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異界郵便局  作者: 翠雨
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第二十五話 新天地

気付けば異界郵便局の一員になってから一年が経っていた。時間が経つのは早いものだと思う一方で、なかなか濃い一年だったなとも思った。仕事の面では成長していきたいものだが、平和で幸せなこの職場は変わらないでもらいたいと思っていたのだが………世の中そう上手くはいかないらしい。



「お、来たね。おはよう二人とも」

「おはようございます」

「おはよーリア」

「なんかありましたか?」

「うん。ユキくんに上からお手紙です」

そう言って手渡された封筒は手紙と言うにはあまりに分厚かった。

「これ手紙って言うか書類じゃないですか?かなり分厚いと思うんですけど」

「まあ開けてみなよ。見れば分かるって」

そう言われ封筒を開けてみると中は予想通りの紙の束。これ全部読まなきゃいけない感じかな…ちょっとめんどくさいかも。なんて思いながらも紙の束を取り出すと中に一際分厚い紙が一枚あった。これはあれだ、まずいやつだ。と思ったが取り出してしまった以上無かったことには出来ない訳で、俺は渋々その紙を束の中から引き抜いた。しかし、手に取ったその紙は俺が思っていたものとは違っていた。

「あれ、特例任務じゃない?でもこの紙って…」

「まあまあ、まずは読んでみなよ」

そう促され俺は文字が書かれている紙に目を落とした。

『異界郵便局日本支部所属 ユキ殿

日頃より真摯に業務にあたっていただきありがとうございます。関係各所よりユキ殿への好意的なお言葉をよくいただきます。

私共は皆様の更なるキャリアアップや能力向上を第一に考えております。日本支部で働き始めて一年が経った今、いつもとは違う場所に身を置いて仕事をすることで新たな学びを得ていただきたい。

ということであなたに海外研修を命じます。期間はそれほど長く無い、いわゆる短期的なものにはなりますが、場所や人だけではなく言葉や常識といったことも違う土地で己を見つめ直し、新しい自分への足掛かりを作っていただければと思います。詳細は同封しております資料の方に記載がありますのでご一読ください』

………えっと、かなりとんでもないこと書いてない?俺海外行くの?マジで言ってる?なんて俺が困惑していると横でリアさんが封筒の中の資料を見始めていた。

「やっぱり海外研修のお知らせだったか」

「やっぱりってことは知ってたんですか?」

「うん。ていうか私も昔行ったし。まあその時とは場所とか方式とか随分変わってるみたいなんだけど」

「そうなんですか。じゃあある意味恒例行事みたいなものなんですね」

「そうだね。まあ言い方的には通過儀礼の方があってるかも」

「なんか一気に不穏になったんですけど……」

「……気のせいだよ」

「ちょっと!今の間なんですか?」

「ハハ、ごめんごめん。でも本当に大丈夫だよ。馴染みのない場所でも仕事を出来るようにするみたいな目的のものだからあんまり気負わないで。期間も二ヶ月無いくらいみたいだし」

「え、そんなもんなんですか?」

「ギリギリの人数で回してる支部もあるからだと思うよ。研修行ってる間に仕事が回ってないんじゃ笑えないし」

「なるほど!というか研修はいつからですか?」

「えっとねー日にちは……」


________________________________________________


なんて話をしていたはずがあっという間に研修が始まってしまった。資料が届いたあの日が懐かしい。そして職場が恋しい。桃羽の同行許可も降りなかったし……もう寂しい。俺ダメかも。

「ねえ、ちょっと!聞いてる?ボーッとしすぎじゃない?緊張されすぎて使い物にならなくても困るけど、緊張感が無さすぎるのも良くないんだけど」

「あ、ごめんなさい」

「いや、謝ってほしい訳じゃなくて。てか敬語やめてって言ったでしょ!」

「あーうん、悪い。気をつける。なんかこうホームシック?みたいな感じっていうか、職場が恋しいなーって思っちゃって」

「早すぎるでしょ。そんなんじゃ研修最終日までもたないよ。もっとちゃんとしてよ」

「うん。おっしゃる通りです。大丈夫!仕事はちゃんとするから」

「だと良いけど」

今回の海外研修は前半(初めの約一ヶ月)は二人一組、後半(残りの約一ヶ月)は個人で配達を行うことになっている。そして前半で俺とペアを組んで配達を行うのが先程敬語を使われるのを嫌がっていた彼女だ。彼女の名前はキア。使う言葉は強いが、こちらを気にかけていてくれる言動が多くかなり優しい人である。彼女に必要以上に迷惑をかけることなく前半の研修を終えたいと思っているのだが……。

「ねえキア」

「何?」

「先生が何言ってるか全然分からない」

「はあ?あーイヤホンね。とりあえず今はそのまま話聞いてて。後で説明するから」

「ごめん。ありがとう」

「別に。仕事出来ないのは困るし。お礼言われるようなことじゃ無いから」

全体への話が終わったところでキアと一緒にイヤホンを持って先生のところへ向かった。

「すみません。先生、彼のイヤホンが壊れたかもしれなくて」

「それは大変だ。一度こちらで預かるよ。予備があるからしばらくはそっちを使ってもらえるかい?」

「?」

「イヤホンは預かる。予備があるからしばらくはそっちを使えるかって」

「あーはい。それで問題ありません。ありがとうございます」

「OK!じゃあ今持ってくるから少し待ってて」

「持ってくるからここで待ってろって」

「なるほど。ありがとう。キアがいなかったら会話もできてないよ」

「イヤホンのおかげだよ。これが無かったら私も何を言ってるかは分からないから」

「でも、通訳してくれるのはキアの意思でしょ?ありがとうね」

「それは…どういたしまして」

「待たせてごめんね。これが予備だよ。つけてみてくれる?」

「つけてみてくれって」

「分かりました」

「どうかな?僕の声は聞こえる?」

「はい。聞こえます」

「そう、なら良かった。他に聞きたいこととかは?」

「「大丈夫です」」

「分かった。じゃあ、二人とも業務にあたってください」

「「はい」」

「さっきの先生の話だけど、私たちの業務内容についてのものだった。ここに残って荷物の仕分けとか種類整理を行う人たちと配達に行く人たちとで分かれるみたい。私たちは当たり前だけど配達の方で、荷物によって色々と変わるみたいでとりあえず配達する人たちは二階の第六会議室に向かえって」

「なるほど、分かった。助かるよ。ありがとう。このまま向かえばいいのか?」

「多分そう。何か持ってけとかは言ってなかったから」

「了解」

そうして俺たちは二階の第六会議室へ急いで向かった。


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