■89 講習
「えぇと……今回皆さんの講師を務める事になりました、ステファニー・モストワです」
今年の、新しく王宮呪術師となる事になった三人の錬金術師。今回は男性1人に女性が2人らしい。王宮術師の中で女性は10人程度だから、ちょっと嬉しいな。
「昨日モワズリー卿から大体の仕事内容を聞いたと思うので、私が今日お教えするのは……」
何でもいいので教えてくださいとモワズリー卿に言われたのだ。所謂投げやりというやつで。この人達は錬金術を認められて王宮術師に選ばれたわけだし、基礎なんて分かっているわけだし……本当に困るな。
……というより、一番聞きたいのは……席の後ろに並ぶ貴方方の事ですよ!!
見たことのある人達で後ろが埋め尽くされてるのはどうしてでしょうか。連れてきたジョシュとローレンスは分かるんですけど……いつも一緒に錬成をしている人達、そして普段から剣を下げている人達までいるんですよ!! どうしてでしょうか!!
そちらに目を向けると、「見学ですのでお気になさらず!」と言いたいような顔でイケメンスマイルをこちらに向けてくる。いや、余計緊張するんですって。それよりどうしてあなた方まで来てるんですか。
まぁ、いつもの装備をせずに来ているという事は非番なのでしょうが、している人までいるというのはどういう事なんですか。え、合間に来たという事ですか? お仕事は? 鍛錬は? 任務は?
あの、親指立ててグッドサインを出さないでいただけないでしょうか。見守っています! と言いたそうですね。まぁ、無視だ無視。
「コホン、さて、まずは……」
何とか講義を終わらせることが出来た。普段手伝いとか自分の知識を伝えたりとかだったからこんな事は初めてだったからだいぶエネルギーを使った気がする。手汗が凄いよ。
「あの、賢者様」
3人の中の1人、唯一の男性術師が私に話しかける。質問だろうか、何か間違ったことがあっただろうか。
「俺、あっ、私、賢者様の戦闘錬成を習いたいです」
「え? 戦闘錬成、ですか……?」
あの、私の様な者に敬語はお控えください、と言われ慌てて直す。あぁ、術師の皆さんにも言われてたな。直さなきゃ。
戦闘錬成、かぁ。言われたことなかったな。
「ウガルルムやワイバーン、最近ではリヴァイアサンも討伐したことを聞きました、どうか伝授して頂けないでしょうか」
と、真剣な目で言ってきて。ど、どうしたものか……と思っていたら他の2人の女性達も入ってきて。彼女達も習いたいらしい。
「戦闘中に錬金術を使う、となると……錬成陣紙を使わず、錬成速度も上げなければいけないの。だから、そこから鍛錬しなければいけないのだけれど……」
成程、と理解してくれたようだ。でしたら、精進いたしますのでお時間ある時にでも見て頂けないでしょうか。と聞いてきた。まぁ、こんなにお願いされてしまったら……うん、と言わなきゃいけなくなっちゃうよね……いいよ、と了承したのだった。
「あの、皆さんどうしてこんな所に?」
「賢者様が直々に講習をしていただくのですから、この機会を逃す訳ないじゃないですか!」
アルさん……まさか合間に来るだなんて……皆さんも……
「それに、これから騎士団の方にも来てくださると聞いていましたので。予習ですよ」
そう、この前陛下から直々にお願いをされてしまったのだ。長期任務などあった際、使える者がいたら大いに役立つであろう、と言われてしまって。
確かに、第二騎士団の中にはギルバートさんとあと一人が使えてとても役立っていると聞いた。他の団にも何人かいるようだけど……他にも使える者がいたら任務遂行に大いに役立つのは分かる。
だからって今日来るなんて……一言言っておいてくださいって……吃驚するじゃないですか……!!
もう既に杖も自分達で購入して準備万端らしい。王宮から支給されると聞いたのだけれど……自分が選んだものを使いたかったらしい。
ん? 第二騎士団の皆さん、全員黒だ。
「どうして黒なんですか?」
「「「「「「お揃いです!!」」」」」」
あぁ、そうですか。……ん? 待って、誰とお揃い……? あぁ、待てよ。ギルバートさん黒だったな。皆さん何と仲の良い事。私も黒だからなんか嬉しいな。
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