スライムの内側より
炎の大きさを調整する。
上下左右に太くしてみた。
表面に出来た凹みぐらいではすぐに再生してしまったが、幸いなことに、ある程度深くなるとスライムの細胞が回復してくるには時間がかかるようだった。
これで芯まで進んで、剣か炎でやってしまえば勝てる。
そう踏んだ。
大剣を持つ右手に力が入る。
もう後には引けない。
最後の大仕事と思ってやるしかない。
生唾を飲み込むと、へっぴり腰のままスライムに空いた空洞へ進んで行く。
三歩ほど進んだ所で、背後から入る空気が止まった気配がして振り返る。
入り口として空いていた組織が再生しており、
これは時間をかけるとマズイ。
「……!!!」
大剣が重くてどうしようもないが、引きずりながら走った。
ーーボタっ!
あともう少しで球体に着くという所で、腕に何かが落ちてくる。
「うわっ!」
何かと思ってよく見ると、スライムの破片だった。
腕輪の上でウヨウヨと意思を持っているように動いている。
嫌な予感がすると同時に、腕輪がカランっと音を立てて下に落ちた。
喰われた。
「!!!!」
私のイフリートさんがっ!!
そう思った時には、左手から伸びていた炎も消えていた。
もう芯はすぐ傍に見えている。
剣を刺すしか、帰れる道はない。
芯に向かって走りながら大剣を両手で持って、振り下ろそうとする。
左右のスライムの壁が私を飲み込んだのは、振り下ろしたのと同時だった。
……手ごたえが無い。
息を止めて、目を開けるが震える視界の中、大剣は芯にあと数センチの所で届いていない。
スライムに包まれた今、聞こえるのは自分の鼓動だけになった。
服や髪先からシュウっと溶けている感覚がする。
マズイ、息ももたない。
あと、一歩!
地面を進むように、足で蹴り上げるが数センチも進まず宙に浮いたような状態になってしまった。
空気が口から漏れ出ていく。
あと少し、あと少し!
それでも進もうと、スライムで重い足を前に出す。
肺に残った空気が押し出される感覚がする。
もう少し!
歯を食いしばり、震える腕で切先を真っ直ぐ芯へと伸ばす。
しかし、押し出した剣は変わらず芯には届かなかった。
またこのまま……。
力が抜けて、柄から手が離れる。
元々無茶だったんだと、静かなスライムの中で独り思った。




