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Lv.1の王様  作者: 小鳥遊 雨音
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街にて

んー、疲れた。

凝り固まった身体を解放するように、両手を上げて大きく伸びをする。

気を失ってから本当によく寝てしまったようで、外は日が高くなっている。



私は今城の入り口の階段から街を眺めていた。

城を抜けると、噴水が見え広場を中心に城下町が放射状に広がっている。

噴水前では子供数人が賑やかに何かやっているのが見えた。

その他に目を引くのはまっすぐ伸びる大通りで、相変わらず人混みが凄い。

「大通りでは色々な物が揃いますよ。食べ物から着る物、ありとあらゆる物が置いてあります……人混みも多いですが……」

レイブンは私の視線の先を見て教えてくれた。



「街の左右の端には大きい兵舎があります。これは、街の守備の為ですね。それから……右手の方角には……」



なんか、また長そうな説明が始まった。

もういいだろう。

レイブンの説明をさも聞いているかのように半笑いで頷きながら、階段を降りて噴水広場に赴く。

彼が善意で教えてくれているのに、それを遮る勇気はなかった。

……まぁ、また遮ったらどうなるか分からないというのもあったが。



噴水の水は澄んでおり、絶え間なく上から降り注いでいる。

子供たちは、何やらごっこ遊びをしているようだ。

噴水前には、二人のフードを被った子がいた。

一人は噴水の真ん前に座っており、一人は噴水の淵に立っている。


純粋に何のごっこ遊びが始まっているのか、気になった。

レイブンの説明を聞き流しながら、目の前のごっこ遊びに集中する。


噴水から少し離れた所から、赤髪の男の子が泣きながら二人の黒髪の女の子に連れられてきた。

噴水前まで辿り着くと、赤髪の男の子は何やら木の棒を女の子から嫌々受け取る。

それを噴水前で座っている男の子に渡すと、側で立っていた男の子が「王様だー!!」と言っていた。

周りで見ていた子供たちはキャーキャー喚いて喜んでいる。



…………まて。

コレは……まさか……。

昨日の……?



木の棒は剣……? 箱はあのフードの座っている子?

性別は逆だが、ちゃんとトマスまで再現されているし……。

その後、流れを見ていると、赤髪の男の子が街の人の足元を抜けて逃げ、腕を引っ張られながらお城に連れていかれる所まで忠実に再現されていた。


子供って思っていた以上に覚えているんだと思うと同時に、顔から火が出そうになった。

可愛いかったので声をかけようと思ったが、こんな状態では何も話せなくなりそうだったので、そそくさと通り過ぎようと思う。



「これはこれは、大変興味深いですね……」

そう言って立ち止まったのは……レイブンだ。

さっきまで説明口調で細かく街を説明してくれていた筈だったが、見るものは見ていたのだろう。


「何でこんな事に……」

まだ顔の火照りがとれず耳が熱い。


「それだけ王とはこの街にとって掛け替えのない存在なのですよ。良かったじゃないですか、さっそく受け入れられていて」

言葉は丁寧に聞こえるが、口元はニヤニヤしている。

垣間見えた悪魔っぷりは健在だ。



「あ! 王様だっ!!」

赤髪の王様役の子が、私をシッカリと指を指して言った。


その声にこちらを一斉に振り返る子供達。

「え! ウソー!」

「本当だ! 王様だ!」

「王様! 遊ぼう!!」

「ねー、抱っこしてー!」

「私もー!!」

言いたい事を言いながら、子供達が群がってきた。

一気に取り囲まれる。

手を引っ張られたり、足に乗られたり、服を掴まれたり……やりたい放題だ。

ただ誰も隣に立っているレイブンには近づこうとしない。

子供って、こういう時ずる賢い……。


しかし、私も子供は嫌いじゃない。

足元にいる女の子を抱えると、「高い高い」と言って頭より高く掲えあげた。

フードの下の鱗がある顔がチラリと見える、女の子は満面の笑みだ。キャーキャーと歓声あげている。

喜んでくれたようだ。

こういう所は普通の子と一緒なんだと、張っていた肩の力が抜けて懐かしさで胸が満たされたのが分かった。

ゆっくりと地面に降ろすと、子供達が目をキラキラ輝かせながら我先に私も僕もと言ってくる。

屈託のない笑顔で見つめられると、無理とは言えず全員を順番に高い高いした。

もう腕がパンパンだ。

もっと遊ぼうと粘られたが、「また今度ね」と約束して笑顔でレイブンの街の説明に戻った。



どの道も自分の足で歩いた事はないが、大通りの人混みはよく分かるので今は遠慮しておく事にする。

放射状に伸びた五本の道のうち、一番右端の道を大きな太い角材を抱えた男達が多くいたのが気になって、レイブンに聞いてみた。

「ね、あの人達は何であんな大きい木を持って忙しそうにしてるの?」


「あー、アレはお祭り用の木材じゃないですかね。王様が決まったら1週間以内に街で覚醒祭という名のお祭りが夜遅くまで催されるのですよ。その飾り彫りをする為に木材を運んでいるんじゃないですか?」


「お祭り??」

どんなお祭りなのか、とても気になる。


「私はまだ見た事がありませんが、聞いた話では毎回盛大に行われるらしいですよ。日中は飾り彫りがされた木を街中に建てて、木と木の間に紐を渡してあるだけなんですが、暗くなってくると火を入れた透明の水晶を紐に吊り下げて飾るらしいです。それはそれは綺麗だと先代が仰ってました」



なるほど、小さな提灯が連なるようになるんだろうなと何となく想像できる。

それを夕方から街中を飾り付けるのだから、とても美しいだろう。

そこまでしてもらった先代の王様は本当に民から愛されていたのだなと、思った。



他にもレイブンは街や街の人々について色々説明してくれた。

街の主な施設やドラゴン以外のドラゴン種の違いなどだ。

施設は何でも幅広く依頼を請け負ってくれるギルドや、アクセサリーや武器・防具を作製している工房、魔道具専門店などが街に散らばるように配置されていた。

ギルドはもう少し後で挨拶に行った方がいいと言われたので、行かなかったがそれ以外は実際に足を伸ばして一軒づつ見てまわった。

何もかもが珍しくて見ているだけで充分楽しかった。


中でも覗いた魔道具専門店では、悪意のある魔物を寄せ付けない効果があるという古そうな香炉があって、コレは欲しいと思ったものだ。

悪魔に効かないかな……と思って、後ろからそっとレイブンに近づけてみたが、逆に怒りを買ったようで振り返った眼鏡の奥の瞳が怒っていた。

値札が掛かっていたが、よく分からない……多分高いんだと思う。

通貨を持ってない私には、とりあえず買えない。


他にも店にはたくさんの商品が所狭しと置いてあって、水を生む水晶やら、お伽話で聞いた事がある瓶入りの妖精もいた。

瓶に入れられている妖精は不満なんじゃないかと思ったが、よくよく見ると瓶の中で小さな椅子に座って小さい本を読んでいた。寛いでいる……ちょっとカルチャーショックだった。

魔法が使えない私には、一つ一つが珍しく一番気に入った場所だ。


それから、ドラゴン種の違いだが長かったのでまとめると……。


・ハイブリッド→二足歩行の人型ドラゴン。

・ドラゴニオン・ドラゴニアン→恒常的にドラゴンの一部を有する。

・ハーフドラゴニオン・ハーフドラゴニアン→一時的に部分をドラゴン化できる。

・クォータードラゴニオン・クォータードラゴニアン→手の爪が硬いとか歯が鋭いとかの本当に一部だけの部分変化。


という事らしい。

これは素人には、なかなか見分けられないのでは……?と話を聞いて思った。


だいぶ店回りに時間をかけてしまったせいで、高かった日が沈みかかっている。

街をザックリ見回った所で「そろそろ……」とレイブンに促され、城に戻る事にした。

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