第十七話 迎える準備
郵便局に着くと挨拶するより先にリアさんに捕まった。
「ユキくん体調大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「良かった!倒れてるって聞いたときはびっくりしたんだよ!」
「え!リアさんに連絡いってたんですか?なんかすみません」
「無事なら良いんだよ。てか私ユキくんの上司だからね。部下に何かあったら連絡くらいもらうよ!」
「言われりゃそうですね。うち一応ちゃんとした機関ですしね」
「そうだよ。あとあれも聞いたよ。神獣ちゃん」
「え!あーまあそう…なりますよね」
「どうするの?」
「どうするって?」
「ユキくんの家にいるのか、ここに連れてくるのか」
「連れて来て良いんですか?」
「もちろん。ここにいる分には困らないしダメじゃないよ。配達に連れて行くってなると手続きいるけど」
「そうなんですね。手続きしたら配達には絶対連れて行くことになりますか?」
「ううん。そんなことないよ」
「なら、手続きしておいた方が良いですよね?どうするかは後から本人に決めてもらえば良いですし」
「私はそれで良いと思うけど、ユキくんは良いの?」
「はい。出来るだけのびのびして欲しいなって思ってるので、俺が出来ることは全部やって選択肢は増やしてあげたいんです」
「なるほどね。じゃあ私も出来ることは手伝うよ」
「ありがとうございます」
「いや私も仲良くしたいからさ。というかなんて名前なの?」
「名前か。そういえば知らないな」
「知らないの!?なんか名前っぽいの呼ばれてたりしなかった?」
「そうですね。呼ばれてなかったと思います」
「もしかして子どもだった?」
「あーはい。その可能性は高いと思います」
「じゃあまだ名前無い子だったのかも」
「その場合はどうなるんですか?」
「ユキくんがつけるんだよ」
「え!俺ですか?」
「当たり前じゃん!ユキくん主人でしょ」
「まあ、それはそうですけど……」
「ちゃんと名前決めてあげるんだよ」
「はい、考えておきます」
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数週間後、郵便局に連絡の文書がきた。その内容はもちろんあの神獣についてのものだった。
『異界郵便局 日本支部ユキ殿
貴殿をかの神獣の主人とすることをここに宣言する。
また、神獣は今後貴殿の側に置き、共にあることとする。
神獣 前責任者より』
「これは?」
「それは神様からの正式な文書で、いわゆる契約書みたいなものだよ。大事なものだから失くしたり汚したりしないように保管しておきなね」
「分かりました。じゃあこっちは?」
「それが神獣ちゃんについての連絡の方じゃないかな?」
「あ、本当だ」
「なんて書いてある?」
『日本支部の方々へ
神獣様につきましては、現在治療を終えて本部の一室で預かっております。現状体調に問題は無く元気に過ごしておりますので、まとまった時間が取れる日に本部の方へお越し下さい。
また、地獄から送っていただいた資料の確認をしていただきたく思います。神獣様に関するお手続きがありましたら、資料の確認でいらっしゃる際に一緒に済ませていただければと思います。
今後とも変わらず真摯な仕事への取り組みをどうぞ宜しくお願いいたします。
異界郵便局 本部』
「地獄の仕事まだ終わってなかったんですね」
「あの仕事はあれで終わってると思うよ。これは無くなってるものがないか、運んだもので間違いないかみたいな最終確認をして欲しいってことだと思うけど」
「だと良いんですけど。というかこの箱も一緒に届いたものですか?」
「あーそうそう。ユキくん宛てだよ」
そう言われたのは小包で、中に入っていたのは晦さんのお香だった。本当にちゃんと送ってくれたんだ。なんか御礼がしたいけどどうしようかな?というかまずこっちから地獄に送れるのか?そう思いリアさんに聞いてみた。
「あの、ここから地獄宛てに荷物って送れますか?」
「大きさによるかな。物ってなると多分これくらいの大きさまでになると思うよ。紙なら大きさとかの限度は無いんだけどね」
「なるほど。手紙なら絶対大丈夫なんですね。じゃあ物は避けた方が良いかな……」
「うーん、どうだろうね。私的な物ってなると難しいけど、仕事に関する物が混ざってれば仕事の物として送ることが出来るから大きさ気にしなくて良くなるんだけど。何か仕事関係で送る物ある?」
「無いと思います」
「まあ、それなら物より手紙の方が良いかもね」
「分かりました。じゃあ手紙にします。ありがとうございました」
「どういたしまして。何のことか分かって無いけど、とりあえず役に立ったなら良かったよ。それで、いつ本部に行こうか?」
「そうですね。まとまった時間が取れる日にって書いてありますけど、俺らいつなら時間あるんですか?」
「しばらくは割と暇だと思うよ。だからユキくんの希望に合わせようと思ってたんだけど」
「あーそうなんですか。まあ出来るだけ早く迎えに行きたいとは思ってますけど、それまでにやっておいた方が良いことがあれば終わらせておきたい気持ちもあって」
「うーん、手続きは本部行く時にした方が良いみたいだし、今出来ることってなると名前決めておくくらいかな…決めたの?」
「いくつか案は出たんですけど、最終的には本人に決めてもらおうかなって」
「そう!ならもう私たちが出来ることってないと思うから、明日までに配達出来るだけ終わらせて明後日にでも本部行く?」
「リアさんが困らないならそれでお願いします」
「じゃあそうしよう!」
そして当日。俺は少し緊張しながら出勤した。
「おはようございます」
「おはよう!やっぱり緊張してるね」
「しょうがないじゃないですか!本部とか行ったことないですし、手続きもほとんど何も分かってないですし、そもそもあの神獣の子に会うのも久しぶりなんですよ!緊張しない方が難しいですって」
「まあ確かに、それもそうだね」
「リアさんは割と落ち着いてますね」
「そう見える?私そんなに落ち着いてないよ」
「そうなんですか?」
「うん。神獣ちゃんに会えるの楽しみで割とテンション上がってる」
「あーなるほど。俺とは真逆ですね」
「真逆……まあ真逆か。というかユキくんは緊張しすぎね」
「それはその通りだと思いますけど。もう移動しますか?」
「うん、そのつもりだったけど。もうちょっと後にする?」
「……いや、移動しましょう。待ったから緊張が収まるとかじゃないと思うので」
「分かった。ダメそうなら言ってね。休憩したりは出来るから」
「ありがとうございます」
そうして歩き出したリアさんの後を追って俺も歩いた。少し歩くとリアさんは知らない部屋の前で止まった。
「あの、この部屋何ですか?」
「本部に繋がる物がある部屋だよ」
そう言って開けられた扉の先には数枚の絵画が飾られていた。そしてリアさんはその中で一番大きな絵を指差した。
「あの絵だよ。あの絵を使って本部まで行くの」
「てことは出勤の時と同じ方法ですか?」
「そのとおり!知ってる方法だから特に問題は無いと思うんだけど、移動し始めていい?」
「はい。大丈夫です」
そう言った俺を少し心配そうに見ながらもリアさんは絵の中へ入っていった。そのリアさんに続いて俺も絵の中へ飛び込んだ。




