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Lv.1の王様  作者: 小鳥遊 雨音
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この世界と歴史

ディーンに抱き抱えられながら、城の西側の部屋の一室に入る。

中には20人はゆうに座れる長い机と椅子が配置されており、机には何か文字や図が書かれた紙がたくさん広げられていた。

壁にはこの世界の地図らしきものや、何かの表が貼り出されている。


うーん、さっそく詰まりそうだ。

苦手分野な気がする。

難しい話は、よく分からないから嫌いだ。

昔父親に、よくそれで怒られた。


「分からないからと逃げるな、分かろうと努力しろ……」


聞こえはいいが、無理なものは無理だと思う。

難しい話だけでなく、勉強だって嫌なものは嫌だし、出来ないものはいつまで経ってもできない。

吐き気が出るような正論だ。



「……を、説明する」

ハッと、ディーンの話を聞きそびれた事に気づく。

意識が飛んでいた。


少し集中しようと、しっかりとディーンが指をさした地図を目で追う。


「この北東に位置するのが、我らがいるドラゴニア国。ドラゴニアはこの世界の中で守りの要と言ってもよい。国を守護するドラゴン種が産まれ、各所へ派遣される為だ。ちなみに、我が国の主な生産は先代の炎が関わったガラス細工や鉄鋼加工である。それから道なりに北西部に向かうと、不変の森が続く。街から南に下ると、良き隣国であるティタに続く道だ」


ティタ以降の国については、頭がグチャグチャになりそうだったから、正直あまり覚えていない。


ただ、ザリという砂漠の国がレイブンの祖国でありティタの西に隣接している事、天空に浮かぶ有翼人種の国のサリューンがアシオンの祖国というのは覚えた。


有翼人種とは、翼を持つ人々の事で天使の生まれ変わりだと自ら信じているらしい。

そして、信じられない事に空を飛べない生き物を下に見ているとの事だった。

天使は見下さないのではないか……と思ったが、そんな疑問は無駄だ。

そういう信念もあるのかもしれない。

宗教的な所なんだろうと、ぐっと飲み込む事に徹した。

それよりビックリしたのは、サリューン出身のアシオンにも翼がちゃんとある事だ。

いつも背中に折りたたんでいるらしい。

見せてと言ったが「やだ、恥ずかしい……」とふざけて見せてくれなかった。

確かに黙っているアシオンの整った顔立ちだけを見ると、天使に見えなくもないが……中身が伴っていないと思う。

私のような幼気な女の子こそ、天使で然るべき。

神の采配とはいつも出鱈目だ。



ザリの北側は、クオンという山地でできた国がありホビットやドワーフが暮らしているらしい。


クオンの東はミライアというマーメイドが主な住人の国が、その南西にはローワンというハイエルフが治める国が、さらにその南には炎のドラゴンが見つかったディストンという国があるとざっくり聞いた。

指を折って数えると、ドラゴニア以外に七つの国で構成されていた。

この国々から一人ずつ派遣された七賢は、前にも聞いたが先代の王が置いたという。


「どうして……先代は七賢を置いたの?」

ふとした疑問を投げかける。


「先代は、何事も争いを生まないよう動かれる方だった……」

ディーンは少し優しい目でこちらを見やる。


「それで、ドラゴン種だけの常識や意見だけで物事を推し進める事は後々火種を生みかねぬと、他国の者を引き入れる事を考慮されたのだ」

口角が柔らかく上がる。


「そっか……優しい人だったんだね」

私は先代のような王様になれるんだろうか……いや、到底なれそうもないな。


「……それから、ドラゴンを守りの要として他国に派遣したのも先代からだ。それまでは四竜は自由に暮らしておった。不変の森から出ないもの、飛び回っているもの……本当に様々だったと聞く」

ディーンは指で地図を示してみせる。


「王が先代に変わる直前に魔族との大戦があった。七ヶ国で立ち向かう為に共同戦線を張っていて、その際にドラゴンが魔族との戦いの主戦力となった経緯があり、王が先代に変わって戦いが終結した時にドラゴンを守りの要として、配置する事にしたのだ」


「ここが水のドラゴンの守護」

ミライアの国をなぞる。


「ここが風のドラゴンの守護」

ローワンの国をなぞる。


「この間見つかった、火のドラゴンはディストン」

ディストンの国をなぞる。


「最古の竜である土のドラゴンは、二国」

クオンとその南に位置するザリを合わせてなぞる。


「最後に、さやは……ドラゴニアとティタを守護してもらう事になる」

あ、私も入るんだ……。

そっか……そうだよね……。

どっちかというと、私は守護される方だと思うんだけども。


「魔族って、ここには地図には何も書いてないけど……いろんな所にいるの?」

名前的に悪魔みたいな種族だろうか?

悪魔ならレイブンみたいに、あちこちに潜伏しているのかもしれない……けど、七ヶ国と大戦する程の戦力があるなら、国があってもおかしくないと思った。


抱き抱えてくれているディーンの背後から、黒いオーラが漂う気配を感じた。

空気が動き、布が擦れた音がしたと思うとすぐ隣に青筋をたてたレイブンが立っていた。

「魔族は、ティタからザリ、ディストンの南に接する形で帝国を構えています。大戦後、帝国から出てこれないようティタからディストンまで隣接している部分には聖線が引かれています。天空には黒い雲が溜まり上空から様子は伺えませんが、七ヶ国に敵対できるだけの広さと人口を兼ね備えていると思われます」

地図の下部分を指で丸く指し示す。



「そういう事だ。帝国の全貌は見えぬ。大戦も理由が分からぬまま始まったのだ。七ヶ国共同戦線で話した際は、どの国にも魔族の大儀が見出されず、帝国の愚行として処理されておる」


「ふーん……」

何も語らず大戦を起こした魔族か……。

怖いな。


「それで、大戦は勝ったんだよね?」

結果が気になって聞いてみた。


「……それが何とも……、勝ったのか負けたのか……よく分からないのが実の所なのだ」

困ったように首を振る。


「……え?」

よく分からない?


「一応、勝ったって事になってるんだけどね。

サリューンでは……」

アシオンが机に足を乗せながら椅子に座ってこっちを見ている。


「勝ったんだって……だから、魔族は帝国から外に出れないらしいよ」

欠伸を噛み殺しながら、面倒くさそうに話すアシオン。


「大戦もある時期を境に唐突に終わったと聞いております」

レイブンが情報を追加する。


つまり、整理すると……魔族との大戦は理由が分からないまま始まり、七ヶ国で共同戦線を引いて戦ったが不意に終わったと。

それで勝ち負けは微妙なところ……そんなものか。


七ヶ国の人達でさえ事情が掴めていないのだから、世界が違う私に理解できるわけもない。

このまま情報を飲み込むしかないのだと思った。

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