↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたりの世界が触れる場所 ―世界の違うふたり、そのあいだに立つ少女―  作者: SHIRUSHI08


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/25

第16話

「愛沙ちゃん大変だがなぁ。部活そんなに忙しいん?楓は何も言わんけぇわからんのよ」とアイサに話しかけながら楓にもチラッと視線を向ける。

「・・あー・・はい。・・まぁそれなりに・・」アイサは一瞬目が泳ぐ。

楓は気が気ではないが、表情に出すわけにもいかず、黙ってご飯を口に運ぶ。

「そう?今度3年になるがな?。愛沙ちゃん優秀だし、部長でも任されたんじゃ?」

アイサは想定外の質問に『どう答えれば?』と楓の方を向く。

楓の方も『え?大丈夫、アイサ』と振り返って二人は顔を見合わせる結果となった。

『ヤッバ。そうくる?』楓は急いでご飯を飲み込むと、

「部長はうちらじゃないで。他の子で決まっとる。」

「あ。そうなん?ふ~ん」とそれで納得したのか別の話題に変わる。

「愛沙ちゃん家、何か美味しゅう食べるコツとかってあるん?」今度は猪肉を指しながらの質問。

「特に‥特に、思いつかないですね。」アイサの苦渋の答えに美佐子は

「まあ、言うほどバリエーションもないわな。」とあっけらかん。

「でも、今日の焼き方ちぃと隠し味入れたのよ。わかる?」ニッコニコした表情に弾んだ声で、アイサに応えてねと言わんばかりに上体を乗り出す。

勢いに押されるように少し仰け反ったが、少し目線を上に向けつつ考える・・。

「隠し味ですか?う~ん。・・レイタラ・・かな?」アイサのおそらく思わずの“素で応えたであろう答えに楓が凍り付く。

『ア‥アイサ。レイタラって何?』楓の額に汗が流れる思い。

もちろん母ちゃんも聞き逃さない。

「れいたら?(そんな調味料有ったかしら?)」美佐子は首を傾げて考える。

『冷凍鱈!?いや違う・・レイタラ・・レトラ・・レトロ!?ちがうちがう。あれ・・入れたら!?・・これだ!』

「アイサ あれ入れたら って言うたんじゃない?なぁ?」楓のフォローが入って自分の失言に気付くアイサ。

思わずカエデの顔を見て ウンウン と力強く首肯すると、美佐子に向かって「そうです!」と力強く言った。

「そう?・・じゃあ、そのあれって?」

「「・・・・・」」

「あれって、意地悪言わんと素直に教えてやればええやん。」ちょっと恨めしそうに母ちゃんに精一杯の文句を言う楓

「お母ちゃんだって、いろいろ工夫して研究しよるんよ。そないに簡単にネタ晴らしはできんわ。」とオーバーアクションでプイッとそっぽを向く。

アイサは(なんかかわいいし・・・いいなぁ)と心の中で呟き、楓と美佐子のやり取りを間近に見て、少しほっこりする。

「んで、どうね?わかったんか?」(終わったと思ったのにまだ続いてたの?)

アイサが気を抜いたのを見抜いたような絶妙なタイミング。完璧な不意打ちに近い。

「ごめんなさい。わからないです。」アイサは美佐子の追及に降参した。

「ふふ~ん。ほんなら、これは内緒のままにしとくけぇね。」パチリとウインクをして、すぐ次の話題へ。

(・・う。さすがに楓が言っていた『うちの母ちゃんは、最大最強の壁』がわかる。・・・)

「愛沙ちゃんお代わりいるんか?」手を差し出して茶碗を要求する。アイサが出し渋ると、

「あら?今日はいつもよりおとなしいのう?体の調子でも悪いんか?どら。」と言いながら席を立ち、アイサのところに行って、おでこに手を当てて熱を測る。

「・・ええっと。」呟くのが精いっぱいでなすがままのアイサ

「熱はなさそうじゃな?・・何か心配ごとでもあるんか?おばちゃんでよかったら聞くけぇ。」自分の席に戻りながら心配そうにアイサを見つめる。

(おばちゃん凄く優しいし、心配してくれて・・・愛沙さんて幸せなんだな。)

しかしじっと見つめられると緊張が高まる。美佐子の視線に耐え切れず楓に振り向くと、そこには思い切り苦笑いの楓がいた。

仕方なく食事を続けていると

「あれ?そう言えば愛沙ちゃん。今日、話し方なんかおかしないか?」と美佐子が言う。

「・・ええっと。そうですか?」アイサは一生懸命冷静に返す。

(あー、かあちゃ~ん。勘弁して!)

「うん。うん。それ、それ。その話し方。よそよそしいないけぇ?」と美佐子は隆の方を見る。

隆は箸を止めて、「うん。確かに元気が無いわな・・・口数も少ないしのう」と相槌を打つ。

「学校で何かあったんか? 楓は何も聞いとらんのか?」と続けると、楓はぶんぶんと首を横に振る。

「学校でも何もないけぇ。後でやらんといけんことが多うて気が重いだけじゃろ思うで。」と楓が暗に示すように言う。

「まあ、それだけならええんじゃけど、気にし始めると雰囲気もなんか違うように感じるんよね。」と美佐子

(うっ。鋭い。)二人とも表情に出さんようにしているが、内心はドキドキ。

「あー。お肉のお礼もしとかんといけんけぇな。そういやおじいちゃんの誕生日、もうすぐじゃったよなぁ?」と美佐子

(愛沙のじいちゃんの?うち、それ知らん。)楓は慌ててアイサに振り向くと、『ごめん!うち、知らん』と小さく速く首を横に振る。

「えっと、今度おじいちゃんに確認しておきます。」アイサは動揺を隠してそう答えた。

美佐子はアイサの返事を聞きながら、楓の様子を視界の端に捉えて、一瞬眉を顰める。

束の間の途切れた会話

「・・・そう?ほんなら、愛(・)沙(・)さ(・)ん(・)頼むわね。」美佐子の声に固さが混じっている。

(ん?なんだろう。)楓は母の言葉に胸の奥で小さく引っかかるものを感じたが、それが何かはわからなかった。

片づけを始めた美佐子の目が再び愛沙に留まる『・・レイタラ?ねぇ』思わず首を傾げる。

食べ終えた食器を重ねながら美佐子が楓に声を掛ける。

「楓。ここ片付けたら、お風呂の準備しときんさい。沸いたら、愛沙ちゃんも先に入っときんさいね。」


(お風呂かぁ・・)楓は漠然と思い浮かべる。アイサの居た世界でお風呂ってあったのだろうか?仮にあったとしても使い方って?

(あー、水道栓とかシャンプー、ボディーソープ何が何かわかるかなぁ?)不安の種は後を尽きない。

そんな楓の肘を愛沙が机の下で隠れるようにトントン突つく。楓が「ん?」と振り向くと、

「お風呂って??・・」アイサがささやく。

(・・・だよね。)

まだまだ夜は長い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。