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俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜  作者: 鴨山 兄助
第十章:文化祭編

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第二百五十二話:天馬とドンブラこ②

「らんらんセンパイのターンですよ」


 無邪気な笑みと声で、早乙女さんが藍にターンの開始を急かす。

 いつの間にか(らん)に愛称を付けているし、もう先輩呼びまでしている。

 色んな意味で、自信の塊のような子だなと思ってしまう。


「うんうん。なんか気分アガってきたかも! アタシのターン!」


 対する藍はというと、らしいというか何というか。

 挑戦者の実力が思いの外高くて火がついたのか、むしろテンションが上がってきている。

 いや、いつも通りにファイトを純粋に楽しんでいるだけだ。


「メインフェイズ! 勝ちにいくよー、〈ブイバード・勾玉(リチュアル)(カスタム)〉を召喚!」


 藍の場に出たのは、勾玉を装備するようになった鳥型モンスター。

 犬猿とくれば、やっぱりこっちも新形態で出てくるよな。


〈ブイバード・勾玉改〉P4000 ヒット2


「召喚時効果発動! 手札を1枚捨てて、自分のデッキを上から4枚破棄」


 手札コストを払って墓地を肥やすだけの効果……なんて事はない。

 ただ使うだけならそうだが、ライフ5以下で発動すれば追加効果がある。


「さらに【Vギア】を達成してるから追加効果発動! アタシの墓地からヒット2以下の系統:《勝利》または《解放同盟》を持つモンスターを1体選んで復活させる。きて、〈ブイモンキー・鏡改(ミラージュカスタム)〉!」


 先程のターン、藍の手札から墓地へ送られていた猿型モンスター。

 再び大きな鏡を装備した状態で、今度は藍の場に姿を現した。


〈ブイモンキー・鏡改〉P7000 ヒット1


「さらに〈ブイクレーン〉を召喚」


〈ブイクレーン〉P1000 ヒット1


 続けて藍が召喚したのは鶴型のモンスター。

 あれも召喚時効果を持っているけど、今回は使わないっぽいな。

 手札の残りも少なくなってるし、次で何か大きなアクションを起こさないと勝てないけれど……


「そしてー! アタシは魔法カード〈三臣奥義(さんしんおうぎ)桃獣(とうじゅう)の陣-〉を発動ー!」


 意気揚々と魔法カードを発動した藍。

 なるほど、そのためにモンスターが3体残るようにしていたのか。

 と、俺は藍の狙いをなんとなく察している一方で、ソラは小さく首を傾げていた。


「なんでしょう、あのカード」

「あれ? ソラは見るの始めてだったか。アレは自分の場のモンスターを好きなだけ破壊して、その種類で使える効果が決まるカードだよ」


 破壊したモンスターが1種類以上なら、自分か相手にダメージ。

 2種類以上ならデッキから2枚ドロー。

 そして3種類以上なら、回復状態の相手モンスターを全て破壊できる。


「うーん? 全体破壊の効果は強力ですけど……それを使えば自分の場がガラ空きになっちゃいますよ」

「確かに。普通に発動すれば、ドロー効果を加味してもソラの言う通りになる」


 だからソラの疑問は至極真っ当。

 だけどそれはあくまで、普通に発動した場合に限る。


「あの魔法カードは、墓地に3体のお供が揃っていると追加効果があるんだよ」


 そんな話をしている内に、藍は自身の場にいるモンスター3体を全て破壊した。

 これで〈桃獣の陣〉は全ての効果を発動する。


「まずは第一の効果! アタシのライフが5以下だから、相手に2点のダメージ!」

「きゃっ」


 コスモ:ライフ11→9


 魔法効果で発生した電撃が、早乙女さんのライフを削る。

 とはいえまだまだ【天罰】の適用範囲ではあるからか、早乙女さんは余裕といった様子だ。


「第二の効果で、アタシはカードを2枚ドロー」


 ドローしたカードを確認するや、藍は口元に小さな笑みを浮かべていた。

 あの様子なら大丈夫だろう。少なくとも下手な負け方は絶対にしない筈だ。


「そして第三の効果! 3種類のモンスターを破壊して発動していれば、回復状態の相手モンスターを全て破壊する!」


 現在早乙女さんの場に存在する、回復状態のモンスターは〈コズミックペガサス・マイナ〉のみ。

 その唯一のブロック要員も、藍の発動した魔法によって呆気なく破壊されてしまった。


「ありゃりゃ。破壊されちゃった……でも〜、らんらんセンパイ場ががら空きになってますよ★」

「えへへ〜、実はそうでもなかったりするんだな〜」


 そう言って笑みを浮かべている藍の後ろには、三つの紋様が繋がって出来た陣が浮かび上がる。

 紋様にはそれぞれ犬、鳥、猿が描かれていた。

 これこそ藍が狙っていた本命の効果だ。


「〈三臣奥義-桃獣の陣-〉最後の効果。アタシの墓地に〈ブイドッグ〉〈ブイバード〉〈ブイモンキー〉が揃っているなら、デッキから系統:《勝利》を持つモンスター1体を、召喚コストを無視して召喚できる!」

「ほえ〜……って、らんらん先輩? そのモンスターってどれもこのファイトで使ってないような……?」


 可愛らしく首を傾げながら、早乙女さんは疑問を口にしている。

 それは俺の隣にいるソラも同じだったようだ。


「たしかに。私達が見た範囲だと、厳密にはどのカードも使ってないですね。別のカードで墓地に送っておいた感じもないですし」


 そう言っているソラだが、そう思ってしまうのも無理はないと思う。

 基本的にサモンは「カード名に『〇〇』を含む〜」というテキストでない場合、カード名を指定する効果はそのカード名が完全一致している必要がある。

 だから今回の場合、似たようなカード名である〈ブイバード・勾玉改〉は〈ブイバード〉とは別物として扱われる。

 ……それが、通常であればの考え方だ。


「ソラ。大丈夫だから藍の場をよく見てみろ」


 俺がソラを促すと、ちょうど藍の背後に浮かび上がる紋様に3体のモンスターの姿が浮かび上がっていた。

 それはカード名が異なる筈であった3体のお供の新たな姿であった。


「〈剣改(ソードカスタム)〉〈鏡改〉〈勾玉改〉……この子達は元の姿と同じカード名として扱う効果がある!」


 自信満々にそう言い切る藍。

 そうだ、その効果によって3体のお供は条件達成に貢献ができる。

 あとは何を召喚するかだな。


(あの3体がデッキに入ってるって事は……やっぱりあのカードかな?)


 原作アニメでも二年生序盤で藍を支えた、新たな切り札。

 お供を従えてやってくるとなれば、日本人的にこれしかないだろ。

 ……といっても、この世界でそう簡単に新規SRを入手するのは難しいからな。

 出てきたとしてもスタートデッキ収録のちょっと地味なやつだろ。


「いっくよー! 醜き鬼を退治てくれよう、コレが(とう)代無敵の大・大・大将軍!」


 藍の背後に浮かんでいた紋様の中央に、大きな桃の幻影が浮かび上がる。

 あっ、この口上はデッキ収録の方じゃなくて、パック収録のSR収録の方だ。

 藍のやつ、いつの間に手に入れてたんだ。


「きて! 〈【伝説(でんせつ)桃獣(とうじゅう)】ドンブライガー〉!」


 桃の幻影を鋭く切り裂き、中から赤毛の獅子が戦場に姿を現す。

 大きな二振りの刀を背負ったこのモンスターが藍の新たな仲間。

 桃から生まれたドンブライガーだ。


〈【伝説桃獣】ドンブライガー〉P14000 ヒット3


 まさかのデッキからSRの召喚という展開に、観客席は大いに盛り上がっている。


「藍ちゃん、いつの間に新しいSRと手に入れたんでしょうね?」

「だな〜」


 いや本当にソラの言う通りでございます。

 販促期間にでも入ったのかな? 知らないけど。

 それはそうとして、藍のターンが進んでいく。

 まずはコストで破壊された〈ブイクレーン〉の【Vギア】で、藍はデッキからカードを1枚ドローする。

 そしたら次は〈ドンブライガー〉だ。


「続けて〈ドンブライガー〉の召喚時効果発動! アタシのデッキか墓地から、系統:《勝利》または《解放同盟》を持つモンスターを1体選んで召喚する! おいで〈ブイ・カチカチラビット〉!」


〈ブイ・カチカチラビット〉P2000 ヒット1


 効果によって、藍のデッキから小さな船を背負ったウサギ型モンスターが召喚される。

 意外だな。もっとステータスの高いモンスターでも呼ぶのかと思った。

 それにしても、なんであのカードを呼び出したのかはイマイチ分からないけど。


「魔法カード〈ビクトリードロー〉を発動」


 はいいつもの。

 そろそろインチキ染みた3ドローにも慣れてきたぞ。


「ライフを1点支払って、アームドカード〈ビクトリーセイバー〉を顕現!」


 藍:ライフ4→3


 これまたお馴染みの紅い刀身を持つ大剣。

 いつも違う事があるとすれば、今日はブイドラが不在な事くらいか。


(まぁ、今日は化神のみんなも文化祭を楽しんでるっぽいからな〜)


 藍に限らず、今日は俺も相棒なしで頑張る予定だ。

 無論、負ける気など毛頭ないぞ。


「アタシは〈ビクトリーセイバー〉を、〈【伝説桃獣】ドンブライガー〉に武装(アームド)!」


 獅子の背負っていた刀が消えて、代わりに紅い大剣を背負う。

 これまた普段はあまり見かけないブイドラ以外に武装するパターン。

 というかそれ武装というか背負ってるだけじゃねーか。


「ヒットの合計は4。コスモの残りライフは9だから……まだだいじょーぶ★」


 早乙女さーん、わかりやすいフラグ立てご苦労様です。

 そんなヤワなダメージで済むわけねーだろ。


「アタシの場にアームドが存在する事で……〈ドンブライガー〉の【(ダイナミック)スキル!】発動!」

「だいなみっく……なにそれ?」

「〈ドンブライガー〉はアタシの場にアームドが存在する限り、カード効果では選ばれない。さらに墓地に系統:《勝利》を持つモンスターが3種類以上存在するならヒットを+1する」


〈【伝説桃獣】ドンブライガー〉ヒット3→4


 アームドカードを参照するキーワード能力。

 その珍しさから観客席は分かりやすくザワついている。

 当たり前だろうな、アレはこれから数を増やしていく能力。

 二年生編でフィーチャーされる系統:《解放同盟》が主に使う能力だ。


「さらに〈ドンブライガー〉は墓地に存在するお供の【Dスキル!】を受け継ぐ」


 新たな3体のお供は皆【Dスキル!】を持っているので、その効果が〈ドンブライガー〉に与えられる。

 それによって〈ブイバード・勾玉改〉の効果でパワーを+6000し、〈ブイドッグ・剣改〉の効果で【貫通】を得る。


〈【伝説桃獣】ドンブライガー〉P14000→20000


(結構派手なサイズになったけど……本当に落ち着いた子だなぁ)


 藍と対峙している早乙女さんを見て、俺はついそう思ってしまう。

 ニコニコしてはいるが追い詰められた感じは出ていない。

 負ける可能性を考えていないのか、はたまたある種の大者なのか……イマイチよく分からない。


「アタックフェイズ! 〈ドンブライガー〉で攻撃!」


 藍が攻撃を仕掛けた。

 カード効果で選ばれない以上、早乙女さんはそれ以外の方法で防ぐ必要がある。

 あるいは潤沢に残っているライフで受けるか。


「うーん、ライフでうけまーす★」


 早乙女さんが選んだのは後者であった。

 そのままノーガードで〈ドンブライガー〉の鍵爪を受けて、ライフを削ってしまう。

 ……いや、背負った剣使えよ〈ドンブライガー〉。


 コスモ:ライフ9→5


「ライフは大きく削れましたけど、まだ【天罰】を使える範囲ですね」

「そのまま〈ブイ・カチカチラビット〉で攻撃しても、ライフを1点しか減らせない……あっ、そういう事か」


 そこまで言って俺はようやく気がついた。

 何故藍が〈ブイ・カチカチラビット〉を呼び出したのか。


「藍のやつ、頭いい事するなぁ」

「どういうことです?」

「〈ドンブライガー〉の召喚時効果は、破壊時にも発動するんだよ」


 そして〈ブイ・カチカチラビット〉の【Vギア】は自身を疲労させる事で、場のモンスターを1体破壊する効果。

 先に効果で選ばれない〈ドンブライガー〉で様子見の攻撃を仕掛けて、相手が手札に抱えている防御札に探りを入れる。

 これでアタックフェイズを強制終了させる効果が飛んでこなければ、残る防御の候補はモンスターを対象に取るもの。

 もしくはライフ回復効果による擬似防御くらいだ。

 あとは相手や自分の状況から最適解となるモンスターを呼び出せば良いというわけである。


「藍ちゃんって、ファイトに関してはすごく頭いいですよね」

「それは俺もすごく思う」


 俺の説明を聞いたソラの言葉に、つい頷いてしまう。

 これが仮にも原作主人公のパワーってやつなのか。

 でもある意味定番っちゃあ定番のシチュではあるな。


「アタシは〈ブイ・カチカチラビット〉の【Vギア】を発動! このカードを疲労させて場のモンスターを1体選んで破壊する。アタシは〈ドンブライガー〉を破壊!」


 そして予想通り、藍は〈ドンブライガー〉を破壊した。

 流石にこの世界じゃあ意図も伝わり難いだろうから、観客席からは混乱に近い騒めきの声が聞こえてくる。


「〈ドンブライガー〉は破壊された時にも仲間を呼べる。アタシはデッキから……〈ブイ・フルーツクラブ〉を召喚!」


 爆散した獅子のいた場所に、入れ替わりで登場したのはオレンジ色の蟹型モンスター。

 これはまた少し意外なモンスターを呼び出したな。

 だけど俺の中には、一つだけ藍の選んだ戦術に心当たりがあった。


〈ブイ・フルーツクラブ〉P3000 ヒット0


「きゃー! カニさん可愛い★」

「でしょー。でも可愛いだけじゃないよ! 〈ブイ・フルーツクラブ〉の召喚時効果発動。ライフを2点支払って、デッキから系統:《合戦》を持つ魔法カードを1枚選んで手札に加える。アタシが手札に加えるのは――〈ザ・ウスクエイク〉!」


 藍が手札に加えた魔法カードを見て、俺は確信を得た。

 となれば問題は、どうやって早乙女さんのライフを魔法カードの射程範囲に持ち込むかだ。

 いや、そもそも今の藍は〈ザ・ウスクエイク〉の発動条件を満たせているのかもある。


「へぇ〜魔法カードをサーチできるんですかぁ。でもぉ、ヒット0カニちゃんじゃあライフを削れませんよ」

「問題なーし。〈ブイ・フルーツクラブ〉の【Vギア】は、アタシの墓地に存在する系統:《合戦》を持つ魔法カード1種類につきパワーを+2000、ヒットを+1するんだ〜」


〈ブイ・フルーツクラブ〉P3000→9000 ヒット0→3


 オレンジ色の蟹型モンスターは、自身の効果で一気に強化される。

 強化されたステータスを見る限り、藍の墓地には既に該当するカードが3種類揃っているようだ。恐らく俺達が来るまえに墓地へ送られていたんだろう。

 なるほど、それなら〈ザ・ウスクエイク〉の発動条件は達成できる。


(できればもう一押し、何か保険となるカードがあれば理想なんだけど)


 さぁて、早乙女さんはこれを通してしまうのか否か。

 ちょいとお手並み拝見といこうか。


「うーん、流石にヒット3で攻撃されるのはダメかなーって……だ・か・ら、カニちゃんにはおねんねしてもらいまーす★」


 無邪気に遊ぶ子供のようにそう言うと、早乙女さんは手札から1枚のカードを発動した。


「コスモのお気に入り魔法〈エンジェリック・プライド〉はっつどー!」


 ……え?

 あまりにも想定外のカードを目にして、俺は思わず一瞬言葉を失ってしまった。


「え、〈エンジェリック・プライド〉!? マジで!? 持ってる人いたのか!?」

「えっ、ツルギくん? あれってそんなにレアなカードなんですか?」

「下手なSRよりずっとレアだと思う」


 あくまで俺にとってはだし、前の世界ではの話にはなるが。

 魔法カード〈エンジェリック・プライド〉。

 レアリティはレアだが、その異様な封入率の低さから並のSRを圧倒する高値でシングル販売されていた伝説(と言う名のカードゲーマーの怨嗟)を持つカード。

 ただでさえ出難いのに汎用性まで高いもんだから、1枚4000円でも安い時期があった代物だ。

 そして前の世界では散々カードを集めていた俺だが、終ぞこいつを1枚も入手できなかった。


「〈エンジェリック・プライド〉の効果♪ 自分に1点のダメージを与えて、そのあと自分のライフが相手より多かったら、相手モンスターを疲労させちゃいます★」


 コスモ:ライフ5→4


 これが汎用性の塊である所以。

 1点のライフダメージで相手モンスターを疲労させる攻防共に優れた効果。

 逆に自分のライフが相手より低ければ、デッキからカードを1枚ドローできる。

 おまけと言わんばかりに、墓地から発動できる便利効果までついた文字通りのトップレアだ。


「〈エンジェリック・プライド〉……名前からして聖天使のカードでしょうか?」

「まぁ一応そうだな。系統関連の効果テキストは無いんだけど」


 そう……これだけ効果を盛っている癖に、何故か系統による発動条件の類を一切持っていない。

 それが〈エンジェリック・プライド〉の凄まじいポイントでもある。


「カニちゃんおやすみ★」


 魔法効果で藍の〈ブイ・フルーツクラブ〉が疲労状態になってしまう。

 これで藍の場のモンスターは、もう攻撃できない。

 ……だが、俺と藍は気づいている。

 早乙女さんが発動した〈エンジェリック・プライド〉、それが彼女にとって却って仇になった事を。


「……ありがとう。あと1点どうしようかなって思ってたの」

「あれ? もしかしてコスモ、なにかしちゃった?」


 攻撃を封じられたにも関わらず、藍は口元に勝利を確信した笑みを浮かべている。

 流石に早乙女さんも、自分が何かとんでもないミステイクをしてしまったと察してしまったらしい。


「これがアタシの狙い! 魔法カード〈ザ・ウスクエイク〉を発動!」


 意気揚々と藍は1枚のカードを仮想モニターに投げ込む。

 するとファイトステージの上に、一つの臼が出現した。


「……お正月にみるやつ?」


 浮かんでいる臼を見上げながら、早乙女さんはキョトンとした様子でそう呟く。

 餅つきどころかお正月に見かける物体扱いなのか、現代っ子め。


「〈ザ・ウスクエイク〉は自分か相手に2点のダメージ与える魔法カード――」

「でもコスモのライフは残り4点ですよ★」

「――ただし。【Vギア】を達成した上で、自分の場か墓地に〈ブイ・フルーツクラブ〉が存在して、自分の墓地に〈スリップ・コンブ〉〈ボンバー・マロン〉〈スティング・ビー〉が揃っているなら……代わりに4点のダメージを相手に与える!」

「へぇ〜、4点も……えっ? えぇぇぇぇぇぇ!?」


 流石に驚きの声を上げる早乙女さん。

 たった1枚で4点ものダメージを与えてくる魔法カードは、サモンの中でも決して多いとは言えない。

 滅多に見かけないような効果ダメージを叩き込んでくる珍しい魔法カードも、自分が食らう側となっては叫びたくもなるだろう。


「いっくよー!」


 藍が浮かび上がった臼に向かってそう叫ぶと、場と墓地から臼に仲間のエネルギーが集まっていく。

 そして臼は瞬く間に巨大化して、ファイトステージを影で染め上げてきた。

 正確かつ具体的には、早乙女さんの立っている位置を中心とした辺りのみだが。


「うわぁ……おっきぃ……」


 どこか呑気な様子でそう呟く早乙女さん。

 彼女は一瞬だけ自身の手札に視線を向けると……少しだけ妖しい笑みを浮かべたような気がした。

 だけどそれで何か行動を起こすわけでもない、ただダメージが着弾するのを待つばかり。


「いっけぇぇぇ! ウスクエイクッ!」


 浮かび上がっていた臼は、藍の指示で真下へと落下していく。

 その時であった。

 早乙女さんは観客席にいる俺達の方へと向くと……まるで探し人を見つけたかのように、パァっと明るい表情を浮かべるのだった。

 だが今はタイミングが悪すぎる。

 早乙女さんが何か口を動かしたようにも見えたが、それをまともに確認できる瞬間が訪れる事なく、巨大臼は早乙女に落下するのだった。


 コスモ:ライフ4→0

 藍:WIN


「コスモちゃん、すごく善戦してましたね」

「入学前からこれだけやれるなら将来有望だと思うぞ。来年は後輩に恵まれそうだな、ソラ」

「はい! えへへ〜」


 来年度が相当楽しみなのか、ソラは珍しくふにゃ〜っとしたニヤけ顔になるのだった。

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