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ふたりの世界が触れる場所 ―世界の違うふたり、そのあいだに立つ少女―  作者: SHIRUSHI08


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第21話

「ほれ、着いたで。」

源治は軽トラのエンジンを切ると助手席のアイサに声を掛けて車外へ出た。

「..はい..。」

移動中、エンジンの唸りや振動、そして思った以上の速度に、

声を挙げそうになるのを必死にこらえていたアイサはようやく深い息を吐いた。


だが、すぐに問題が起きる。

楓が教えてくれた扉の開け方をすっかり忘れて、

半ば体当たりをするように扉を押してみるがびくともしない。

変に車が揺れたのを訝しんだ源治が車内を覗き込むと

アイサが何やらごそごそとやっている。

「お前、何しよるだ?」

「えっ...これがどうも開かないので...」

とドアを指して訴えると、

源治は「そんなはずはないが‥」と助手席側に周り、外から取っ手を引く。

スッ。

「なんもないが。」

と当たり前のように開けて、降りるのを手伝いながら言う。

「はよ準備せぇ。」

「うん....。」

とは言ったものの、何を準備すればよいのか知りもしないアイサは、

軽トラの荷台に積まれた荷物を一つ一つ(なんだろう?)と観察する。

源治の視線を感じて振り返ると、源治はコンテナを指して言う。

「ヤッケぇ、そこに入れちょる。はよ出して着んさい。」

「これは..(どうやって開けるの?)」

と言いかけて、コンテナに取り付いてみるがやはり開け方がわからない。

見かねた源治がやってきてこともなくコンテナを開け、ヤッケを取り出してアイサに渡す。

「今日はどうしただ? えらいボーッとしとるが。  調子悪けりゃ、車におってもええで。」


その一言に、アイサは全て見透かされているような感じがし、スッと目線を外す。

「..うーん。大丈夫。これを上から着て、どれを用意するの?」

見るからに薄いヤッケは服の上に羽織るように?と目星を付け源治に聞く。

源治は暫くアイサの様子を見ていたが、

「無理はすんなよ。」とだけ言うと。今日使う道具を指し示す。

「これと、これじゃ」

「うん。わかった。」

アイサはヤッケを羽織り、道具を手にとる。


楓からさんざん言われた注意事項の一つ。

『思ってもすぐ口に出さんこと』を思い出しつつ、

源治の服装が気になった。同じ素材の服に派手な色のハンターベスト。

そのベストと同様の派手な帽子。

(...逆に目立つのでないだろうか...?)と。

そう思っていると源治が同じ色合いの帽子を放って来る。

「お前もかぶっちょれ。」

アイサは帽子をキャッチすると、源治と同じ様にかぶる。

「ほんなら、道具持って行くで。」

源治が山へ向かって歩き始める。

アイサも慌てて追いかける。


歩き始めて源治はポケットの中の銃弾を指先で確認し、

銃を袋から取り出してからもう一度肩に掛け直す。

(何やろう。あの重そうな棒は?)

源治が肩に掛け直した銃を見て愛沙は思う。

ポキッ..、ガサッ..

前を歩く源治のふむ枝や土の音が、山の静寂の中でひときわ響く。

一方のアイサは歩くスピードの割に足音がほとんどしない。

(..ん? ..愛沙..こんな歩き方しとったか?)

源治は前を歩きながらもアイサ足音の無さに気付く。

孫娘の成長を喜ぶ気持ちと、ちょっとした違和感を覚えながら。

と、アイサが突然立ち止まる。

釣られるように源治も足を止め振り返る。

「どうしただ……?」

アイサは身じろぎせずジッと一つの方向に目を向け、意識を集中している。

源治もアイサの視線を追い、そちらを見るが何も見えない。

アイサは、視線の方向を指さして『こっち?』と確認するように少し首を傾ける。

源治は首を横に振る。

「いや、あっちだ。」

そう言って再び歩き始める。

アイサは少し惜しげな表情を見せたあと、源治の後を追った。


ふたりは源治を先頭に山道を罠に向かいしばらく進む。

辺りには二人の足音と布ずれの音が聞こえるのみ。


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