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ふたりの世界が触れる場所 ―世界の違うふたり、そのあいだに立つ少女―  作者: SHIRUSHI08


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23/25

第23話

源治の運転する軽トラは、倉庫の前に停車する。

車から降りたアイサは

「あとは、わしがやっとくけぇ。今日はゆっくり休め。」

と言われ、思わず源治の顔を見る。

「昨晩、徹夜でもしとったんか? 猟にも身が入っとらんかったしなぁ。」

源治は孫娘を気遣うよう『家に入れ。』と顎で玄関を示す。


「うん。ごめんね。」アイサはそう答えて指し示された玄関を見てそのまま目線を上げていく。

(...これが、愛沙の家...)

一般的な日本家屋だが、愛沙には新鮮だ。

楓の家は田舎と言えど、造りは比較的新しく、某住宅メーカーによる総2階の寄棟屋根でグレーを基調とした外壁となっている。

アイサにとり、こちらの世界で初めて見た家屋が楓の家のそれであるから、自分?の家を見上げた時の驚きも十分であった。

玄関先で動かぬ孫娘を心配した源治は改めて声を掛ける。

「ほれ、家入れ。」


引き戸を開けて玄関に入ったアイサは玄関の広さに驚く。

(...えっと。)

あまりの広さに気圧されて言葉に詰まるも何とか

「..ただいまぁー。」

と奥に向かって、元気に声を掛ける。


靴を脱ぎ上がろうとした所に、愛沙の母 美和が玄関に出迎える。

「大変だったがなぁ、朝早うから。」

と娘を気づかいながらも、見回して、源治の姿がないことに気付いた美和は、

「じいちゃん、まだやっとるだか?」

「うん。『後はやっとくけぇ、お前は先に入れ』って。」

とアイサが伝えると、

「そがぁか。で、朝ご飯は……まだ食べてないだが?」

「朝早かったから...まだ。」

「ほんなら準備するけぇ、部屋で着替えてきんさい。」

美和はアイサに言うと源治の様子を窺うように玄関扉の向こうを見るかのように視線を向け、

(まだ入って来んみたいだなぁ。)


玄関から最初の部屋に入ったところでアイサは立ちすくんでいる。

「何か探しとるんね?」

周りをキョロキョロとしているアイサに美和が声を掛ける。

「あ、いえ...。」

(じゃあ、何で突っ立ってるの?)と言わんばかりの美和の態度に、

アイサは隣の部屋に入ろうとした。

「ないやっとるだぁ? あんたの部屋は2階だがな。はよ行きんさい。」

アイサは美和に続いてリビングに入ると、すぐ左手に階段が見えた。

「ほら、はよ行きんさい。」

アイサは美和の声に押されて階段を上がる。

(あっ。あれね。)

アイサの部屋は2階の奥にあった。


部屋に入ると愛沙の部屋を確認しないといけない。

どこに何があるのか知らないと問題が生じる可能性が高まる。

すーっ

4枚ふすまの一枚を開けて部屋に入ると、正面には障子が入った腰窓があり障子が朝の光をやわらかく遮っている。

左には押し入れと、それ以外の壁には一面に所狭しと狩猟鳥獣の写真や絵、ハンターマップなどが貼り出され地図にはところどころ文字や記号が書き込まれている。

右側には、窓から腰窓と高さの揃った棚がきれいに部屋の角に沿うように作られており、

その先に机、本棚、パイプ棚、たんすと続く。

棚という棚には罠の部材やら工作用工具、ナイフや砥石と言った女子高生の部屋とは思えないものが一見雑然と並んでいる。

本棚に目を移すと、教科書、参考書、受験関係の本に狩猟関係の本がずらっと並び、その隅に申し訳程度にライトノベルが十数冊、そしてさらに少ないおしゃれ系の雑誌がぽつんと並ぶ。


「着替えたら、はよ降りてきんさい。」

階下から美和の声が聞こえる。

(...そう。着替え)

最初の目的を思い出し着替えの場所を探すアイサ。

(どこにあるんだろう?)

楓の家でのことを思い出し似たようなものということでタンスに向かい引き出しを引く。

(あった。...けど。)

服が多くてどれを着ればいいのかわからず、あれか?これか?と迷っていると

ふすまが スーッ と開けられ、そこには美和が。

「まだそがぁことしとるだぁ。」

タンスに手を突っ込みあれこれやっているアイサを見て美和があきれる。

「えっと..」

手を止め困った様子を美和に見せるアイサ。

「いつものでええでしょうが。

それとも、またどっか出かけるつもりだったん?」

「いや、(その予定はない。)」と言いかけたところで思わず手で口を押える。

(え~と、話し方。口調。)慌てて修正する。

「いや、もう。さすがに今日は...ハハ」

不自然だが何とか乗り切ったと思い美和を見ると、

その様子に怪訝そうな表情になる美和は、何とも言えない表情で首を少し傾ける。

「……まぁ、ええわ。ほれ。」とベッドの上を指さす。


ベッドの上には畳まれたスエットの上下がぽつんと置いてある。

「あっ。」

呆れたと言わんばかりにため息をついて見せ美和は、

「もうご飯できとるけぇ、はよ食べてしまいんさい。」と言って部屋を後にした。



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