願いという名の脅迫
「それで……さっそくなのですが、さや様」
また私に跪いて、ディーンさんが話し出した。
この距離は、苦手だ。
さっきの事がトラウマになりかけている。
自分の顔の筋肉が引きつったのが分かった。
「私共ドラゴニアの国の民は、さや様に王になっていただきたいと切に願っております」
淀みのない瞳を真っ直ぐこちらに向けて、絶妙な声量で言われる。
「…………は?」
かろうじて出た言葉が、これだった。
いや、私はこの世界の人間ではないし。
偉くもないし、何もかもが普通以下の女の子なので……そもそも王の器ではない。
更に追い討ちをかけるように、話しだす。
「さや様がドラゴニアで覚醒された事、其れこそがこの国の王の証。皆そう思っております!」
ディーンさんの光を讃えた瞳が、私の怯えた目を捕らえる。
「無理無理無理無理っ! ごめんなさい。無理です」
これ以上重荷が増えてどうするんだ。
自分自身の事ですら持て余しているのに、他人を……いや、それ以上の国を治めるとか到底不可能だ。
自分には荷が重すぎて潰れてしまう。
「え~、俺はさやちゃんが王様がいいけど? 小さくて可愛いから、からかい甲斐も充分だし」
アシオンは、いつの間にやらベッドに寝そべりながら此方を楽しそうに見ている。
アシオン、今のアシストには悪意が垣間見えるぞ。
「私、自分で手一杯だし。まだ15歳だし。そもそも、ここの国とか他の国の事も何も知らないし。王の器もないし」
思いつく限り、羅列する。
私の言葉を聞くとディーンさんはガックリと肩を落とした。
「…………そうですか」
そう言うと、手が剣に再びかかる。
「っ!! ちょっ! 何してるんです!」
手をまた押さえる。
「止めないで下さい。私は……王を見つけておきながら、何も出来ぬ無力な者なのです。それならばこの命をもって償……」
「分かった! 分かった! 分・か・り・ま・し・た!」
もうヤケクソだ。
「やります、やります、やらせていただきます。だから、命は要りません」
一息で言い切った。
今ので、血圧がグンと上がった気がする。
この人も目の前で自害とか、私にどんな闇を植え付けるつもりなのか……。
「さ、さや様っ!!」
ディーンさんに両手を握り締められた。
否応なしに、距離がグンと近くなる。
近い近い。
「……」
もう何も言えない。
自分で地雷を踏みにいった気しかしない。
まぁ、いざとなれば王様であろうと何だろうと元の世界に帰らせてもらう。
どんな手段を投じても、だ。
……というか、初っ端からこんな逃げ腰の王様でいいんだろうか……。
「足りない知識などは、今からいくらでも学べば良いのです。私がついておりますから、安心してしっかり学んで下さい。ね、さや様」
レイブンの微笑が私の行く末を暗示させた。
やっぱり安易な肯定はするべきではなかったような気がする。
……誰かこの状態から切実に助けて欲しい。




