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異界郵便局  作者: 翠雨
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第十四話 居場所と真意

村を出て歩きながら何から話すべきかを考え、もう一度自己紹介をしておいた方がいいかもしれないと思い、俺は再度自己紹介をした。

「もう一度自己紹介するね。俺はユキって言って、異界郵便局ってところで働いてるんだ。俺が働いてる郵便局はいろんな人や場所と関わりがあるから助けになれる事があると思う。ここまでは大丈夫?」

「うん。大丈夫」

「良かった。聞きたいことがあったら何でも聞いていいんだからね」

「じゃあ、聞いていい?」

「うん、もちろん」

「私お家帰れる?」

「まだ分からない。けど、君のことを探してる人がいるのは知ってる」

「ママとパパ?」

「ごめんね、それは俺には分からないんだ。でも、君を見つけたらここまで連れて来て欲しいって言われてる場所があるから、とりあえずそこに一緒に行ってみない?」

「そこに行けばママとパパに会える?」

「それはまだ分からないけど、お家の場所とかママとパパに関することとか何かしら知ってる人はいるかもしれないんだ」

「分かった。そこに行く」

「ありがとう。ここから少し歩くことになるから疲れたら言ってね。休んだり、おんぶしたり出来るから」

「うん。ありがとう」

そう返してくれた少女は先程より少し元気になっているように見えて俺は少しホッとした。この感じなら、この子自身についてのことを多少質問してみても大丈夫そうだなと思い俺は質問をした。

「そういえばまだお名前聞いてなかったと思うんだけど、教えてもらえたりするかな?」

すると少女は急に目を泳がせ黙ってしまった。質問間違えたかなと思っていると俺の手が軽く引かれた。どうしたのかと思い少女の方を見ると目が合った。

「あのね、嫌だったとかじゃないの。ただ…その……怒らない?」

「うん。怒らないよ。絶対に。どうしたの?」

「私ね、覚えてないの。何も覚えなくて、お家に帰りたいってことしか分からないの」

そう涙目で話す少女に俺はこう返した。

「なるほど。つまり今自分の名前も分からないってことであってる?」

「うん。ごめんなさい。変だよね」

「そんなことないよ。俺も郵便局で働くより前のこと何も覚えないから。お揃いだよ俺たち」

「え!そうなの?」

「そうだよ。でも俺は今居るべき場所って思えるところで暮らせてるから。だから大丈夫。何も変じゃないし、きっと帰れるから」

「うん。ありがとう」

俺は少女の話しを聞いて今までの言動に納得がいった。話せる事がなく、ここがどこか、どうすれば良いかも分からない。だからあそこで座り込んでいたのだろう。出来るだけ早く神様のところに連れて行くべきだとは思うが、これまでの話しを聞かない訳にもいかない。このままもう少し質問してみるか。

「ねえ、無理に答えたりしなくていいからもう少しだけ俺から質問してもいいかな?」

「うん。大丈夫だよ」

「ありがとう。村には自分で来たの?それとも気づいたら村にいたの?」

「どっちでもない。呼ばれたの」

「呼ばれた?もう少し詳しく教えてもらってもいい?」

「うん。あのね、はじめは森の中にいたの。そしたらこっちだよって声が聞こえて、周りを探したら同い年くらいの男の子がいたの。その子が村の近くまで連れて行ってくれて、村の奥にあった川を渡ろうとしたら大人の人に止められて、帰れって言われたんだけどどうしていいか分からなくなっちゃってその後は村にいた」

「男の子は村の子?」

「分かんない。けど川のところで止められたらいなくなちゃった」

「いなくなった…か。その子は道とか分かってるかんじだった?」

「うん。迷ってるかんじはなかったから多分知ってたんだと思う」

「そうか」

「そういえば、あのお爺さん私のことしか止めなかったな。なんで私の手しか掴まなかったんだろう」

「その止めたお爺さんは村の人なの?」

「うん。村の人だったよ」

「その人は何か言ってなかった?」

「言ってたよ。お前はここに居るべきじゃない!早く帰れ!ここにお前の居場所は無いんだって」

「怒ってたの?」

「止めた時は。さっきの言葉言った時は怒ってた訳じゃないと思う。けど私が何も覚えてないって言ったら早く帰れって怒られた」

「なるほど」

村の人はこの子を嫌がってた訳じゃなさそうだな。なんならこの子の為にあんな態度を取っていた可能性もあるけど、そんなことする理由が思いつかないんだよな。でもあの女性の表情からしても嫌悪とかじゃなくて心配って感じがするんだよな。なんて考えていたら、疲れてきたのか少女の歩くペースが少し遅くなっていた。俺がおんぶして運んでもいいかと聞くと頷いてくれたので、背中に乗ってもらい歩き始めた。そのまま三十分程すると見慣れたステンドグラスが目に入った。俺は出来るだけ揺らさないようにしながら早足でその建物に向かった。建物に入るとお爺さんが出迎えてくれた。俺がここまでの事や少女の事を説明をすると、お爺さんはすぐに確認などの作業を行い装置のある扉の前まで連れて行ってくれた。お爺さんに御礼を言って扉を開けると俺は少女を起こした。まだ少し眠そうにしている少女に今から移動するから手を離さないようにしてくれとだけ伝えて装置にカードを置いた。円のところまで移動すると少女は目が覚めてきたのか不思議そうに俺の方を見てきた。大丈夫だよと少女に伝えたところで俺たちは光に包まれた。



目を開けると郵便局だった。無事に着けて良かったと思っていると横から楽しそうな声が聞こえてきた。

「光った!すごい!さっきの場所と違う?」

「違うよ。ここは郵便局。だけどここからまた別の場所に移動するよ」

「また光る?」

「ごめん。次はそんなに光らないかも。びっくりはするかな?」

「びっくり?」

「うん。今のとちょっと違うから」

「違うの?!」

「そうだよ。説明するより見た方が早いから試しに行こうか」

「うん!」

そう答えた少女は楽しそうに見えて、俺も嬉しくなった。装置のある部屋を出て進み、まだあまり見慣れない扉の前で止まった。

「ここのステンドグラスのところに手を置いてみて」

「分かった」

そう言うと少女は少し怖がりながらもステンドグラスに手を置いた。するとステンドグラスの模様が門のようなものに変わった。

「すごい!変わった!」

「すごいよね。俺もいまだにびっくりするよ。扉開ける?」

「うん」

そう言うと少女は扉を開けた。



扉を開けた先には俺にとっては見慣れてきたと言える赤い門があった。門に近づくと門番の人に声を掛けられた。

「おまえ異界郵便局の奴だろ?今日もなんかの仕事か?また呼ばれたか?」

「いえ、今日はこの子の付き添いで」

そう言って俺の後ろにいる少女に目線をやると、門番の人はハッとした顔をした。

「この子って」

「はい。おそらく探し人の子で、自分のこととかも何も覚えてないみたいで」

「分かった。おまえはその子とちょっと待っててくれ。俺は上に伝えてくる」

そう言うと門番の人は本殿の方向に走って行った。少し待つと官吏の人を連れて戻ってきた。

「お久しぶりですユキさん」

「お久しぶりです灯火さん。すみませんわざわざ」

「いえ、そちらの子ですよね?」

「はい、この子です」

俺がそう言うと灯火さんは少女に目線を合わせ話し始めた。

「はじめまして。私は灯火と言います。あなたは家に帰りたいと、両親に会いたいと思ってますか?」

「うん。帰れる?」

「はい。帰れますよ。あまり遅くなっても良くないのでもう帰りましょうか」

「あの…じゃあ、お兄ちゃんにありがとうしてもいい?」

「はい、それくらいなら問題無いですよ」

そう灯火さんが言うと少女は俺のところに来て話し始めた。

「あのね、ユキお兄ちゃんといる間は安心したよ。一緒にいてくれて嬉しかった。一緒にいてくれて、ここまで連れてきてくれてありがとう」

「俺の方こそ沢山お話し出来て楽しかったよ。ありがとうね。気をつけるんだよ」

「うん。またね」

そう言った少女に俺もまたねと返そうとしたら門番の人に止められた。困惑している俺の代わりに彼がバイバイと返した。

少女は灯火さんに連れられて本殿へと入って行った。二人が見えなくなるまで見送ると、門番の人から質問された。

「おまえさっき“またね“って言おうとしただろう」

「はい。ダメなんですか?」

「ダメって訳じゃないけど良くもないだろ」

「なんでですか?」

「は?おまえ知らないのか?あーでも、確かに知らない奴の発言か。あの子さ、まだ死んでないんだよ」

「え!死んでないのにこっちに来れるんですか?」

「来れないよ普通は。でもイレギュラーはある。あの子の場合は今死にかけてる状態で、魂だけがこちら側に来ちゃってたんだよ」

「ということは、探し人になる人ってこちら側に居るべきではない人ってことですか?」

「そう、その通り。あんまりこっちにいすぎると現世に帰れなくなっちゃうから、より多くの人に探すの手伝ってもらってるんだよ」

「帰れなくなるんですか?」

「魂がこっちに馴染みすぎて体に戻すのが難しくなるらしい」

「なるほど」

そのとき少女が村の人から言われたという言葉を思い出した。

「あの、ここに居るべきじゃないとか、おまえは帰れみたいなことを言うのも何か意味がありますか?」

「あーそれは、死んでないことを自覚するとダメだからだな。基本的にはこういう場所に連れてくるんだけど、連れて行けないってなるとどうにかして向かわせよう、ここから移動させようってなるんだよ。その場合は割と酷い言葉を言って嫌われてでも本人を動かそうとするから、そのパターンだったんじゃないか」

その説明を聞いて俺は納得した。そういうことならあの女性の表情や、少女から聞いた村人の言動にも説明がつく。

「そういえばあの子が男の子がいなくなっちゃったって言ってたんですが、他に探し人の子どもとかいますか?」

俺がそう聞くと門番の人は途端に険しい顔つきになった。

「その子どもどんな子だって言ってた?」

「同い年くらいの男の子で、村の方に連れて行ってくれたって」

「川渡ろうとしたとかは?」

「あ、はい。川渡ろうとしたって言ってました。結局村の人に止められたらしいですけど」

「やっぱり。そいつ人じゃない。死にかけの魂に着いてくる良くない奴だ」

「それは、なんなんですか?」

「地獄の生物みたいなもんだ。少なくともここにいて良いものじゃない。しかもそいつら厄介なのは人型だったり、人に擬態できたりすることなんだよ。上に報告しておくわ。教えてくれてありがとうな」

「いえ、こちらこそ色々教えていただきありがとうございました」

「おまえ本当に良い奴だな。俺は暮野くれのだ。よろしくな」

「俺はユキです。よろしくお願いします」

「敬語じゃなくて良い。おまえとは友達になりたいんだ」

「そういうことなら、よろしく」

「おう。またここに来る機会もあるだろうし、見かけたら遠慮なく声掛けてくれ」

「分かった。ありがとう暮野」

暮野と話し終えると俺は郵便局に帰るために本殿の中にあるステンドグラスの扉のところへ向かった。扉にカードをかざしてドアノブに手をかけたところで灯火さんが走って来た。

「すみません。一つお伝えしておきたいことがありまして。数日以内にユキさんに荷物が届くはずですので、受け取ってください」

「灯火さんからということですか?」

「はい、そうです」

「分かりました」

「本日はありがとうございました。お気をつけてお帰りください」

「はい。こちらこそありがとうございました」

そう伝え俺は郵便局へ帰った。

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