3:和弥の動揺
2と一緒に更新しようと思ってて忘れてましたorz
スミマセン……
オレは目を疑った。
萌黄が……負けた。
萌黄の言葉に驚いて出遅れてしまったことも、それが原因で七着に終わってしまったことも、今のオレにはとってはどうでもいいことだった。オレの目の前で、萌黄が各務さんに負けてしまったことがただ信じられなかったんだ。
ゴール板を過ぎ、惰性で走るラブリーウィッチを追いかけ、オレはその名を呼んだ。
「萌黄!」
馬を止め、振り返ったアイツの口元は、意外にも優しく微笑んでいた。
ゴーグルを外してオレを見つめた目も恐ろしく澄んでいて、怖れも、迷いも、疑いも、何一つ見えやしない。未だに自分の勝利を信じて疑わない、そんな目だ。
「お前……」
負けたんだぞ。各務さんが先着したんだぞ。いくらお前がバカでも、それくらいはわかるだろ?
お前は……騎手を辞めるのか?
萌黄は何も言わずに馬を返して、後検量室に戻る素振りを見せる。
ふざけんなって……進退を賭けた大勝負なのに、あれだけ自信持って「勝つよ」とか言ってたくせに、負けたら黙ってあっさり引っ込むのかよ。そんなのお前らしくないって。
「萌黄、待てって!」
オレに構わず、萌黄は馬を進める。
ダービーを直前に控えた超満員のスタンドが、妙な雰囲気に包まれていた。歓声とも罵倒とも、どちらともつかないどよめきの波。
ん? なんだ……何かあったのか?
前を行くラブリーウィッチが、ピタリと脚を止めた。
「もえ……」
オレの言葉を遮るように、萌黄は右腕を上げた。
しなやかに、なめらかに──グローブをはめた指の先まで優美で、その動きは高貴でさえある。
高く掲げられた萌黄の腕の先で、人差し指はある一点を指し示していた。
「まだ……終わってないよ」
その言葉に驚いて、オレは萌黄が示す先を見やった──それはスタンド前の電光掲示板。一着十番、二着一番と無情なまでに萌黄の敗北を見せつける。が──
右上に燦然と輝く青ランプ、そして「審」の文字。
それはこのレースが審議の対象となったことを示す、紛れもない証拠だった。




