眠る街
城の入り口をくぐる。
動く人影はなく、風が吹き渡る音が聞こえてきそうだ。
街はまだ薄暗く、今も眠りについている。
昨日あれだけ人混みがあった大通りも、人っ子一人いなかった。
祭りの準備がほぼ出来ている様子がより切なく感じる。
もうこの街に来る事はないんだなぁと、しんみりと感じる。
いや、いいんだ。
これが正しい事なのはよく分かっている。
捻じ曲げてしまったのは『私』なのだから。
元に戻すのも『私』でなければならない。
マントのフードを握り締めて深く被ると、大通りを街の入り口へ向かって歩き出した。
歩いている途中、建物の陰から陽が顔を出し始めた。
これから街全体を照らしていって、またいつもの街の賑わいが始まるのだろう。
差し込む光が眩しくて、目を細める。
こちらへくるドラゴンは、どんな人なんだろう……。
新しい王様が他国から来たら、今よりもっといい国になるだろうか……。
ディーンは有能な補佐になるんだろうな。
あの子供達はまた噴水の所で遊ぶんだろうか。
新しい王様がきたら、ごっこ遊びも変わるんだろうなと思って、少し笑ってしまった。
この世界では、私はただの異質。
たった数日でこの街が少し好きになりかけていたんだと、自分を振り返って思う。
今まで恥ずかしい事ばかりしてきたけれど、いつもこの街は私に優しかったんだ。
ようやく街の入り口にたどり着いた。
背後の城を、街を振り返る。
「ありがとうございました」
一礼して、小さな声ではっきり言った。
それから、くるりと背を向けて森へ歩き始める。




