決着
静かなスライムの中で、もうなす術がなかった。
きっとこのままスライムの一部として吸収されてしまうんだろう。
諦めと疲労を宥めるように、スライムが冷たく包みこんでいる。
密着している感覚はひどく緩慢に感じた。
コレデイイノ……。
……私はよくやったと思う。
ホントニ……?
頑張ったら、結果がどうなっても……。
よくないっ!!
全然、駄目だ!
私が負けたら、街は、人々はどうなる!
意地でもう一度目をしっかりと開けた。
私はやるんだ!
今度こそ!
そう思って剣の柄を強く掴む。
ーー!!
刹那、音もなく大剣が光った。
剣先から刀身を伝うように此方に光が流れ、鍔、柄で留まることなく、全身が包まれる。
スライムで冷え切った身体が、暖かさを取り戻していく。
……動ける!!
耳元で何かがパリッと弾ける音がする。
根拠はないが、負ける気がしない。
芯を睨みつけると壊れろと強く思った。
私の……私の好きな街に何すんのよっ!!!
太さの異なる閃光が身体から溢れると、真っ直ぐ芯を捉え、貫いた。
パンッーーーー!!!
不規則に蠢いていた芯が、乾いた音を立てて粉々に破裂する。
ゲル状の細胞は意思を失い、シュウシュウと音を立てて重力に逆らえず下に流れていった。
唐突にスライムの中から解放される。
放り出された身体はバランスを失い、平衡感覚すら危うい。
地面に伏せた身体を、かろうじて腕を支えに起こした。
むせ混みながら、胸いっぱいに新鮮な空気を吸い入れる。
身体中どこも水のようなスライムで塗れていた。
辺りは立ち昇る蒸気で前が見えない。
呼吸が楽になると、安堵と疲労がどっと押し寄せてくる。
勝った。
ついに勝てた。
……というか、何とか……か。
地面に仰向けに寝転がった。
直接差し込む光が暖かく頬を撫でる。
やりきった自分を褒めたくて、両腕を高く掲げた。
スライムで霞む視界には、自分の手が異様に小さく見える。
目に入ったゲルを取り除こうと手首で瞼を擦る。硬く、ヤスリのようなもので削られる感覚がした。
いつもの自分の腕ではない。そう、思った。
恐る恐る、手を顔の近くまで持ってくる。
ハッキリと視界に入ってきたのは、赤子のようなサイズの、ビッシリと白い鱗で覆われている鋭い爪の生えた手だった。
ゆっくりと手の平から手の甲へと手首を返す。
間違いない。
自分の意思で動いている。
「うあぁぁぁぁっっっ!!!!!」
私は、そこから意識を失った。




