読心術
「今後のドラゴニアの方針としては、さやを王に祀り私と七賢でしっかりとサポートする……それでいくつもりだ。これから続々と他国から使者やら四竜がくると思うが、それで異存はないな?」
「もちろんです」
「ないよ~」
ディーンの確認に同意するレイブンとアシオン。
「それで……いつ任命式があるの?」
重要なところだ。
「各国に散らばった七賢が戻り次第、行う予定だ。もうそろそろ戻ってくる筈なのだが……」
「ディストンとかこっから一番遠いしね~、出身のマルティネスが大変だよね。俺みたいに途中で投げ出してしまえば、早く戻れるのに」
アシオンが肩を竦めて言う。
「マルティネスは貴方みたいにいい加減じゃないんですよ、アシオン。何事にも真正面から取り組む地道な方ですから」
レイブンは、腕を組んで少し怒ったようにアシオンに目をやる。
「七賢が戻ってくるまでは……どうするの?」
七賢が揃うと厄介かな……。
レイブンがくるりと私に身体を向ける。
「さやさん。貴方にはいつかお伝えしようかと常々思っていたのですが、せっかくの機会ですので言わせていただきますね。バカ正直なのは結構ですが、相手に心を読ませすぎです」
「え……」
「貴方と出会ってから今までずっと読心術で心を読ませていただいておりましたが、あまりにも幼稚でオープンすぎて、だだ漏れの読み放題でしたよ」
こ、この人、人の心の中が読めるんだ……。
だから今まで……。
自分の中で点と点が一本の線に繋がっていく。
それと同時に、顔から火が出そうな程恥ずかしかった。
穴があったら入りたい。
「そんなものありませんよ」
ニコニコと笑顔で返される。
「っ!!見ないでよ!」
咄嗟に頭を庇う。
「見たくて見ているわけではなく、性分で見えてしまうので、今すぐしまう努力をして下さい」
「できませんー!」
何て無茶を言ってるんだ、この人は。
「先代は何なくこなしていましたよ?」
「先代とは出来が違うんですー」
今のは、自分で言って恥ずかしかった。
「読心術を防ぐ事ぐらい楽にこなしていただかないと、ザリを相手にした時に、手の平でいいように転がされますよ。ザリでは高等の読心術の使い手が多いですからね」
鼻で笑われた。
なんだ、自慢か?
自分できます的な?
レイブンはちょっと恥という感情を持った方がいいんじゃないか?
「……」
ドッと黒いオーラが範囲を増してきた。
「ディーン、レイブンが怖い!」
ひしっとディーンの腕に掴まる。
バカめ。
ディーンの腕の中にいる私は、無敵だ。
ディーンには強く出られない事ぐらい、私にも分かるわ。
心の中で舌を出してやった。
周りの空気が変わるのを肌で感じる。
「ディーンさん、少しの間さやさんをお借りしてもいいですか?」
悪の手がすぐ背中に迫ってくる気配がした。
「ダメダメダメ! ダメに決まってる! ねっ? ディーンは私といるんだよね?」
ディーンの腕に必死にしがみついて、代わりに私が答える。
ここで渡されたら、死期が早まる。
いや、確実に殺られるだろう。
「……」
突然の事にディーンは動揺しているようだ。
「私は、断固ココから動きません。命の危険がある所なんかに王は動きませんー」
王の立場を使うなら、今しかない。
「ディーンさん、私がさやさんに何か危害を加えるとでも?」
「……いや、それは……」
口籠るディーン。
「加える! 貴方は加えます!」
「仮にも七賢ですよ? 王を護る立場にある、その七賢が王に危害を加える訳がないじゃないですか」
相手は急に笑顔を見せてきた。
ディーン、それは信じてはダメだ。
それは悪の微笑み。
大事な王が死ぬぞ。
「読心術だけではありません。王のもつ属性や能力も、正確に調べないといけないのです。これは王の為です」
でた!今度は正当そうな理由を挙げてきたぞ。
信じてはダメ!
「……」
私はもうディーンを泣きそうな目で必死に見つめる事しか出来なかった。
きっとディーンなら、分かってくれる。
何故ならドラゴン種だから!
そして私の守り手だから!
私はディーンを信じる!!
腕をにしがみつく力をギュッと込める。
「…………王の為、なら仕方ない。だが、あまり無茶をして王を傷つけぬようにな」
「ディーーーーン!!!!」
あまりのショックで力が抜けたところを、背後から軽々と抱えられた。
「いらっしゃい、さやさん」
すぐ右上から聞こえる声には、ドス重い響きがあり私は恐怖で首が動かせなかった。
神様、本当に出鱈目しすぎです。
私、死にます。




