部屋にて
部屋に戻ってからは、もう嬉しくて嬉しくて靴を脱いでベッドで飛び跳ねたり、枕に顔を埋めて大声を出したり、携帯の音楽を聴いたりして、食事がくるまでの間自分の時間を堪能した。
こうなった私は誰にも止められない。
しばらくすると、ドアをノックする音が聞こえ、静かにドラゴンのメイドさんが食事を運んで来てくれた。
テーブルに食事を並べると、そのまま部屋にあるお風呂の支度をしてくれるようだ。
テーブルに並べられた夕食は……美味しそうな白い煮込み料理と、朝食べたパン、赤い飲み物、サラダとデザートらしきものもある。
折角だし、今回は全て食べてみる事にする。
トロミがある煮込み料理は肉や野菜がゴロゴロ入っていてシチューみたいだ。
パンは変わらず香ばしくて美味しいし、サラダは葉物と……これは何だろう? 赤いスライスされた丸い……カブ?
フォークで刺して口に入れてみる。
「うっ!」
独特の香りが広がる。
赤いのに、苦手な春菊みたいな匂いがした。
これは……ダメだ。
口に入れた分は息を止めて飲み込んだ。
これはやめておこう。
赤いスライスはフォークで端に避けて置く。
口直しとして、赤い飲み物を一口含む。
「がっ!!」
ほんのりアルコールがあがってきた。胃が熱くなるのが分かる。
これは飲んではいけない物ではないか……。
少なくとも私にはまだ早い。
勿体無いが、残りは流してピッチャーで置かれている水を飲む事にした。
こうして赤いスライス以外、ほとんど全て食べ切った。
後は、デザートだけだ。
デザートは何かのパイのようだ。
黄色い何かが編みこまれた生地から見える。
よし、赤くはない。
フォークで口に運ぶと、甘い蜜が口の中に広がった。
蜜芋みたいな甘さで、癖もなくて美味しい。
ここでの食事はなかなかスリリングで楽しい、そう思った。
食事に満足していると、ドラゴンメイドさんが「入浴の支度が終わりました。あと……こちらはディーン様からになります」と林檎ぐらいの大きさの布袋をテーブルに置いて、一礼して出て行った。
なんだろう。
袋を手に取り、紐を緩める。
そこには金貨、銀貨がみっちりと入っていた。
「凄っ!!」
たぶんこれがこの国の通貨だと思う……、たぶん……分からないけど。
準備にどれだけ必要か分からないけど、ありがたくいただく事にする。
店で見た香炉は買えるだろうか……。
さて……疲れているし、お腹もいっぱいだし、さっさと入浴して明日に備えて寝よう。
明日は街で色々出て行く準備をする予定だ。
久しぶりに明日が待ち遠しくなった。




