希望からの暗転
「それでー……こんな所で何やってたのかなぁ?」
少しモジモジしながら、クリストフがレイブンに話しかける。
「読心術から身を守る術を教えてました……全然出来てませんが。これからドラゴンの性質や能力を測るところですね」
レイブンはそう答えると、深く息を吸いゆっくりと息を吐いた。
出来ないのは……先生が悪い気もする。
キッと此方に振り返るレイブン。
「……」
無言の重圧がのしかかる。
読心術は本当に厄介だ。
自分でコントロール出来ないのが何より辛い。
「ふぉっふぉっふぉっ。では、この後は儂が変わろうかね。レイブン殿の指導が不満そうじゃからのぉ」
小さな瞳をキラキラ輝かせながら、イタズラそうにウインクをしてきた。
この爺ちゃんはさっきレイブンから凄い人と聞いている。
さっき見せてくれた大人の対応からしても、レイブンみたいにスパルタではないような気がする。
よし、大賛成。
肯定の意思表示として、満面の笑みをドルフに返す。
「あ、じゃあ俺もー」
側で大人しく聞いていたアシオンが、急に挙手して名乗り出てきた。
「え? アシオンも?」
瞬間で笑顔が引きつる。
今までスムーズに進んできたのに、これから何が起こるのか知らないが、この人を入れると色々とややこしくなりそうな気がしてならない。
ざらつく感情に心臓を舐められた気分だ。
「えー、だってずっと俺見てるだけだし。つまんないもん。俺も入れてよ」
アシオンは唇を可愛く尖らせて、膨れている。
何を言ってるんだ、この人は。
呆れて声も出ない。
「じゃあ……僕も一緒に入ろうかなぁー。アシオンさんじゃあ、壊すだけになりそうだしー」
小さく手を挙げて、ゆったりとクリストフが会話に入ってきた。
「お~、どうせなら人数が多い方が楽しいし。相手はちっちゃいけどドラゴンだしさ。じゃ、共闘な」
アシオンはそう言うと、クリストフの頭をグリグリと撫でた。
なんだか大事になってきた。
私を置いて全てがおかしな方向へ進んでいる気がしてならない。
ドラゴンの性質や能力をみるって言ってたような気がするけど……会話の言葉から察するに、狩られる。
そんなイヤな胸騒ぎがする。
もしかして……私一人で七賢の三人に対して手合わせしなければならないんじゃないか……。
これは、レイブンよりタチが悪い。
生唾を飲み込んで、ゆっくりとレイブンへと視線を移す。
私に注ぐ目線は変わらない。
変わらず腕も組んだままだ。
少し違うのは此方を見下しながら、片方の眉を少し上げ黒い笑みを浮かべている点だろうか。
ホラ、やっぱり。
嫌な予感は続いている。
けして事態は好転していないんだと思った。




