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俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜  作者: 鴨山 兄助
第十章:文化祭編

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第二百五十三話:#早乙女コスモです★

 (らん)と早乙女さんの試合が終わり、俺とソラはひとまず観客席を後にする。

 とはいえ見応えのある試合だったのは確かなようで、席から少し離れても歓声は聞こてきた。

 だが、それはそれとしてだ。


「仕事をしろ」

「はーい」


 俺は試合を終えた藍を即座に回収して会場外に連れ出し、軽くお説教するのであった。

 このまま藍を放置すればずっとファイトし続けるなんて、分かりきった展開でしかない。

 なんなら全挑戦者に対して全力で相手をするだろうから、不幸な事故を起こす可能性まである。


「文化祭中に相手していいのは不審者だけ。不審者ならいくらでもファイトで拘束と鎮圧をしてもよし!」

「でもアタシ明日はステージあるし、ちょっとだけでも」

「ダ・メ・だ」

「はぁい」


 分かりやすくショボンと項垂れる藍。

 後で九頭竜(くずりゅう)さんに「藍を見張るために一緒に行動してくれ」ってメッセージ送っておこう。


「あれだけ強い相手とファイトできたら満足だろ。しばらくファイトエリアから離れた場所を巡回しとけ」

「そうする〜。ツルギくんはソラちゃんと一緒に?」

「ん? まぁ……そうだな」


 いざ誰かに言語化されると途端に気恥ずかしくなってしまう。

 だから藍さん、その奇怪なニヤニヤ顔を向けるのやめてください。

 そういう意図はないつもりだからな!


「ら、藍ちゃん! それどういう感情の顔なんですか!?」

「いえいえお気になさらず〜。アタシは少し遠くを巡回してるから、あとはお若い二人で〜!」


 ニヤニヤというか、半分ギャグ顔というか。

 そんな筆舌に尽くし難い表情のまま、藍はバタバタと俺達の元を走り去っていくのだった。

 これには流石のソラも困惑顔である。


「藍ちゃん、すごい顔してましたね……ニヤニヤと茶化しと青春への憧れを足して割ったような顔」

「あれどうやってるんだろうな。真似したいとは全く思わないけど」


 とはいえ、この辺りは今のところ問題なさそうだ。

 長居する理由もないし、適当に次の場所へと移動しよう。

 俺がそう考えてソラに次の行き先を相談しようとした時であった。

 一人の女の子が俺達に話しかけてきた。


「あ〜、やっぱりツルギセンパイだぁ! #早乙女コスモ、この間振りです★」


 聞き覚えのある声、というかついさっきまで試合をしていた女の子。

 振り向けば案の定、早乙女コスモがそこに立っていた。


「センパイもコスモの試合見ていてくれたんですね。うぅ……もっと頑張って勝ちにいけば良かった、ぴえん」

「いやいや、中3で藍相手にあそこまで戦えたら上出来どころじゃないぞ。なぁソラ……ソラ?」


 無言で微笑むソラの背後に、何か凄まじい圧を感じる。

 あれ? なんかこれ前にも似たような事があった気がするぞ。

 そうだ、ソラとアイが初めて出会った時だ。


「ツルギくん……? 既に、後輩候補に手を?」

「違う違う違う! そういうわけじゃございません! ちょっとこの前偶然色々あって知り合っただけでございます!」


 だから早乙女さん、どうにか真実を、真実だけを説明してください。

 俺が早乙女さんにそう懇願しようとした瞬間であった。

 居たはずの場所に彼女の姿はなく、早乙女さんは既にソラの眼前にまで駆け寄っていた。


「きゃァァァァァァァァァ、赤翼(あかばね)センパイ! 本物だぁ! ちっちゃ、きゃわぁぁぁ! 髪綺麗、肌白っ!」


 完全に意識がソラに持って行かれている早乙女さん。

 そういえばこの前も一瞬言ってたな。最推しはソラだとかなんとか。

 というかソラは絶対にこういう状況に慣れていないだろ。

 見てくれよ早乙女さん、ソラのやつどう見ても情報処理しきれてないぞ。


「えっ? えっ? どういう状況ですか?」

「あー……その子、ソラが最推しなんだってさ」

「です★ 去年のJMSでも大活躍していた、ちっちゃ可愛い赤翼センパイに憧れて〜、コスモも思い切って【聖天使】デッキ組んで優勝しちゃいました★」

「へぇ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 ソラ大仰天。

 そりゃあそうなるだろうな。

 カード集めの難易度も相まって、この世界で誰かに憧れて同系統のデッキを組む人って多くないし。

 その憧れの対象がプロ選手ならまだしも、一般学生なのはかなり珍しいぞ。

 だからこんな展開、普通は想像もできないだろう。


「えっ、わ、わた、私ですか!? なにかの間違いじゃ」

「間違いじゃないでーす♪ 赤翼センパイに憧れて、聖徳寺学園が第一志望です★」


 ソラの手を掴んで、お目々キラキラさせながら語る早乙女さん。

 憧れが止まらないといった様子だけど、その辺にしてあげて欲しい。

 その憧れの先輩がキャパシティオーバー起こして、口から「私が憧れ!?」って紙を持った魂が抜け出てるから。


「ツツツツツツツルギくんどうしまままままままま」

「落ち着け。先輩の威厳が跡形もなくなってるぞ」

「だだだだって、責任重大ですよぉ!」


 そう言いながらソラは瞬時に俺の後ろに隠れて、ブルブルと震えている。

 今エオストーレがいなくて良かった。

 いたら絶対に面倒な事になってただろうから、本当に良かった。


「きゃわいー! 文化祭で会えるって聞いてたけど、こんなにすぐ赤翼センパイに会えるなんて〜……やっぱりコスモ、運がいいかも★」


 どこか小悪魔チックな仕草をしているが、早乙女さんがソラと出会えた事を喜んでいるのは分かる。

 当のソラはこの状態だけど、来年には仲良くなれている事を祈っておこう。


「そ・れ・に〜、ツルギセンパイにもまた会えたし★」

「……えっ、俺?」

「この前も言ったじゃないですか〜、推しは二人いるって」


 そういえば、そんな事も言ってたな。

 推される事に戸惑うあたり、俺もソラの事をとやかく言えないらしい。


「ねぇセンパイ。またお隣立候補してもいいですか?」


 小悪魔、もしくは妖艶とでも表現すれば良いのだろうか。

 そんな表情を浮かべて、グイッと俺に近寄ってくる早乙女さん。

 女の子らしい雰囲気に加えて、この前の出来事が俺の脳裏に蘇ってしまう。


「おと……なり……? ツルギくん……?」

「危ない男の人達から助けてくれたのは推し。そんな推しとお付き合いするなんて……ロマンがあると思いませんか?」


 やべぇ、早乙女さん結構グイグイくるタイプの子だ。

 そのシチュにロマンがあるか否かについては、あると思いますが……当事者になるかどうかはまた別とさせて頂きたく存じます。

 あとお願いなので俺の背後にいる君の最推しさんに意識を向けてください。

 振り返らなくても分かる、明らかに何かよくないプレッシャーが放たれてるんです。


「ねー、センパイ★」

「ツルギくん? お隣立候補って、なんの事ですか?」


 はいそこの女子二名に告ぐ。男子高校生を前後から挟むのをやめなさい。

 というか二人とも距離が近すぎて当たってはイケナイものが当たってます!

 前門の霊峰、後門の平原……とはいえ女子特有の柔らかさがございます。耐えてくれ俺の色々。


「ツルギセンパイ彼女いないそーなんで、コスモが立候補しちゃおっかなーって★」


 早乙女さん、このタイミングでそれを言わないで。

 ソラが何故か俺の背中を凄まじいパワーで握り始めているから。

 背中の肉がメキメキいってんだよ、人体が出していい音じゃないんだよ。


「大変だと思いますよ……ツルギくんの彼女になったら、色々と……」

「おぉ〜流石赤翼センパイ、説得力のある言葉……なんか説得力がありすぎるけど、やっぱり経験者? 実は元カノ――」

「まだなのに元とかつけないでください!」


 背後から焦ったような声を出してくるソラ。

 というか早乙女さん、この前も俺とソラの関係を勘違いしてなかったか?


「そーなんですね。じゃあツルギセンパイ……せっかくエンカウントできたんだし〜、コスモと一緒に文化祭回りませんか?」

「……え?」


 何故に?


「やっぱり入学前に学園のことをよく知っておきたいですし〜、コスモもっと推しの話しとか聞きたいです★」


 あっ、やばい。

 滅茶苦茶お目々キラキラというか、妹が兄に甘えてくるようなそういう目線と意思を向けてきている。

 というかここで断っても巡回という都合上、絶対どこかで見つかるし、多分早乙女って見つけ次第ついて来そうなんだよな。

 なんとなく、そういうタイプの気配がする。


(……いっそどこかのタイミングで智代ちゃんに押し付けるか)


 どの道今は早乙女さんの同行を回避できそうにない。

 こっそりソラに頼んで智代ちゃん達を連れてきてもらおうかな。


「ねぇ、センパイ……★」

「コスモちゃん、それなら私もお話しに付き合いますよ。せっかく文化祭に来てくれたんですから……ツルギくんの一番弟子である私とも、お話し、しましょうよ……」


 静かに、だが確実に圧のある雰囲気を放ちつつ、ソラは俺の右腕に抱きついてくる。

 あっ、これ何か頼める感じじゃねーや。

 選択肢を誤れば俺の命が危ない気がする。


「やったー! 推し二人と一緒に文化祭だー★」


 心底嬉しそうにそう言うと……早乙女さんは俺の左腕に抱きついてきた。

 待て待て待て、そこまでソラの真似はせんでいい!

 二人とも少し絵面的なものを考えてくれ。


「へぇ……それじゃあ……ツルギくん?」

「えへへ〜、ツルギセンパイ★」


「「いきましょうか」」


 どうやら、ここから入れる保険は存在しないらしい。

 言葉にせずとも、絶対に離さないという意思を感じる乙女のホールド二人分。

 俺はもう、ただ弱々しく「はい」と答えるしかできなかった。

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