第二十三話 映すもの
冬の寒さがまだ続いている今日も俺たちは変わらず仕事をこなしていた。
「ユキー」
「なんだー」
「なんか来たー」
「なんかってまたシールでも貼ってあるのか?」
「そうじゃなくて、なんか大きいやつ」
「大きいやつ?」
「うん!あ、ごめん嘘ついた。シールあった」
「分かった。とりあえずそれに触るな」
「はーい。良い子にしてます」
そう返した桃羽への多少の心配もあり、俺は急いで桃羽のところまで向かった。桃羽がいるであろう場所を見ると、桃羽より先に大きなダンボールが視界に入った。
「………これだよな荷物」
「そう!これ」
とりあえず伝票が欲しいこともあり俺はダンボールを持ち上げようとしたがほとんど動かなかった。
「いや、重っ」
「ユキ大丈夫?」
「大丈夫、だけど……」
俺が思っていた何倍も大きく重いこの荷物をどうするか悩み、俺は思い出した。台車あるじゃん。とりあえず持ってこよう。どこだっけ?たしかこっちの方の部屋だった気がするんだけど……なんて思いながら俺はほぼ物置き部屋と化している部屋へ入った。予想通りその部屋には台車があり、俺は台車を持って桃羽の元まで戻った。
台車を荷物の前まで持ってきたところで俺は再度悩み始めた。これをどうやって持ち上げるべきかと。ワレモノ注意のシールが貼ってあるからこそこの荷物をいつも以上に丁寧に扱いたい。俺一人で持ち上げられ無い訳では無いだろうがそうなるとおそらく中身の安全が保証出来なくなってしまう。しかし、そもそも持ち上げられないことには伝票すら手に入らず配達が出来ないままになってしまう。今リアさんは配達に行ってて居ないから頼むなら桃羽になるが、桃羽が持てるとは思えないんだよな……まあ聞くだけ聞いてみるか。
「なあ桃羽」
「なに?」
「桃羽はどれくらいの重さまでなら持ち上げられる?」
「えーどれくらいって言われてもな。具体的?な数字とかは僕も分かんないよ。まあでも、これくらいなら持ち上げられるよ!」
「まじで?!」
「うん。ユキ忘れてるかもしれないけど僕神獣だからね!出来ること結構あるんだよ」
「あ、そうだったな」
「やっぱり忘れてた!別にいいけどさー。ユキと会った頃に比べたら今はすごい元気だし力も有り余ってるから!だからもっと僕を頼ってよ」
その言葉で気づいた。俺は桃羽のことを勝手に出会った頃のままにしてたんだ。少しでも居心地の良い場所だと思ってもらおう、しようと考えていたのに俺が桃羽のこと勝手に決めてるんじゃ意味が無い。
「ごめんな桃羽。これからはもっと頼らせて貰うよ」
「うん。そうして!」
「じゃあ早速だけど、この荷物をこの台車に移動させてもらえるか?」
「うん。まかせてー!」
「ああ、頼む」
俺がそう言うと桃羽は嬉しそうにしてダンボールを持ち上げた。正確に言うと浮かせたになるであろうそれは神獣の力と言われるものだと思うが、俺にはよく分からなかった。桃羽が台車に移動させてくれてことで出てきた伝票はこの前と同じで分厚く、注意書きの紙が一緒になっていた。しかし今回は書かれている内容が少し違っていた。
『この荷物はこわれものです。中身の安全性を保つ為、中は緩衝材で固定されています。しかし、絶対に安全という訳ではないので十分に注意しながら配達するようお願い致します。
また大変重くなってますので、運ぶ際はその点にも十分気をつけるようお願い申し上げます』
「なるほど」
「なんて書いてあったの?」
「この前もシール貼ってあったやつあっただろ?」
「うん」
「あれより気をつけて運んでくれってさ」
「なるほど!わかったー」
「じゃあいろいろ分かったところで配達行こうか。準備終わったらここ集合。分かった?」
「うん。わかったー」
そうして俺たちはそれぞれ準備を始めた。バッグを持ち帽子を被って先程のところへ戻ると、もう桃羽が待っていた。
「準備終わったー?」
「うん。待たせてごめんな。行こうか」
俺がそう言うと桃羽は返事をしてステンドグラスの部屋へ向かって行った。俺はその後を台車を押してついて行った。
部屋に着くと俺は装置に伝票を置いた。座標が映し出されたのを確認して俺たちは円の中に入った。
目を開けると森の中だった。周りに人などの気配は無く、近くには道があるだけのようだ。とりあえずと思いコンパスを開いて見てみると黒い点はそれほど遠くは無く、どうやら道になっている方から向かうことが出来るようだった。道になっているところまで行って分かったことはしっかりと舗装されている道路だったことと、丘の上へと続く一本道だったことだ。それにしてもこの道路はとても幅が広く作られている。この広さならトラックといった大きさの車も難なく通れるだろうなんて思いながら台車を押していれば、遠くに大きな建物がいくつか見えてきた。かなり高さがあるように見えるし、上が丸くなっている。おそらくあそこが届け先になると思うのだがあの建物はなんなのだろうか?あの一つ一つが別の建物であそこに集まっているのだろうか?それともあの建物全てが何か一つの施設になっているのだろうか?といろいろ考えてみたが結局は何も分からず、気づけば建物の前に着いてしまっていた。大きな門が設置されているその建物には神立天文学研究所と書かれた看板があった。




