目覚め
木の天蓋が朧げに見える。
ここは、どこ?
今まで長い夢を見ていたようだ。
身体の痛みも苦しみもない。
現にここはベッドの上だし、暖かい掛け布団が……。
もう少し寝てもいいかな。
夢心地で身体の向きを変えようとした時、聞こえてはいけない声が聞こえた。
「よく寝てましたね。お目覚めですか?」
無感情な声……悪魔だ。
「っ!!」
びっくりして、ベッドから身体を起こす。
今の一声で完全に覚醒した。
どうやら夢ではなかったようだ。
「スライムにさえ勝てないとは……」
呆れた様に溜息をつかれた。
「……」
何も言い返せなかった。
私だって、悲しい。
でも努力はしたんだから、何か言われる筋合いもないとも思う。
「こんなに弱くて、王が務まるのか甚だ疑問です」
「……王じゃないし……」レイブンの言葉に、本音で呟いた。
「いいえ、王なのです。これだけはハッキリさせておきますけど、貴方は王です。この国を背負って行かなければならないのですよ。……この間から何か足りないと思っていたのですが、貴方には自覚と覚悟が圧倒的に足りません。この国を背負うという、覚悟が……」
すぐにレイブンに言い返される。
でも、私も負けていられない。
「覚悟も何も……まずこの国の事すら知らないし……世界も違うし……」
俯きながら小さな声で反論した。
「…………分かりました。では、まずドラゴニアという国についてご説明致しましょう」
そう言うと、レイブンは右手を胸の高さ辺りで左から右にふった。
目の前に空中に浮く大きなドラゴニアの国のホログラムと、大きな三角の図が書かれた古い紙が現れた。
大きな三角の図には中に分けるように四本の線が引いてあり、細かい字で色々書いてある。
「ドラコニアのほぼ9割は、ドラゴン種にて構成されています。ドラゴン種というのは、以前ディーン様が仰っていたドラゴンを頂点とする種族の事です。頂点のドラゴンは、世界に四匹しか実在しないと言われています。その下がディーン様のようなハイブリッドと言われる、ドラゴンの血を濃く引き継ぐ方々ですね。……それから、その下に街で見かけたような部分的にドラゴンを色濃く引き継ぐドラゴニオンとドラゴニアン、さらにその下にハーフドラゴニオンとハーフドラゴニアン。最後にクォーターのドラゴニオンとドラゴニアンがいます……何ですか?」
説明の途中で私は手を挙げた。
基本的な事で詰まってしまったからだ。
「ドラゴニオンとドラゴニアンの違いは何?」
「ドラゴン種の男性をドラゴニオン、女性をドラゴニアンと呼びます」
へぇ……。男性と女性で呼び方が違うんだ……。
面白い。
「よろしいですか……。このように、ドラゴン種というのは、血の濃さにより力と能力、外見が異なります。その為に血が濃ければ濃い程、珍重されているものなのです」
キラリとレイブンの眼鏡が光った。
「古くからの言い伝えでは四匹の竜は世界を支えると言われており、今まで現存された記録を見ても四匹のみとされています。属性の種類も四種。土・風・火・水です。ドラゴンは他の種族に比べ長命種ではありますが、無限には生きられません。どれか一匹でもいなくなると跡を継ぐドラゴンが何処からか必ず現れます。これは主にドラゴン種からの変化ですが、まれに違っていたりしているようです。よく言われているのは、ある日突然覚醒すると言われています。ドラゴニアの王である先代は火のドラゴンだったのですが一ヶ月程前に逝去されました。これまでずっと待っていたのですが誰も覚醒せず、そして私達七賢がディーン様に招集され、知恵を貸す事になったのです。覚醒して身を隠している可能性があるから、覚醒者を探して欲しいとの事でした……はい、何ですか?」
また遮るのは悪いと思ったが、また分からない単語が出てきたし長い説明で混乱しかかったので、咄嗟に手を挙げた。
「七賢って、何……? というか、情報が多すぎるからもう少しゆっくり教えて欲しい」
二度目の質問で少しイラついたようで、レイブンの口の端がピクリと動く。
それから情報を噛み砕いてゆっくりと教えてくれた。
こんがらがりそうな頭で何とかまとめると、こういう事らしい。
・ドラゴン種はドラゴンを頂点にヒエラルキーがある。血の濃さによって力と能力の高さが違い、血の濃い方が上位種になる。男性をドラゴニオン・女性をドラゴニアンと呼ぶ。
・古くからドラゴンは四匹。属性も四種で土・風・火・水。死ぬと主にドラゴン種が何処からか覚醒し、ドラゴンになる。
・七賢とは、先代が他の国からそれぞれ一人ずつ集めた者の総称。七賢はドラゴニアにて王の守護や助言、あとは他のドラゴンとの連絡・交渉などを主に従事する。
なるほど。
じゃあ国はドラゴニア以外にも七つあるんだ。
ふむふむ。
「それで、ディーン様に頼まれて七賢で考えたのが『剣の試練』だったのです。触れた者の血の濃さや能力の高さを読み取りドラゴン覚醒者を探す、剣の試練。世界にいるドラゴン種は約十万と言われております。国土に数多の剣を配置している為、多くの方は抜いた数によって選ばれる確率が上がると誤解されておりますが、剣に触れて抜いた時点で全て決まっているのです。」
よっぽどレイブンは『剣の試練』に思い入れを持っていたのだろう、剣の試練の説明になると少しどこか誇らしげに見える。
しかし……説明が長い。
聞いているだけで、疲れてしまった。
まだ止まらなさそうだ。
ちょっと飽きたし止めなくては……そう思った時、レイブンが意外な提案をしてきた。
「実際に街をご案内しましょう」と。
こうして私とレイブンは城下町へと行く事になった。




