第十一話 二度目の指名
お盆の忙しさから数週間が経ち、夏の暑さも和らぎ涼しくなってきていた。少しづつではあるが過ごしやすい気温になってきたなんて考えていればリアさんに声をかけられた。
「またボーっとしてる。夏場を挟んだら再発した?」
「碌でもない言い方しないで下さいよ。そんな事ありません」
「本当に?」
「本当ですよ!今ちょっと考え事してただけです」
「ユキくんは悩みが尽きないね」
「まぁ確かに。常に何かしらに悩んでいる気はします」
「悩みってなるとね、私が答えれることかも分からないから変なこと言えないし」
その発言に確かにと思ったのと同時に、そう言えばリアさんはどうなのだろうと思った。俺と同じで記憶が無いのか、はたまたちゃんと全部覚えているのか?そもそもリアさんはいつから働いているのだろうか?と幾つもの疑問が生まれた。これこそ自分で考えるより聞いた方が早いかなんて思い質問しようとすると
「まぁ、どれだけ悩みがあろうと仕事はしてもらわないといけないので!ってことでユキくん、こちらをご覧ください」
そう言って見せられたのは見覚えのある紙で
「え、まさかまたですか?」
「察しがいいね。大正解!ユキくん名指しの特例任務です」
「なんで俺ばっか」
「今回はユキくんだけじゃないんだよ」
「え?リアさんも一緒ってことですか?」
「一緒ではないかな。私にも同じ特例任務の仕事はきてるけど、業務内容が私とユキくんだと違うと思うから」
「なるほど。とりあえず一人じゃないってだけで安心です」
「安心って、この前はちゃんと出来たんでしょ?何がそんなに不安なの?」
「俺特例任務って神様からの仕事ってイメージがあって、神様の常識とか儀礼とか知ってる訳じゃないんで、何か失礼があったら嫌だなって思って。前回はそんなこと無かったんですよ。けど次に会う神様も同じように優しい方かは分からないじゃないですか……」
「そういうことね。基本的には私たちが知ってる儀礼とかで問題はないよ。常識は私もあんまり分からないけど、こちらに仕事を頼んでいる時点で神様だけで進めるときと違いがでるっていうのは分かってるはずだから、何か言われればその時に謝って直せば問題はないよ」
「そうなんですね。思ってたより普段と変わらないな」
「そうだね。基本的にはいつも通りで大丈夫。何か言われた場合はその指示に従うって感じかな」
「分かりました。それにしても特例任務多くないですか?」
「あー日本は神様が多いからね。他の支部に比べると多い方だとは思うよ。だからうちに慣れておくと、他の支部では働きやすいと思う」
「それは単にうちがブラックって聞こえますけど」
「それは違う。言い方間違えたな。えっと、他の支部よりいろんな経験を短期間で積むことが出来るってこと!」
「ああ、なんか良く聞こえます」
「うん!じゃあそれで」
「というかそれはいつからですか?」
「明後日。だから今のうちに届けられるものは届けちゃおうか」
「分かりました」
そう言って俺とリアさんは出来る限りの荷物の配達を終わらせた。
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そしてやってきた二度目の特例任務当日。いつもみたいに装置を使おうとすると、今日は一緒だからこっちから行こうと言ってリアさんは歩き出した。リアさんについて行くと一つの扉の前で止まった。
「ユキくんはこれ使ったことないよね?」
「はい。何の部屋か知らないです」
「ここはね神様たちのところに繋がってるの」
「繋がってるってことは開けたらもう着くってことですか?」
「最悪その使い方でもいいけどね。出来れば伝票とかこの紙を読み込ませた方がいいかな。あとは届ける必要がある物とか人でも大丈夫」
「え!物とかは座標書いてないですよね」
「座標は書いてないけど、神様側が必要としてる時点でその物や人が行くべき座標は決められるから問題ないんだよ」
「なるほど。てことは今回は紙を読み込ませるんですか?」
「そうだよ。ただいつも使っている装置とは違って、ここはこの扉のステンドグラスの部分に置くだけ。そうするとステンドグラスの模様が変わるから、変わったらもうドアの向こうが目的の場所になってるって感じ」
「こっちの方が簡単なんですね」
「うん。でもこれは神様の力があってこその代物だからね。私たちがそう簡単に多様は出来ないかな」
「ああ、納得です」
「でしょ。まぁそれじゃあ移動しちゃおうか」
そう言ってリアさんは特例任務の紙をステンドグラスの部分に置いた。するとステンドグラスの模様が門のようなものに変わった。それを確認してからリアさんは扉を開けた。
扉の先にはこの前の門があった。
「ここってお盆の時の門ですよね?」
「そうだよ。やっぱりユキくんはちゃんと覚えてるね」
そう言うとリアさんは特例任務の紙を門番の人に見せた。しばらくすると門はガシャンという音を立てて開かれた。俺は門番の人に一礼をしてからリアさんに続いて門の中に足を踏み入れた。
門の中は中央が石畳になっていた。その先には大きな建物が見えていて、リアさんはどうやらそこに向かって歩いているようだった。
「あそこの建物に向かってますよね?」
「そうだよ。ちなみに今向かってるのがここの本殿ね。お盆の時なんかは本殿の中にある別の門から現世に行けるようになってるんだよ」
「てことは俺たちが今回仕事するのもその本殿ですか?」
「どうだろう。仕事内容は説明聞くまではっきり分かる訳じゃないんだよね。今も責任者が本殿にいるから向かってるってだけだし」
「そうなんですね。じゃあ今のうちに一応覚悟はしておきます」
「そんなに変わった仕事ではないと思うけど」
そんな会話をしながら歩き続けると本殿が見えてきた。本殿の前には着物を着た人が立っていた。
「ここの官吏の方だよ」
そうリアさんが言うとその人は一礼して話し始めた。
「リアさんはお久しぶりです。あなたは初めましてですよね。ここで官吏を務めている灯火と申します」
「初めまして。異界郵便局で働いているユキです」
「ご丁寧にどうも。お二人とも本日はお越し頂きまありがとうございます。ご案内しますね」
そう言うと灯火さんは歩き出した。俺たちも灯火さんに続いて歩き出した。
本殿の中に入り暫く歩くと大きな襖の前で止まった。灯火さんがユキさんはこちらですと言い俺を襖の前に移動させると説明を始めた。
「この先はもう業務が主になってしまうので今のうちに仕事内容について簡単に説明させてもらいますね」
「分かりました」
「今回ユキさんには主に運搬と設置を行っていただきます。運搬についてはここではない別の場所からここの敷地内へと運んでいただくことになっています。設置については、あの子達では出来ないところを主に手伝ってもらうことになると思いますので、それは現場の方の指示に従っていただくことになると思います。業務内容についての説明は以上になりますが何か質問はございますか?」
「いえ、特にはないです」
「分かりました。ではよろしくお願いします」
そう言うと灯火さんとリアさんは行ってしまった。とりあえず分からない事は聞こう、大丈夫と自分に言い聞かせ俺は失礼しますと言い襖を開けた。そんな俺の目に飛び込んできたのは部屋いっぱいの真っ白いもふもふ、もとい大量のうさぎだった。




