その3、恋愛
「なあ、君」
「何?」
「君は私のことが好きなのだったな」
「……え、あ、うん」
「私も君のことが好きだ」
「あ、はい……はい?」
「ところで好きというものはどういうものなのだろう」
「えらい飛ばし気味に来たな……」
「君はどう思う?」
「どうって言われても、好きなものは好きだし?」
「どうして好きということがわかる?」
「それはー……たとえば、何かものを食べてみて、おいしいって思ったらだいたい好きだなとかそういう」
「つまり君を食べておいしければ私は君が好きというこ」
「やめろ!」
「では質問を変えよう。好きという感情は何なんだ。どこから来るんだ?」
「どこから、って言われてもなぁ……漠然と感じるってだけで」
「感じる。ふむ、感じるとはなんとも不思議な感覚だな」
「哲学始まったよ……」
「私にはどうもこれが不思議でならんのだ。同じ感情でも恐怖や憐憫、苦悶などといったいわゆる喜怒哀楽的な感情ならばわからなくもないのだが……それに比べて恋愛感情というものは本当によくわからん。いったいどんな感覚なんだ? 気になって気になって夜も熟睡だ」
「しっかり寝れてんじゃん! ていうか内容がぶれまくっててあんまり把握できてないけど、今ぼくらって恋愛の話してたの?」
「そうだが?」
「そうですか……なんでまた?」
「私が恋愛をしてみたいからだ。古来より、一度恋をすれば古今東西すべてのことが簡単に分かると言い伝えられているではないか。となればまさしく私の理想の生き方、悔いのない生涯を送るという目的にふさわしい。だから恋をしてみたいのだ。一度だけでいいから、正真正銘の恋をな」
「古来よりそんなことが言い伝えられてるのかどうかは知らないけど、まぁ理由はわかったよ」
「それならいい。ということで君、私と恋をしよう」
「……ぼくはすでにしてるんですけど」
「なに? そうなのか? 誰と?」
「いやいや、前に好きって言ったじゃん、きみに」
「……それが恋なのか?」
「……そうなんじゃないの?」
「恋というのは双方の認識があって初めて恋になるのではないのか?」
「そういう考え方ですか……いや、そのへんはぼくもよくわからないけど。でも片恋っていう名前の歌があるくらいだし、別に一方的に恋しちゃってもいいんじゃない?」
「そうだったのか……知らなかった。てっきり複数人でやるものだとばかり思っていたぞ、恋」
「人生ゲームか何かと同じ感じでとらえてるよね」
「人生ゲームは別に独りでもできるが?」
「やめて!!」
「ふむ、しかしまさかそういうことだったとは……だがアレだ、好都合だな。君が私に恋をしているのならあとは私が君に恋をすればいいのだ。簡単な話じゃないか! これでまた少し寿命が縮んだ!」
「新鮮な喜び方だな……」
「さて、さっそく君に恋をしようと思うが……」
「…………」
「…………」
「……恋ってどうやってしたらいいんだ」
「んなもんわかるかい」
「なんでだ!? 君は私に恋をしてるんだろう!?」
「してるのはしてるけどどうやってするとか知らないよ! 指動かすときにどの筋肉動かしてるかとかわかんないでしょ!? それと同じ!」
「…………」
「そんな必死に指を動かしても恋はできないと思う……」
「むむぅ……むむむぅ……ずるい。ずるいぞ君は……どうして私を置いてたった独りで恋の世界へと旅立ってしまったんだ……ずるい……」
「バトル漫画で仲間が死んじゃったときみたいな言い方するのやめよう」
「あぁもう!! わかった!! わかったぞ!! 望むところだ、やってやろうじゃないか!! 恋といえば恋人! 恋人といえばらぶらぶ! らぶらぶといえばまずはスキンシッ」
「離れろ!!」
「どほぁッ!? な、何をするんだ!!」
「こっちの台詞だよ!? クールキャラ崩壊したかと思ったらいきなり突っ込んできて思いっきり抱き付こうとするな! あのまま行ったら壁にぶつかって大ダメージ負ってたわ!」
「くぅうう……だったら私はどうしたらいいんだ!?」
「穏便に付き合うんじゃダメなんかい」
「はぁ……しょうがない、時間はかかるだろうがそうするしかないな。あーあまた寿命がずいっと伸びてしまった……はぁ……」
「本当なら喜ぶべきところなんですけどねー……」




