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漆黒の流星《ブラックスター》  作者: ショウ
第1章:漆黒の流星
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15/22

8話:偽物の影①

黒神零と鏡野澪。

1年生同士とは思えない昼休みの熱い模擬戦から数日後の放課後。


星峰市外れの廃倉庫街。

夕陽が赤く街を染める中、風紀部星峰支部


その隣では、白河鈴華がスマートフォンに表示された事件データを確認しながら、不安そうに辺りを見回していた。


送られてきた現場写真には、黒い焼け跡と『漆黒の流星』の文字。


長い黒髪を耳へ掛ける仕草が、いつもより少し多い。


「澪……。」


鈴華は画面から視線を上げる。


「ここ、本当に犯人の拠点候補なの?」

「なんだか……胸騒ぎがするんだけど。」


鏡野は歩みを止めない。

倉庫群を見据えたまま静かに答えた。


漆黒の流星(ブラックスター)事件の痕跡が、一番集中している場所よ。」


一拍置く。


「慎重にいきましょう。」

「油断は禁物よ。」


鈴華は小さく頷く。

風紀部員たちは二手に分かれ、それぞれ周囲の捜索を開始した。

地面には黒く焼け焦げた跡。

壁には乱雑なスプレー塗料で大きく落書きされている。


『Blackstar』


鏡野はしゃがみ込み、黒い魔力の残滓へそっと指先を触れた。

ひやりと冷たい感触が伝わる。


「……魔力残滓。」

「報告通りね。」


その時だった。

倉庫の奥から男たちの笑い声が聞こえてきた。


「最近は楽だよな。」

「“漆黒の流星(ブラックスター)”って名前を出すだけで、みんなビビる。」

「警察も風紀部も勝手に騒いでくれるしな!」

「ははっ! ボスも大喜びだ!」


鏡野と鈴華は視線を交わす。

鈴華の鼓動が一気に速くなる。

鏡野は静かに手を動かした。

――突入。

次の瞬間。

鏡野が一気に倉庫へ飛び込む。


「風紀部よ。」

「あなたたち、話を聞かせてもらうわ。」


男たちが振り返る。

だが、遅い。

鏡野の足元から大量の水が一気に広がった。

水は男たちの足へ絡み付き、そのまま拘束する。

逃げ道を塞ぐように氷が地面を覆い、水蒸気が視界を包み込んだ。

三態を自在に操る鏡野の水魔法。

制圧は、ほんの数秒だった。


「うわっ!」

「なんだこれ!?」

「風紀部かよ!」


鏡野は冷たい視線を向ける。


「大人しくしなさい。」


静かな一言だけで、男たちは抵抗する気力を失った。


-----


男たちは駆け付けた警察へ引き渡された。


現場では警察による現場検証が進められ、その隣では風紀部も魔法痕の確認を行っていた。


魔法犯罪の現場では、残された魔力の分析も風紀部の重要な任務の一つである。


鈴華は地面へ残る黒い魔力の残滓を見つめていた。

男たちは捕まった。

それでも胸の奥に残る小さな不安は消えない。

黒い魔法――

その視線が誰へ向けられているのか。

鏡野には、何となく察しがついていた。

少し離れた場所で残滓を調べていた鏡野は、小さく息を吐いて立ち上がる。


「少なくとも……。」


鏡野が静かに口を開く。

鈴華が顔を上げる。

鏡野は地面へ残る黒い魔力の残滓へ視線を向けたまま続けた。


「私が戦った黒神零の魔法とは違うわ。」

「え……?」


鈴華が目を瞬かせる。

鏡野は黒い魔力の残滓を見つめながら、小さく首を横へ振った。


「魔力の流れも。」

「構築も違う。」

「同じ黒い魔法でも、これは別物よ。」


一歩、残滓へ近付く。

魔力を力任せに叩き付けたような荒々しい痕跡。

制御も甘い。

魔力の揺らぎも大きい。


「これは粗い。」

「ただ魔力を振り回しているだけ。」


昼休みの模擬戦が脳裏によみがえった。

無数の黒い星。

寸分違わぬ軌道。

自分の退路を読み切る判断力。

避け切れない一撃だけを、最小限の魔法で撃ち落とす精密な制御。

一切の無駄がなかった。

攻撃も。判断力も。魔力制御も。

全てが洗練されていた。


「あの制御は、一朝一夕で身に付くものじゃない。」


鏡野は静かに断言する。


「仮に彼が犯人なら。」

「こんな雑な痕跡は残さない。」


そこで初めて鈴華へ視線を向けた。

不安そうな表情は、少しだけ和らいでいる。

鏡野は小さく微笑んだ。


「安心しなさい。」

「少なくとも私は、彼とは別人だと思ってる。」


鈴華は黙ってその言葉を聞いていた。

胸の奥にあった重石が、少しずつ軽くなっていく。


「……はい。」


思わず笑みがこぼれる。


「ありがとうございます、澪。」

「私、黒神くんを信じます。」


鏡野は小さく頷いた。

澪も小さく微笑み返した。

その碧い瞳には、もう迷いはなかった。


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