡だった。

「うわ!懐かしい」

「流星さんのものですか?」

「はい。子供の頃から大事に使っていたものです。ここが壊れちゃってて使える訳ではないんですけど」

「あ、本当だ。ヒビ入ってますね」

「ええ、でも大事なものなので。届けていただきありがとうございます」

「いえいえ。仕事ですから」

「そう言われても…何かお礼を」

「いや、そういう訳には」

「物は受け取れないですか?」

「そうですね」

「じゃあ、知識なら良いですか?」

「え、知識ですか?えっと……分からないですけど、問題にはならない…かな?」

「じゃあ、知識にしましょう。こっちに来てもらえますか?」

そう言って流星さんは俺たちを部屋の真ん中に手招きした。

「今後いろんなところに行くことがあると思うので、どこでも使える知識にしますね。夜に道に迷ったら北極星を探して下さい」

「北極星ですか?」

「はい。北極星は真北にある動かない星なんです。北極星はこの星の自転軸を伸ばした先に位置している星であることから、真北にあって動かないように見えます」

「つまり、北極星がある方が北になるってことですか?」

「そうです。なので北極星の探し方を教えますね。上を見て下さい。北極星の探し方は二つあります。まず一つ目は北斗七星から探す方法です。北斗七星のひしゃくの先にある二つの星の間隔を、ひしゃくの先端から五倍にして探す方法。二つ目はカシオペア座から探す方法です。カシオペア座のWの真ん中にあたるくぼみから外へ線を伸ばします。その線の延長線上に北極星があるので探すという方法です。分かりましたかね?」

「はい。ありがとうございます。確かにこれならどこにいても使えそうです」

「なら良かったです。まあ、これを教えようと思った理由は実はもう一つあって。私が何でも指針がある方が良いと考えるからなんです」

「指針ですか?」

「はい。星もですが私にとっては名前もその一つなんです。私はこっちに来たときに名前変えてないんですよ。気に入ってるっていうのもあるんですけど、この名前を持っていられる間は星を見れるような気がして。星を見続けるという自分の決意も含めた指針の一つになってるんです」

「流星さんはすごいですね。俺は今何も指針が無いんです」

「どういうことかお聞きしても?」

「はい」

そうして俺は自分の血のことや記憶がないことなどここまでの自分についてのことを流星さんに話した。

「なるほど。それはまた複雑ですね。しかし今聞いた話しは全てあくまで事実ですよね?」

「え、はい」

「なら大丈夫じゃないですか?」

「えっと、どういう……」

「先程ユキさんが知ってると教えて下さったのはどれも一つの事実であってユキさんが求める答えの真実では無いでしょう。だから今後も真実を探し続ければ良いんじゃないでしょうか?真実を知るということが変わらずユキさんにとっては指針なのではと思ったのですが違いましたか?」

「いえ、あってます。その通りだと思います」

そうだ、その通りだ。なんで今まで気づかなかったんだろう。急に突きつけられた事実に驚きすぎて大事なことに気づけてなかった。

「流星さんのおかげで大事なことに気づけました。本当にありがとうございます」

「こちらこそ話していただきありがとうございました。お役に立てたのなら良かったです」

門まで送りますと流星さんは言ってくださったが、流石に申し訳ないのでお断りをした。エレベーターの扉が閉まるまで見送ってくれた流星さんと、門までの道で会うことが出来たフカミさんにしっかりお礼を伝え、俺たちは神立天文学研究所を後にした。



「あ、北極星ってあれじゃない?」

「ちょっと違うな」

「えーうそだ!」

「嘘じゃないって。あれが北斗七星だぞ。あそこから五倍だから………あれだ」

「ちがうよーあっちだって!」

「あの星は動いてるだろ。北極星は動かないの!」

「うごいてないよ!」

「動いてるわ!」


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